Yum Yum Yum
幼いアリスは広い大きなお屋敷に住んでいました。
広い庭、沢山の遊具、大きなプール、虹色の花畑に高い高い大きな鉄柵。
・・・
失礼、間違えました。
幼いアリスは広い大きな牧場に住んでいました。
ここは食用の人間を育てる牧場。
食用人間。
おかしいですか? 変ですか?
ほら、牛や豚は食用なんてつきません。
生存する大半が食われるために存在するので食用という言葉がつかないんです。
野生牛とか野生豚は言いますねぇ、少数派ですから。
食べられる人間は少数派なので“食用”と付くのです。
野生人間とか都会人間とか普通人間とか・・・これって変でしょう。
つまり食用人間とはおかしい事ではないのです。
わかりましたね。
アリスは大事に大事に育てられました。
人様の口に入る食べ物ですから、手間暇を惜しむことはございません。
まぁ、その分お値段はお高くなりますけれど。
品質と味にかけてはこの牧場は世界随一でございます。
アリスは青い冷やかな目をしていました。
あの子は病気をした。
あの子は体に怪我をした。
あの子の顔はとても醜い。
だからあの子たちはもうすぐ工場に送られてしまう。
名前も顔もわからないようにされて。
品質の劣る“人間”として売られしまう。
それでも貧乏人は喜んで食べている。
フンッ
アリスはね、可愛くてね、とても元気だからね、
ずっとこの牧場に住んで居られるかもしれないの。
だってすっごく可愛いから、
とっても綺麗だから、
牧場の人たちが“入れ物”にしてくれるんだって。
種を入れる入れ物。
言われた時はよくわからなかったけれど。
今はわかるんだ。
ねぇ、知ってる。
私たちはねお肉は食べないの。
野菜とか果物とか花とかそれしか食べないの。
特にお花、お花が主食。
お花を食べると体からいい匂いがしてくるんだ。
甘い匂い。
それが食欲をそそらせるんだって。
でもね逆にね、肉食の人たちのお肉からはいやな臭いがするんだって。
それにね不味いの、とても不味いの。
そうなの、臭いの、あなたたちはみんな、臭くて不味いの。
あなた達はね、あなた達はね、あなた達はね、
アハハハハハ
臭いの。
あの子は性格が悪いから。
明日工場へ連れて行かれる。
名前も顔もわからないようにされて。
臭くて不味い貧乏人の口に入る。
でもね、
高級品だったとしてもね、
臭くて不味い金持ちの口に入るだけ。