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VRMMO [AnotherWorld]   作者: LostAngel


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第六十九話

2024/07/30 一部を修正、加筆しました。

[第六十九話]


 ノーレッジのお小言から逃げるようにログアウトした俺は、リアルの諸々を済ませてから晩御飯としゃれ込んだ。


 さて、今日の晩ご飯は鶏の唐揚げ。


 買ってからだいぶ経つ惣菜だが、レンジで温め直せば大丈夫だろう。冷蔵庫でちゃんと冷やしておけば、数日は保つ、はず。


 では、同じく温めたご飯と、豆腐とわかめのお味噌汁と一緒に……。


「いただきます」



 ※※※



 時は進んで時刻は二十一時。ご飯を食べた後は、課題を少しやっておいた。


 [AnotherWorld]をやっていこう。といっても、もういい時間なのでちょっとだけだ。


『フクキチ。ガラスの試験管をもう少しくれるか?』


 やることというのは、もっと調薬をしたいので、フクキチに連絡して試験管をもらえるか聞いておくという作業だ。


『いいよ!今から行くね』


 すると二つ返事でOKが来た。


 明日旅に出るときに取引すればいいと思っていたが、まさか今日中に会えるとは。


 早速、”工房”で落ち合う。フクキチは二、三分でやってきた。


「はい!ちょうど二百本になるように、プラス八十本もらってきたよ」


 よし、これで調薬できる本数が増えるな。


「ありがとう。これでどんどん作れる」


「期待してるよ、トール大先生!」


 フクキチが言いながら、肩をバンバンと叩く。


 視界が揺れるからやめてくれ。酔いそうになる。


「それで、明日はいよいよアラニアに行くぞ。準備はできてるか?」


 用件が終わった後に、俺は聞いてみる。


 すると彼は……。


「もちろん!トールの薬も含めて、売るものをたっぷり準備しているよ」


 と自信満々に言う。


「それはよかった。明日はがんばろう」


「そうだね!野宿用のアイテムもばっちりあるから、外泊もどんとこいだよ!」


 え?


 アラニアって、そんなに遠いのか。


「遠いもなにも、ガルアリンデ平原を超えて、アヤカシ湿原を含めた四つのフィールドの先にあるんだよ、アラニアは」


 さりげなく思考を読まれてしまった。


 とはいえ、結構な長旅だな。一日くらいで街にたどり着けると思っていたので、野宿の準備なんてしてないぞ。


「そんなトールでも大丈夫さ。なんとこの度、九人分のテントと寝袋を用意してきたからね!」


「おお!そんなアイテムがあるんだな」


「そう、これがあると、フィールド下でも宿泊デバフなしで泊まれるんだ。結構高かったんだよ?」


 宿泊デバフというのは、フィールドなど適切でない場所でログアウトし、翌日を迎えた場合に与えられる体力、魔力に対するデバフのことだ。具体的には、体力、魔力がちょっと減っていたりとか、そういうものだ。地味なものかと思うかもしれないが、死に戻りにも直結することなのでバカにはできない。


「本当にありがとう、フクキチ。フクキチがいなかったら、旅が成り立ってなかったよ」


「そ、そうかな……」


 褒められて満更でもないフクキチ。


 そんな彼と集合場所、日時についてもう一度確認をし、今日は早めにログアウトするのだった。



 ※※※



 翌、四月十九日土曜日。


 今日は昼からバイト、夜にはアラニアを目指す旅がある。


 がんばっていこう。


 ということで、朝ごはんのトーストとスープとサラダを食べた後、寝る。


 今日の夜は長丁場になりそうだからな。睡眠時間は確保しておかないと。


 それじゃあ、おやすみなさい。



 ※※※



 九時から十一時半まで、ぐっすり寝た。これで今日は大丈夫だろう。


 ということで、次は腹ごしらえだ。カップ焼きそばを作って、食べる。


 最近インスタントが増えてきたけど、まあ仕方ないよな。


 そう自分に言い訳しながらパクパクと食べ進め、大口を開けて最後の一口をいただく。


 おいしいけど、味がちょっと濃いな。そこが好きっていう人の気持ちも分かるが。


「喉が渇く」


 個人的に、カップ焼きそばに一番合う飲み物は水だ。冷たいのよりも、常温のものの方がいい。ソースの味が口内で薄まってちょうどいい感じになる。


 というわけで、今回俺が準備(?)したのは水道水。


 いただきます。


「ふわあ~」


 うまい。ソースで支配された口の中が希釈され、幸せな気持ちになる。やっぱりインスタントは、濃い味から解放された瞬間にカタルシスを感じる。


 ちなみに、焼きそばにはマヨネーズはかけない派だ。小袋のやつがついてきたが、どうしようかと放置している。


「夜は野菜とか肉を摂らないとな」


 さて、食べ終わったことだしバイトに行くとするか。


 俺はトートバッグに必要なものを詰め込んで、部屋を出るのだった。



 ※※※



「あんたねえ、要ちゃんを命に代えても守りなさいよ!」


 バイトに行くと、要さん経由でアラニアへの旅のことがばれたのか、紅絹先輩がガミガミ言ってきた。


「分かってますよ。なにを犠牲にしても俺が要さんを守ります」

 

 彼女は今、裏のバックヤードで作業している。


 こんな話を本人に聞かせるわけにはいかないので、俺は恥ずかしいセリフを吐いて会話を終わらせにかかる。


「よく言った!それでこそ漢よ!」


 すると紅絹先輩はそう言って、肩をバンバン叩いてくる。


 フクキチ(彰)といい、どうして俺の周りには当たりの強い人が多いんだろうか。


「あ、あの、ぜ、全部聞こえてます……」


 なんて思って肩を叩かれていたら、いつの間にかゆでだこのように顔を真っ赤にした要さんがそばにいた。


「あ……」


 終わった、と落胆しつつも(照れた表情もかわいいな)とのんきに思う俺なのだった。 

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