第七十二話 『アラニアへの旅』3
2024/08/06 一部を修正、加筆しました。
[第七十二話] アラニアへの旅3
「よし、いくぞ!」
「ちぇっ、魔法を取り戻した途端に調子づいて」
意気揚々とした俺に対し、ライズが愚痴をこぼした。
「まあまあ、俺たちもいいところを見せられるようになるってことじゃん」
そんなライズをユーヤがなだめる。
意外と周りが見られるタイプなんだな、ユーヤって。
「なんかでかいのがきたぞ、あれはなんだ?フクキチ?」
全長十メートルくらいだろうか。大きな翼をもったワシ?タカ?
……とにかく猛禽類が、こちらに向かって突っ込んでくる。
「あれはストームイーグル。ウインドイーグルの上位種だね」
流石王都から離れたフィールドだ。上位種がごろごろいるな。
「キエエエエエエエッッ!!!」
なんて変に感心していたら、先ほどのイーグルよりも力強い鳴き声を浴びせてくるストームイーグル。
鳴き声まで進化している。相当力強そうだが……。
「手出し無用だ。こいつは俺たちで倒す!いこうぜ、ユーヤ!」
「おう!」
「キエエエエエッッ!!」
ライズとユーヤが駆け出すと、それを薙ぎ払うかのようにストームイーグルが羽ばたく。
たったそれだけで、周囲に突風が渦巻いた。
「こんなもん、『スラッシュ』!」
ライズが剣を振り払った風圧で、そこら辺のつむじ風を吹き飛ばす。
「ライズ、手を貸してくれ!」
「おうよ!」
その後、剣を手放したライズに向かって、ユーヤが猛然と走り出す。
「いっけええええええ!!」
そのまま大きくジャンプしたユーヤに踏み台を作るような形で、ユーヤがライズの両手を蹴って空高くまで跳ね上げる。
そう、ストームイーグルのいる高さまで。
「うおおおおおっ!これが俺たちの絆!『クレセントスラッシュ』!!」
いつ、どこでそんな絆が育まれたのだろうか。
まあそれは置いておくとして、そんなユーヤの三日月切りが胴を真っ二つにし、見事ストームイーグルを倒した。
「おお……」
後ろで溜息を漏らす俺。
なかなかやるな。剣士の火力っていうのも素晴らしいものだ。
「すげーな、ユーヤ、一刀両断しちまうなんて!」
「『クレセントスラッシュ』の熟練度は結構上げてきたからな。上位種とはいえ、一発で倒せてよかった」
スキルや魔法には、使えば使うほどその威力が上昇する熟練度という概念がある。
基本的に、技を使えば使うほどその技の熟練度が上がる。俺の『アクア・ランス』なんかもそうだな。熟練度が上がってなきゃ、フォクシーヌにとどめを刺すことはできなかっただろう。
さて、そんなことを考えていると、次のお客様の登場だ。
グリーンウルフの群れ。率いているのは、グリーンウルフよりも濃い緑色の毛並みの狼だ。
「どうやら、リーダーは上位種のフォレストウルフみたいだね」
ここは森じゃないけど、いるんだな。フォレストウルフ。
しかし、本当に上位種が多い、このフィールド。
「ここは、私たち中衛に任せてほしいですわ!」
「ええ、そうね」
「やっと僕の出番かい?」
中衛のローズ、ステム、フクキチが息巻く。
フクキチなんて、これから死にそうなやつのセリフを吐いているが大丈夫だろうか。
なにはともあれ、前衛と中衛がスイッチをする。
「ガアアアウウッ!!」
まずは、取り巻きのグリーンウルフが三頭突撃してきた。
「ここはわたくしに任せてくださいまし、いきますわよ、ウルファン、ウィングル!」
ローズが従魔の結晶をかざして、従魔を呼び出す。
「ガウガウガウッッ!!」
「キエーーッッ!!」
従魔が二匹に増えたのか。ファングウルフのウルファンと、ウインドイーグルのウィングルか?
ちょっと名前の付け方が安直だ。まあ、人の感性をとやかく言うつもりはないが。
「ガウッ!」「ガアウッッ!」「キエエッッ!!」「ガアアアウ!!」
早速、ウルファンとウィングルがグリーンウルフ二匹と取っ組み合う。
戦場は一瞬にして、獣と鳥の鳴き声が交差するけたたましい光景に様変わりした。
そして、残りのもう一匹はというと……。
「私が相手いたしますわ!『スティング』!!」
飛びかかってきた最後のグリーンウルフに、カウンター気味に放たれた槍の一突きが見事に命中。
一撃でグリーンウルフを仕留めた。
ローズも相当レベルを上げてきているな。
「ガウガウガウ!!」
「キエーッッ!!」
従魔たちの戦いも終わったようだ。ウルファンとウィングルが勝鬨を上げている。
「お前たち、よくやりましてよ」
ローズが二匹の頭をなでている。
動物が懐いている姿を見ると、なんだかほっこりするな。
って、まだウルフの群れはいるんだった。
残りは三頭。グリーンウルフ二頭に、リーダーのフォレストウルフが一頭だ。
「私が取り巻きをやるわ。フクキチさんはフォレストウルフをお願いできる?」
「フクキチでいいよ。もちろん、どんとこいだ!」
二人の会話を聞いて、フクキチの背中も大きくなったなあとしみじみ思う俺。
すると、唐突にステムが走り出した。
「槍使いの強みは……」
そのまま一匹のウルフの眼前に近づくと、目にもとまらぬスピードで突きを二回繰り出す。
「攻撃スピードの速さよ」
急所に的確に攻撃を当てて一匹目を倒すと、そのまま二匹目へ。
同じように胴と頭に二回の突きを浴びせ、ウルフをあっという間にのした。
「やっぱりかっこいいですっ!ステムの戦い方っ!」
俺の隣でステムの戦い方を見ていたブルームが絶賛する。
俺もすごいと思う。プレイヤーの中でもトップクラスの身のこなしじゃないだろうか。
「最後は僕だね。『スタンプ』!!」
そう意気込みながら、フクキチが先制攻撃を繰り出す。
しかし、素早い身のこなしでフォレストウルフは避ける。
「そう来ると思ったよ、『スウィープ』!!!」
フクキチが宣言すると、叩き付けた状態の槌を横に薙ぎ払う。
クリーンヒット!大きな一撃をもらったフォレストウルフは、質量のある槌に吹き飛ばされつつも体勢を立て直そうとする。
「だめだよ、『スタンプ』!」
そこを、フクキチが見舞う。
最後の一撃がオオカミを襲った。
「ギャウンッッ!!」
槌のスタンプをもろに受けたフォレストウルフは、そのまま沈黙した。
「やりましたわね!フクキチ、ステム!」
「特訓の成果だよ!」
「これくらい、どうってことないわ」
変な口調だけどなぜか品のあるローズに、元気いっぱいに返すフクキチと、あくまでクールなステム。
中衛の息もぴったり合っているようだ。
※※※
こんな感じで戦闘を繰り返すこと、三十分くらいだろうか。
ようやく、大きな木々の茂る森が見えてきた。
「あれが、タラフク果樹林だよ。文字通り、たらふくフルーツが食べられる森林のフィールドさ!」
フクキチが涎を垂らしながら言う。
確かに、名前からしておいしそうなフィールドだ。
「アラニア方面、果樹林の南側には果樹園があるそうだから、そこを目指して一気に行っちゃおう。このペースなら、野宿の必要はいらないね」
現在の時刻は二十二時。ということは、二時間半ほどでここまで来たことになるな。
「甘いものは大好きですっ!行くですっ!皆!」
「わ、私も楽しみです」
「ブルームほどじゃないけど、少しは興味あるわね」
「……じゅるり」
「食べすぎないように注意ですわ!」
ブルーム、要さん、ステム、シズクさん、ローズは完全に、甘味への誘惑に誘われていた。
味は感じられないけどな、と言ってしまうのは無粋だろう。黙っておく。
女性陣の士気の高まりを感じながら、俺たちは果樹林へと足を踏み入れるのだった。




