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VRMMO [AnotherWorld]   作者: LostAngel


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第七十三話 『アラニアへの旅』4

2024/08/06 一部を修正、加筆しました。

[第七十三話] アラニアへの旅4


 タラフク果樹林に到着した俺たちは、早速”アレ”の洗礼を受けていた。


「い、いやですわいやですわいやですわ!」


 ローズが錯乱状態だ。


 まあ、無理はない。


 人間サイズ並みにでかい蝶だか蛾だかの幼虫が、そこら中にいるのだから。


「あれはパラライズバタフライの幼虫だね。吐く糸に麻痺の状態異常がついてるから注意してね」


 いうなれば、あれはパラライズバタフライラーバといったところか。


 特に前衛にとっては注意が必要だな。いくら鈍重な相手とはいえ、拘束されてしまったらやられるリスクが出てくる。


 と、冷静に分析してみる俺。


「おい、なんだこれ、めっちゃピリピリするぞ!」


「ほんとだ、おもしろいぞ!ステムとブルームもどうだ!」


 ライズとユーヤは話を聞いていなかったのか?


 ラーバの見た目は巨大な黄色の幼虫といった感じだ。みてくれが弱っちいので二人ともなめているのだろう。


「基本的に草食だから人間は襲わないけど、噛まれると麻痺でショック死しちゃうらしいよ」


 少し遠くから、フクキチが脅し文句をつけ足した。


 すると途端に……。


「おい、助けてくれえ!!」


「動けない、ステム、ブルームぅ!!」


 面白いほどの変わり身だ。


 もっと見てみたかったのだが……。


「はあ、うちのバカが申し訳ないわ。ブルーム、やっちゃって」


「はいですっ!『ウインド・アロー』!」


 ブルームの杖から放たれた風の矢が、柔らかい幼虫の体を串刺しにする。


「うう、グロッキーですわ……」


 虫の潰れる有様を見て、ローズが口を押える。


 確かに、苦手な人にとってはショッキングな光景だろうな。


 [AnotherWorld]は全年齢向けのゲームだが、どうしても攻撃のエフェクトが出てしまうので、精神的にきつい絵面が出てくる場合があるのだ。特に魔法を魔物に当てたときとか。


「まあまあ、この後たらふくフルーツが食べられると思えば。もう少しの辛抱だよ」


 彼女の様子を見て、フクキチがなだめる。


「採取ポイントが色々あるわね。リンゴにオレンジ、モモにブドウだって」


 その横ではステムが暇を見つけては、あちこち寄り道して採取に向かっている。


「タラフクアップルにタラフクオレンジ、タラフクピーチにタラフクグレープだね。ここのは全部大粒で甘いんだって」


 すかさず、フクキチの解説が入る。


 いいな。調薬にアクセントとして入れてもいいかもしれない。苦い良薬も、甘味料の力で和らげられる可能性がある。


「ちょっと残しておいてくれ」


「最初から全部取ってないわよ」


 俺もちょこちょこ寄り道して、フルーツを採取することにした。



 ※※※



 森を進み始めて十分間ほど。ステムが当たりを引き当てた。


「きゃっ」


 彼女に似つかわしくない(かわいらしい)声を上げて、ステムが勢いよく採取ポイントから離れる。


 続いて出てきたのは、大きなハチの大群だった。


「ぽ、ポイズンワスプの群れだね。尾の毒針には出血毒がたっぷりと含まれてる!」


 走って距離を取りながら、大声でフクキチが説明してくれる。


 毎回毎回解説してくれるなんて、旅の前に大量の情報を仕入れてきてくれたんだな。


 ブウウウウンッ!


 羽音を響かせ、バスケットボール大のスズメバチのような魔物が茂みからひっきりなしに出てくる。


 それにしても、ものすごい量だ。


 となると、やっぱりまた……。


「奥義[タイカイノシズク]」


 ですよね。シズクさん、バンバン奥義打ちすぎじゃないですか?


 激流に流されながら、俺は疑問に思うのだった。


 もしかして、シズクさんも虫が嫌い?



 ※※※



「流石に慣れてきたな」


 本日二度目の[タイカイノシズク]に、俺は順応していた。


 流された先でマップを見てみると、どうやら少し東にいるようだ。このまま南西に移動しつつ、皆と合流しよう。


 皆には果樹園で集合と、メールを打っておく。


 それにしても[タイカイノシズク]、すごい威力だな。毎回シズクさん以外が流されてしまうのは玉に瑕だが。


「ハチ、ハチ……」


 そんなことを考えつつ、俺はところどころにある採取ポイントを漁りながら果樹園を目指す。


 さっきのハチの量を見る限り、以前のカナリアスケルトンのときの方が大変そうだと感じた。


 よって、ハチを呼ぶ。水魔法を取り戻した今の俺なら、一人でもさばききれるだろうと判断した。


 そうして、目についた採取ポイントを限界まで漁り続けること、何回目だろうか。


 ついに来た。


 ブウウウンッ!!


 大きな羽音とともに、黒と黄色の縞模様の、でかいハチが突っ込んでくる。


「……」


 集中!


 まずは三匹のハチがやってきた。一匹は正面から針を突き出してきて、二匹は左右から掴みかかってくる。


「『アクア・ソード』」


 微妙に魔物の位置関係が悪いので、三匹まとめては無理だったが、正面と左のハチはカウンターで切り捨てる。


 そうしたら、右の一匹が俺の右肩に止まろうとしてきたので、そちらを向き息を吹きかける。


 頼んだぞ、バーネスト。


 すると瞬時に、ハチが燃え上がった。


『しょうがないわね、今の身のこなしに免じて助けてあげる。まったく……』


 ありがとう。バーネストとはいい付き合いができそうだ。


 しかし、戦闘はまだまだ続く。炎にも怯まず、今度は五匹が同時に襲いかかってくる。


 的が大きいのが幸いだな。


「『アクア・アロー』、『アクア・アロー』」


 まず、手前側の二匹を水の矢で撃破する。


 だが魔法の硬直を狙って、もう三匹が肉迫してくる。


 かざされた針をすんでのところで避けながら……。


「『アクア・ソード』」


 俺はカウンターで一匹を袈裟切りにする。 


 これって魔法使いというより、半分剣士の戦い方じゃないかと思いつつ、続けざまにもう二匹も三枚におろす。


 正面に向き直ると、残りの二匹が迫っていた。


「『アクア・アロー』、『アクア・アロー』」


 ここは少し距離があるので、魔法で倒す。


 ちょうどこの二匹を倒したところで……。


 ブスリ。


 左肩の後ろの部分を刺される。


 なにっ!?羽音が全くしなかったぞ。


「っ!」


 急いで振り返って水の刃を振るが、空を切るだけだった。


 それどころか、ハチの姿もない。だが、確かに左肩はジンジンと痛む。


 もしかして、姿が見えない?


 と悟ったと同時に、今度は右太ももに昆虫の節足が触れる感触がする。


 そこには、歪んだ自分の脚が見えるだけだった。


 まさか、光学迷彩か?


 魔法の発動が間に合わないと思った俺は、とっさに息を吹きかける。


 頼む。間に合ってくれ。


 炎が見えないハチを焼き尽くすのと、鋭い針が俺の太ももを突き刺すのが同時だった。


「~~~~っっ!!」


 声にならない絶叫を上げつつ、俺はその場にうずくまる。


 ポイズンワスプの針は太く、毒を流し込まれなくても損傷個所が傷つくのがいやらしい。


 ただ幸い、ハチの群れはこれで最後のようだった。


 獲得したアイテムはこちら。


〇アイテム:ポイズンワスプの顎

 森林に生息するポイズンワスプの顎。鋏のようにすぱすぱと切れる。


〇アイテム:ポイズンワスプの羽

 森林に生息するポイズンワスプの羽。向こうが見えるくらいに薄く透き通っている。


〇アイテム:ポイズンワスプの毒針

 森林に生息するポイズンワスプの毒針。槍の穂先に使えそうな鋭さ。


〇アイテム:ポイズンワスプの毒液 効果:出血毒:中

 森林に生息するポイズンワスプの毒液。体内に入ると組織を壊死させながら蝕む。


〇アイテム:ポイズンワスプの触角

 森林に生息するポイズンワスプの触角。一対の角からは、互いにコミュニケーションをとるためのフェロモンが出ている。


 燃やしてしまったためか、透明なハチの素材は得られなかった。残念。


 さて、アイテムを解説している余裕なんて今の俺にはなかった。


 左肩と右足を刺され、毒が回っている最中だ。


 一刻も早く果樹園にたどり着かないとな。


 のっそ、のっそ、のっそ。


 ん?なんだこの足音は。


 のっそ、のっそ。


 ああ、そうか。


 ハチがいるんだから……。


 のっそ。


 クマもいるよな。


「グワアアアアアン!!」


 意外にも易しそうに見える果樹林が鬼門になるなんてな。


 と思いながら、俺は前方で仁王立ちしている大きなクマと相対するのだった。



 ※※※



「グワアアアアンッ!」


 大きく振りかぶった前腕の一撃を、大きく転がって回避する。


「『アクア・ランス』」


 威力特大、水の槍がクマの腹をつらぬ……。


「なにっ?」


 かなかった。


 そうか、クマはハチによく刺されるから、突属性に耐性が……。


「ぐぅわっ!!」


 考えている途中に、前腕の一撃をもろに食らう。


 大きく吹き飛ばされ、木に激突する。


『あら情けない。私の力が必要?』


 いいや。


 これくらい、かすり傷だ。


「『アクア・ソード』」


 左腕を垂らして、右足を引きずりながら、クマとにらみ合う。


 満身創痍。勝負は一瞬。それ以上の余力はもうない。


 来る!


 三度クマがその腕を振るう。


 俺は身をよじり、その攻撃を躱そうとする。


 だがそれでもよけきれずに、負傷している左肩に爪が食い込む。


「うがあああああっ!!」


 猛烈な右方向への圧力に耐えるように獣のような咆哮を上げ、俺は右腕に握った水の刃を思いっきり振るう。


 スパッ。


 余計な力が入っていなかったのか、驚くほどきれいにクマの首が宙に舞う。 


 それと同時に、俺の意識も宙に舞うのだった。

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