学校の七不思議編 〜黒女〜
マリオンがアリスに話しかけました。
「この頃噂になってるの・・・黒女の話・・・」
「ふ〜ん」
「放課後、学校に・・・一人でいると・・・黒髪が膝まである女が現れて・・・こう言うの・・・赤い口紅が欲しいか? 青い口紅が欲しいか? 黄色い口紅が欲しいか? ・・・でね・・・赤い口紅って言うと・・・」
「あれだね、赤巻紙、青巻紙、黄巻紙の要領ね」
「・・・違うよ・・・赤巻紙、青巻紙、黄巻紙じゃなくて・・・」
「もっかい言ってみ」
「赤巻紙、青巻紙、きまきゃパ! ・・・うぅ・・・痛い・・・」
「ほら、赤い口紅が塗れたでしょ」
マリオンがアリスに話しかけました。
「あの・・・その・・・黒女の顔・・・口がね・・・耳のあたりまで裂けてるんだ」
「口シャケ女ね」
「・・・口裂け女だよ・・・」
「つまり、口にシャケを咥えているんでしょ」
「・・・シャケじゃなくて・・・裂けだよ・・・」
「新人シャンソン歌手新春早々シャンソンショー」
「新人シャンションかきゃパ! ・・・うぅ・・・」
マリオンが呟きました。
「・・・うぅ・・・口の中・・・変な味・・・」
「ちょっと見せてみ。あ〜・・・いい感じに傷になってるね」
「・・・いひゃい・・・」
「消毒しなきゃだめねぇ、動かないでね、今舐めてあげる」
「・・・ひゃ・・・」
「どう?」
「・・・」
アリスがアマリオンに話しかけました。
「その黒女の話にもう少し噂を付け加えよっか、
黒女はね、キスで人を殺すの。キレイな殺し方だと思わない?
でもね、ただキスをするだけじゃダメ、もう少し現実的じゃないと人は信じないの。
キスで人を殺す方法。
簡単な方法はね、毒入りのカプセルを口移しで飲ませる。
舌から舌へ唾液の付いた毒を口に運ぶの。
―――ねぇ、苦しい? ドキドキしてる?―――
もっと簡単なのは唇に直接毒を塗ってしまう、そしてそのまま・・・
―――バカだと思った? あなたとの頭の違いを考慮せずに?―――
ねぇ、クラーレって知ってる、神経をマヒさせる毒。
傷口から侵入して、相手の呼吸を止めてしまうの。
この毒の面白いところは、飲んで胃に入った所で影響は無い、
だからね、相手に傷があればそれでいいの、
唇に、口の中に、血が流れる傷が。
―――面白いでしょ?―――
―――怖いでしょ?―――
―――ねぇ、どうなの答えて―――
―――それとも、口が麻痺してしゃべれないの?―――
黒女は人を殺す。
美しい髪をした女。
彼女はキスを求める、男も女もそれには逆らえない。
黒女は相手の唇をそっと噛むんだ。
小さな血が流れる、相手は逆に興奮してしまうの。
欲情の視線を外に、黒女は傷口に毒を流し込む。
呼吸が止まる。
キスの味、麻痺した口にその味がわかるのかしらね。
―――ただ一つ残念な事は、私はクラーレの口紅なんて持ってないこと―――
アハハ〜」
さて、同性同士のキスはファーストキスにカウントされるのか否か。