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VRMMO [AnotherWorld]   作者: LostAngel


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第八十七話

2024/09/03 一部を修正、加筆しました。

[第八十七話]


 帰宅した。時刻は十七時。二時間ほど[AnotherWorld]で遊べるな。


 俺は手洗いうがいを済ませ、早速『チェリーギア』を装着する。


 さ、今日もやるとしますか。


 メニューから[AnotherWorld]のアイコンをタップした俺は、もう一つの世界にログインした。


 えーっと。前回はどこで終わったかな。


 辺りを見回すと、今はもう見慣れた、大きな門が目に入った。


 そうだ。雷太、こっちではフーライだったかに勝負を挑まれてそのまま帰り、南門でログアウトしたんだな。


「よし」


 そうと決まれば、今日はアラニアを散策しようか。着いてからゆっくり見てみたことはなかったからな。


 そう考えながら南の大通りを歩く。ここも歩き慣れたものだ。


 中央広場に到着し、アラニアにテレポートする。


 王都とはまた違った景色に、全身が包まれる。まずはどこから見ていこうか。


「えーっと……」


 まずは南の魚市場に目を向ける。今は夕方なので静かなものだ。ちらほらと片付けをしている人しかいない。


 東はどうだろうか。唯一見て回ったことのない方角だ。


 じゃあ今日は、アラニアの東部を探索することにしよう。


 そう決めた俺は、東の大通りに向かって歩き始めた。


 東の大通りには、多数の商店が連なっていた。武器、防具を売っている店。魔道具を売っている店。王都の広場にあったチルマ雑貨店もあるな。


 その中に一つ。気になるお店があった。


△カクスケ採集店△

~採集師が集めた素材が選り取り見取り!!~


 カクスケって、多分プレイヤー名だろう。こんな大通りに店を構えるなんて、相当なやり手と見える。


 ちなみに、採集師というのは採取が得意な非戦闘職の一つだ。戦闘能力はないがフィールドに出る必要があるので、不人気な職となっている。


 その代わり、得られる恩恵は絶大だ。まず、採取ポイントの数と採取可能なアイテムの量が増える。さらに、採集師による採取でしか手に入らない素材が存在する。


 そのため、このカクスケのように商売を兼ねてやる人が多いらしい。


 説明はこれくらいにして、早速店の中に入る。


「いらっしゃ~い」


 ちょっと高めの、緩~い男性の声がやってきた。


 店の中にはショーケースが並んでおり、高そうで貴重そうなアイテムが収められている。


「こんにちは。水魔法使いのトールって言います。少し商品を見せてもらってもいいですか?」


「店主のカクスケだよ~。いいよ~。水魔法使いなら調薬やってる~?」


「はい、やってますよ」


 採集師と商売がセットのように、水魔法使いと調薬もセットで考えられている。


「それならこれらのアイテムとかどう~?きっと持ってないでしょ~」


 そう言って、カクスケさんがアイテムを見せてくる。


〇アイテム:スリープバタフライの鱗粉 効果:睡眠:中

 森林地帯に生息するスリープバタフライの鱗粉。少し吸い込んだだけでぐっすりと眠ってしまう。


〇アイテム:パラライズバタフライの鱗粉 効果:麻痺:中

 森林地帯に生息するパラライズバタフライの鱗粉。取り扱い注意。


〇アイテム:ポイズンバタフライの鱗粉 効果:出血毒:中

 森林地帯に生息するポイズンバタフライの鱗粉。皮膚に触れると血が噴き出す。


〇アイテム:ネッサボテンの蜜 効果:魔力回復:小

 砂漠地帯に自生するネッサボテンの花の蜜。貴重な砂漠の恵み。


〇アイテム:ノッペラシュルーム 効果:出血毒回復:中

 アヤカシ湿原に自生するキノコの一つ。のっぺらぼうのように真っ白なマッシュルーム。


〇アイテム:ヤマタノエノキ 効果:麻痺回復:中

 アヤカシ湿原に自生するキノコの一つ。傘が八つに割けている。


……


 ちょっと待ってくれ。多い多い。どれもこれも見たことのないアイテムばかりだ。


「採集師ってすごいんですね。初見のアイテムしかないです」


「そうでしょ~。今手に入らなかったり、採集師でしか採取できないコレクションだからね~」


 少し自慢げなカクスケさん。


 実は[AnotherWorld]には季節の概念があり、四季の変化の中で手に入ったり入らなかったりするアイテムがある。


「ぜひ、買いたいです。お一ついくらですか?」


「本当に珍しくて数が少ないからね~。一つ五千タメルでどう~?」


 た、高いな。


 今三万タメルしかないから、どうしようか。


「じゃあ、ネッサボテンの蜜を三つください」


「蜜だけにってこと~?」


 唐突に繰り出されたギャグを、俺はスルーした。


「毎度あり~」


 一万五千タメルを払って、購入完了だ。


 残り一万五千タメル。


「この蜜は今のシーズンで獲れるから、いっぱい取っておく~?もし次来てくれるなら準備しておくよ~」


「ぜひお願いします。また来ようと思います」


「そう硬くならなくていいよ~。今後ともごひいきにね~」


 お礼を言って店を後にすると、店の外まで出て手を振ってくれた。


 めちゃくちゃいい人だな。近々また来よう。


 そう思いつつ東の通りを一人歩く。すると左手に、興味を引く店があった。


△カケル書店△

~方々の書物、あります~


 常々思っているのだが、店の看板についてる△は何だろう。つけなくちゃいけないのか?


「トールっ!どうしてここに……」


 店を覗くと、シズクさんの姿があった。


 そりゃあこっちのセリフですよ。シズクさんこそどうしてここに……。


「そりゃあ、ここは冴姫の店だから」


 え。


 ここって冴姫さんのお店なのか。店名は十中八九×が由来だろう。


 ぴょこ。


 シズクさんの後ろからロングヘア―の女性が出てきた。彼女が……。


「私はサキ。ここ、アラニアで執筆師をやっている。透はこっちではなんていうの?」


「トールです。『お』じゃなくて『ー』の方の。水魔法使いやってます」


「水魔法使い!それならシズクと一緒!ますます捗る!」


 なにが捗るのだろうか。怖くて聞けない。


「?……とりあえず、ここはサキが書いたスクロールや珍しい本が売ってる店。トールもひとしきり見てみるといい」


 妄想に入り浸り、使い物にならないサキさんに代わって、シズクさんが応対してくれる。サキさんの店なのに。


「ありがとうございます。色々見てみます」


 シズクさんにお礼を言って、店内を見て回る。


 店内はどうやら、三つのスペースに仕切られているようだ。


 一つ目が、入口に最も近いスクロールのコーナー。一度きりの魔法が打てるスクロールが巻物状になって棚に収められている。火、水、土、風の基本属性の他に、氷や木、雷といった珍しい属性のスクロールもある。


 これを全部一人で書いたというのか。すごいな。執筆師は。


 あ、執筆師というのは、魔力を込めて物書きができる非戦闘職だ。


 魔法を具現化するスクロールを作ることができるのが一番の強みだが、レベルが上がると悪魔を呼び出す本を書いたりすることができるらしい。


 なかなかロマンがあるな。その代わり、戦闘はからっきしらしいが。


 二つ目が書物のコーナーだ。左奥にある。


 図鑑や魔法の教科書など、ノーレッジが好きそうな本ばっかりだ。


 三つ目が右奥にある、なんだこのコーナー?


~カケルの×本~


 ……やめておこう。記憶から瞬時に消し去る。


「右奥以外は実用性があるものばっかり。気になるものがあったら言ってほしい」


 シズクさんも辟易しているようだ。


 分かります、その気持ち。


 どれ、なにかノーレッジ用に買っていこうか。


 俺は左奥に歩を進める。


「どれどれ、『魔法使いの鉄則 ~水魔法版~』!」


 これは水魔法使いとしては読まずにはいられないだろう。


 やつのためにではなく、自分のために買おう。


「それはあまりトールに当てはまらないかもしれない。型破りな戦い方するから、トール」


 シズクさんはそう言うが、読んでみる価値はある……と思いたい。


 ぽけーっとしているサキさんの代わりに手続きをしてくれたシズクさんのおかげで、本を購入できた。店主はいつまで呆けているのだろうか。


 費用は一万タメル。残り五千タメルだな。


「……はっ。私はなにを」


 今さら戻ってこられても……。


「サキさん、シズクさん、ありがとうございました。これで失礼します」


「来たばっかりなのに、もう帰るの?」


 いや、実は入店してから結構経ってます。あなたが意識を失っていたんです。


「また来るといい」


 そういってくれるシズクさん。これじゃあ、どっちが客でどっちが店員か分からないな。


 俺はそう思いながらも二人に挨拶をして、店を出るのだった。

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