A green flower
幼いアリスは植物が好きでした。
葉も幹も花も、人間なんかより家族なんかよりも愛おしく、
青々とした緑の肌に触れているだけでアリスは幸せでした。
ですが彼女は人間、
成長とともに情愛の具現化を求め始めます。
つまり・・・物足らなくなってきたのです。
アリスは植物になることにしました。
小さなアリスは綺麗な緑色の髪をしていました。
緑色の目に緑色の服、緑の靴に太陽の髪飾り。
まず彼女が行ったことは、部屋の床に土を敷き詰めたことです。
そして壁や天井を緑色に塗りたくり、
日がよく当たるようにと窓を叩き割りました。
家族が何事かと問いかけても、
「イィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!」
と、アリスは恐ろしい表情で叫ぶので、
誰も文句は言いませんでした。
笑顔の可愛いアリス、今度は植物を食べ始めました。
いえ、皆さんが思い描く野菜ではなく、
雑草を食べ始めたのです。
種や根っこなどは噛まずに飲み込みました。
いつか体の中に植物の精を宿すことを信じて。
家族が心配しても、
「イィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!」
と、叫び誰も寄せ付けません。
しかし、アリスの予想と反し彼女の体は黒く染まっていきました。
黒色のアリス。
皮膚は鱗のように硬くなった、
でもいまだ髪と瞳だけは緑色でした。
やせ細り、動けなくなり、
彼女はハナ色の病室へ運ばれました。
やがて酸素を吸わなくなり・・・
死にました。
遺言で、遺体は土が敷き詰められた彼女の部屋に埋葬されることになりました。
残された家族は後に語りました。
アリスの緑の髪は未だ生きているようだったと。
僕らの可愛いアリスが土に埋められて数年が経ちました。
家は廃墟となり、彼女が埋められていた部屋には、
一輪の小さな緑色の花が咲いています。
とある日、廃墟に忍び込んだ子供がその花を見つけ、
持ち帰って家族を喜ばせようと引き抜きました。
小さな花には似合わない、大きな根が引き抜かれ、
その根は人の形をしていて、
恐ろしい表情をして叫び声をあげました。
家族が発見した時には、
子供はもう酸素を吐かなくなっていたのです。
近くに何かが埋まっていような穴があるだけで、
子供の体には外傷も無くなぜ死んでしまったのかわかりません。
家族は遺体を抱き上げようしました。
しかしなかなかうまくいきません。
それもそのはず、
子供の体から根が生えていたのです。