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VRMMO [AnotherWorld]   作者: LostAngel


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第九十三話

2024/09/14 一部を修正、加筆しました。

[第九十三話]


 クマを三頭狩猟か。大変そうだな。


 夜のアラニア平原を北に向かって走りながら、そんなことを思う。


 タラフクベアーは旅の途中で大けがを負わされた相手だ。今回はうまく倒せるだろうか。


 狩るべき対象について考えていると、もうすぐ果樹園に着きそうだ。白い壁と青い屋根が見えてきた。


「シャーノさんへのあいさつはまた今度だな」


 俺は果樹園をスルーして、タラフク果樹林へと足を踏み入れる。


 夜の森は鬱蒼としていて、なんだか不気味だ。時折吹く風が、木の枝を揺らす音が気味悪い。


「ん-っと……」


 しばらく進んでいると、すぐにやつが現れた。


 まったく、ここには幼虫とハチとクマしかいないのか?


「全力で行くぞ、『アクア・ソード』!」


「グワアアアアアンッ!!」


 大きな咆哮を上げクマが猛進してくる。まるでダンプカーのような迫力だ。


 今からこれを躱して、切る。


 って、躱せるのか?


「グワアアアアアアアアアッッ!!!」


 クマは俺との距離を詰めてくる。


 あと五十メートル。


 四十メートル。


 三十メートル。


 二十メートル。


 十メートル。ここだっ!


 俺は身を翻しながら、先ほどまで自分が立っていた空間に向かって刃をふるう。


 ザシュッ!


「グワアアアアアンッ!!」


 斬撃が命中し、痛みに呻くベアー。


 クマの左腕から胴、左足にかけて大きな切り傷を入れることに成功した。多分出血の状態異常も入っただろう。


「グルルルルルルゥゥゥッ!」


 俺のカウンターが効いたのだろう。今度は低く唸りながらにじり寄ってくる。


 その間も左半身からドクドクと血が流れている。


 これは持久戦で勝てるな。だが、はやく楽にさせてあげたい。


「はああああああああっ!」


 俺はクマに向かって突っ込むと、顔に向かって水の剣を振るう。


「ザシュッッ!!!」


 既に負っていた傷のせいで、クマの反応が鈍い。


 おかげで反撃を食らうことはなかった。


 ベアーは深く刻まれた傷が致命傷となり、その身をアイテムに変えた。


〇アイテム:タラフクベアーの爪

 タラフク果樹林に生息するタラフクベアーの爪。太く、硬く、鋭い。


〇アイテム:タラフクベアーの牙

 タラフク果樹林に生息するタラフクベアーの牙。武器に使うには少し大きすぎる。


〇アイテム:タラフクベアーの毛皮 効果:突属性耐性:中

 タラフク果樹林に生息するタラフクベアーの毛皮。羽織ると暖かく、また刺突への耐性が強い。


〇アイテム:タラフクベアーの肉 効果:疲労回復:大

 タラフク果樹林に生息するタラフクベアーの肉。癖のある味だが、栄養価に優れる。


 前のときと同じ素材が手に入った。肉と毛皮はありがたいな。


 それと、レベルが上がって61になった。当分上がるとは思っていなかったので、少し嬉しい。


 よし、この調子で残り二体も倒せそうだな。


 死亡フラグなんてなかったんだ。よかったよかった。



 ※※※



「マジか……」


 俺は茂みに隠れながら、ため息を吐いた。


 次のベアーが二体同時にいたのだ。しかも、つがいっぽい二体が。


 オスとメスがつかず離れずの位置で、互いの毛づくろいをしている。


「どうするかなこれは……」


 二匹同時に相手するか。なんとかして一匹だけおびき寄せるか。


 無理だな。あそこまで密着している状態で一匹だけ釣ってくるなんてできない。


 しょうがないか。ここは集中して、近接戦で二匹とも倒す。


「『アクア・ソード』」


 俺は水の刃を展開して……。


 ガサッ


 茂みから飛び出す。


「グアッ!?」


 完全に不意を突かれた形のベアーたち。


 一気に距離を詰めて、まずは一体を仕留める!


「グワアアアアアアッ!」


 ブオンッッ!!と、こちらに近い方の一頭が爪を振るってくる。


 空気のしなる音が耳に聞こえてきた。


 俺は一息にクマの懐に飛び込み、爪の一撃を躱す。


「はっ!」


 そして、そのまま顔面を切り裂く!


 スパッ。


 小気味の良い音を立てて、ベアーの一頭に傷を与える。


「グワアアアアンッ!!」


 傷を負った個体は大きくのけぞる。


 俺の技後硬直を狙っていたのか、もう一体が飛び掛かり攻撃をしかけてくる。


 しまった!


 クマの両腕に掴まれた俺は、万力のごとき力で体を挟まれる。


「ぐわああああああっ!」


 痛みで思わずベアーのようなうめき声を出す俺。


 だがここで、ここで負けるわけにはいかない。


 シャーノさんの依頼を、必ず達成するんだ。


 力を貸してくれ、バーネスト!


『しょうがないわねえ』


「すううううっ」


 俺は大きく息を吸い込むと、俺を掴んでいるクマの頭部に向けて息を吹きかけた。


「はああああああっ」


 ボオオオオオオオオッッッ!!


 一気にクマの頭が炎上する。


 俺も火に巻き込まれそうになったが、炎の勢いでクマが手を離してくれた。


 地面を転がって、急いで燃え上がるクマから離れる。


 もう一体は、傷を負ったやつはどこ……。


「ぐっはっっ!」


 いつの間にか近づいていたもう一頭のベアーに爪を叩きつけられる。


 寝っ転がった体勢の俺にクリーンヒットした。


 痛い!


 だが、俺はそのままの体勢で魔法を繰り出す。


「『アクア・ボール』!!」


「グワアアンッ!」


 顔に水を浴びたクマは怯み、俺を押さえつけていた腕を引く。


 その隙に転がって、距離を取る。


「ふう」


 俺は起き上がって立ち上がり、体についた砂埃を払う。


 重たい一撃を食らってしまったが、二頭にダメージを与えることができた。


 頭が燃えた一頭はでたらめに腕を振るっているが、そのせいで火が全身に回って火だるまになっている。


 どんだけ火力が強いんだ。ありゃほっといても倒れるな。


 問題は、傷ついたもう一頭だ。


「グウウウウウウッッッ!!」


 四つの脚で近づきながら低く唸るベアー。威圧感がすごい。


 手傷を負った動物こそ危険というが、まさにそうだ。一頭目を狩れたのは幸運だったのかもしれない。


「グワアアアアアアアンッッッ!!」


 そして、ついに来た。


 後ろ足をバネにして力強く前進してきたベアーは瞬時に俺の目の前まで来ると、その両の爪をクロスさせて引っ掻いてきた。


 速い!


 だが、だからこそカウンターが活きる!


「『アクア・ソード』!」


 ここっ!


 俺は前進して距離を詰めると、先ほどつけた顔の傷跡に重なるように、ソードの突き攻撃を差し入れる。


 同時に、クマの両腕が俺の腹に突き刺さる。


 目も眩むほどの痛みが目の前を襲う。


「……ぐっ」


 受けた攻撃が重すぎる。おそらく出血が発生しただろう。


 だが、目の前のクマは沈黙した。


 よかった。これでシャーノさんの依頼が達成できた……。


 視界の左でもう一頭のクマが焼け落ちるのを見ながら、俺は意識を失うのだった。



 ※※※



 どれくらい眠っていただろうか。


 俺は頭を振ってその場から起き上がる。


 腹の傷は……、焼けてる?


『私が傷跡を焦がして止血したのよ。感謝しなさい?』


 そうだったのか。


 ありがとな、バーネスト。


『素直に感謝されると、なんだかくすぐったいわね』


 どっちだよ。


 俺は燃え尽きたベアーの素材を拾いながら、揺れる頭を整理する。


 これで依頼は完了だな。時刻は二十二時半。時間もちょうどいいくらいだ。


 俺は痛む傷を押さえながら、来た道を引き返すのだった。

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