第九十六話
2024/11/09 一部を修正、加筆しました。
[第九十六話]
「カッコつけて申し訳ありませんでした…」
「別に気にしてねーよ!かっこよかったしな!」
「俺も同意見だ。久しぶりにわくわくしたぞ」
「そ、そうかい?」
すっかり意気消沈したフーライに向かって、慰めの言葉をかける俺とライズ。
少しは元気を取り戻したようだ。
生意気なくらいがちょうどいいんだから、フーライは。
「それじゃあ魔力も心許ないし、戻るとしようか。アラニアへ!」
複合魔法のせいで魔力がカツカツなんじゃないか?、とは言わない。とても言える雰囲気ではない。
「やっと元気が出てきたな。そうじゃなきゃフーライじゃねえぜ!」
ライズがフーライを励ます。ナイスフォローだ。
こんな感じで俺たちはあーだこーだ言いながら、アラニアの北門に戻ってきた。
時刻は十八時。
検問を受け、冒険者ギルドに向かいながら、まだフーライに付き合わされるのかなあと思う。
アラニアの冒険者ギルドでライズが窓口に並ぶと、俺とフーライは待たされる形となった。
カウンター席で隣り合う俺とフーライ。彼はなにか話したいのか、そわそわとしている。
「なんだ、もぞもぞとして。トイレなら言ってきていいぞ」
「違うよ!いや……なんというか、今日はその、依頼一緒にできて、楽しかったというか。……とにかく、パーティプレイに付き合ってくれて、感謝するよ!」
あ、これは。
ははーん。
「気にすんなって、俺とフーライの仲だろ。それよりさ、フレンドにならないか。こうして一緒に依頼をクリアした縁もあるし」
「あ、ありがとう……」
言葉にしなくてもわかるぞ、フレンド申請したがってたことぐらい。
フーライもシズクさんと同じように、フレンドになるときにもじもじしてしまうタイプだな?
「……はい、これでオッケーだ。ライズには自分から誘えよ?」
「うん、がんばるよ!」
フーライは力強く頷いてくれた。
「なんの話してるんだ?」
「なあわわーっ!」
やっぱりダメかもしれない。
ライズの接近に、盛大に椅子をひっくり返して驚くフーライを見て、俺はそう思うのだった。
※※※
その後、フーライは無事ライズともフレンドになり、今度は彼の受ける依頼を三人でやろうという話になった。
「じゃ、とびきりの依頼を受けてくるよ」
「俺を待っている間に並んでいればよかったのに」
「い、いや、ライズの予定も聞いておきたかったからな」
決してフレンド申請を送るのに恥ずかしがっていたから並べなかったとは言えない。フーライの名誉のためにも。
「それにしても変わった技だよな。複合魔法?だっけ」
「ああ。どうやら、風魔法と雷魔法の合わせ技のようだった。普通、どちらかの属性しか唱えられないはずなんだがなあ」
「奥義みたいに、なにか鍵となるなにかがないとダメなんじゃないか?」
やっぱりライズは鋭い。俺もそう思う。
「ま、今考えても仕方ないな。後々フーライに教えてもらおう」
「そうだな!……お、噂をすればだぜ!」
ちょうどフーライが戻ってきた。
「話はそれくらいにして、行こうじゃないか、灼熱の大地、ネッサ砂丘へ!」
ネッサ砂丘の依頼を受けたのか。
フーライに共有してもらって、依頼の詳細を見る。
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[依頼]:ネッサ砂丘におけるクイーンスコーピオン一頭の討伐
〇発注者:ハロメ・デラヘルト
〇報酬:30000タメル
〇詳細:……アラニア騎士団西門防衛隊隊長のハロメという。
……この度ネッサ砂丘にてメスの成熟個体、クイーンスコーピオンが観測された。
……スコーピオンの群れができてしまうので、早急に討伐を頼む。
……クイーンは砂丘の中央部にいると思われる。
……討伐証明はいらない。
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なんとも短い文章だ。ハロメさんらしい。
説明にもあるが、クイーンスコーピオンというのはある程度成長したメスのブラックスコーピオンのことを言う。
そこまで成長したメスは、オスを誘引するフェロモンを出すため、群れを形成しやすくなる傾向にあるらしい。
また、同時に産卵期でもあるため、身を守るために甲殻が厚くなるらしい。
と、今ライズが教えてくれた。彼は戦いのために周辺の魔物の知識を頭に詰め込んでいるらしい。
どれだけ戦闘狂なんだ?
「とまあ、クイーンスコーピオンについて俺が知っていることはこれくらいだな」
「ありがとう!とっても分かりやすかったよ!」
「だろ!?ふふん!」
さてはこの二人、相性がいいな。
「じゃあ、ネッサ砂丘に行きますか」
「おう!」「足を引っ張らないでくれよ、トールくん?」
二人の調子も万全なようだ。
俺たちはカウンター席から立ち上がり、冒険者ギルドを後にするのだった。
※※※
「しかし、すごいことになってないかい!?」
「まるで黒い絨毯だな。あの中心にいるのか」
「周りのサソリを倒すだけで日が暮れそうだぜ!あ、もうほとんど暮れてるわ」
三者三様。感想を述べる。
俺たちは西門を抜け、ネッサ砂丘へとやってきていた。
砂の大地を歩くこと十数分。遂に中央部にたどり着いた俺たちが見たのは、黒い群れだった。
おびただしい数のサソリが一つの丘を埋め尽くしている。
「これこそ、複合魔法とやらの出番じゃないか?」
「じ、実は………」
フーライによると、あの複合魔法は一日に一度しか撃てないという。
そんな貴重なものを軽々しく撃ってたのかよ。
「それじゃあ仕方ないな。ライズ、なにか案はあるか?」
俺は困ってライズに意見を乞う。
「ない!というか、オスはほぼ無限湧きに等しい感じだから、各個撃破の方法じゃなくて、群れ自体をどうにかすることを考えた方がいいと思う!」
最悪な返答が返ってきた。
オスはフェロモンで周りから寄ってくるから、一匹倒している間に追加の一匹が来て、結局砂丘中のサソリを相手することになるということか。
それは嫌だな。
だったら、一網打尽にするしかない。
「フーライ、『サンダー・ランス』は使えるな?」
「もちろん。なにかいい策でも浮かんだのかい!?」
「俺が合図したらランスを撃ってくれ。それだけでいい」
「分かった」
俺は何魔法使いだ!?
そう!水魔法使いだ!
「『アクア・ウェーブ』!」
大きな波が黒い丘に衝突する。クイーンを含め、ほぼ全てのサソリが水浸しになる。
魔法使いが二人いれば、「疑似」複合魔法も可能だ!
水と雷を使った漏電攻撃!
「今だ!フーライ!」
「『サンダー・ランス』!!」
黄色い閃光の槍が、サソリたちに襲いかかる。
一瞬、夕闇に光が迸る。
バチバチバチッ!!!
一気にサソリたちが感電し、その身を焦がした。
もっとも黒いのでよく分からないが、動かなくなったので倒せただろう。
「やったね!トールくん!!」
「ああ。もう一発行くぞ、『アクア・ウェーブ』!」
丘の反対側にいるサソリたちがまだ生きている。それにクイーンも。
女王を囲むようにして、再び黒の塊が形成されようかというところに、二度目の大波が押し寄せる。
「今だ、もう一度!」
「『サンダー・ランス』!」
フーライの放った雷の槍が見事直撃。大半のサソリがノックアウトした。
チャンスは今しかない。
「ライズ、波に乗る準備は?」
「ばっちりだぜ!」
いい返事だ。
「前に出てくれ。……そこらへん。それじゃあ、行くぞ、『アクア・ウェーブ』!」
「うあわああああっ!」
生じた波に流されるようにして、ライズが運ばれていく。
乗れてないじゃんか。
「いっけえええ!」
波で一気にクイーンの元まで近づいたライズは、大きく叫び声を上げる。
「『クレセント・スラッシュ』!!!」
未だなにが起こったか気づいていない様子のクイーンに向かって一閃。
スパッ。
小気味のいい音をもって、クイーンの体を両断した。
「ふーっ」
「今度こそやったね……。トールくん!」
「ああ、ナイス魔法だった。フーライ」
俺とフーライは握手をして、お互いの健闘を称えあうのだった。
「おい、俺は!?」
※※※
その後手早くクイーンの素材を回収して引き上げた俺たちは、西門に戻ってきた。
「……クイーンスコーピオンを三人で?……中々やる」
ハロメさんにそう言われる。なんか恥ずかしいな。
「……きみたち三人のことはギルドに報告しておこう。……よくやってくれたと」
やった。これで昇級もしやすくなる……のか?
丁寧にハロメさんにお礼を言って西門を後にし、ギルドに報告しに来る。
時刻は十九時。
一旦晩御飯で解散したい。俺は二人に訊いてみる。
「ひとまず休憩もかねて晩ご飯の時間にしないか?もういい時間だぞ」
「ほんとだ!もうこんな時間かよ!」
「そうだね。ディナーにしなくちゃ。……ところで、きみたちはこの後もやるかい?」
フーライが訊いてくる。
「もちろん!」「やるな」
ライズと俺の声が重なる。
「じゃあさ。東の灯台、行かないかい?この依頼を報告したら僕も資格を満たせると思うんだ」
「むしろ行くものだと思ってたぞ」
「そうだな!」
灯台の攻略こそ、今日のメインディッシュだろう。
「二人ならそう言ってくれると思ったよ。……じゃあ僕は依頼の報告に行ってくるから、解散にしよう。二十時半にここに集合はどうだい?」
「了解」「いいぜ!」
ひとまずここまでの苦労を労いながら、別れる俺たちなのであった。




