第六十三話
2024/07/18 一部を修正、加筆しました。
[第六十三話]
前回、見事に疲労回復薬を調合した俺。
次はなにを作ろうか。といっても、ココデイモガイの毒液とココデオオシャチの骨しか余ってんないだけどな。
この二つは特に相性が良いとかなさそうだし、二種類の薬が作れそうか。
よし、まずは毒薬を作ろう。
『アクア・クリエイト』で水を張った鍋に紫色の毒液を入れる。手につかないように、そーっと。
鍋をゆすりながら毒液を全体に溶かす。
加熱して毒の成分が揮発したら大変なことになるから、これぐらいしかやることができない。
出来た毒薬を試験管に注ぐ。
〇アイテム:毒薬 効果:神経毒:中
飲んだ相手を神経毒に侵す毒薬。相手によって効き目が異なるので注意が必要。
うーん。薄めたから効果が落ちたな。仕方ない。
もっと必要な素材や手順がある気がする。だがいろいろ試すのは危険だし、保留だな。
なにかに使えそうだから、この十本分は取っておく。
最後に、ココデオオシャチの骨を使って魔力回復薬を作ろう。
まずは、背骨のような素材を鍋に入れ、純水でぐつぐつと煮てみる。
出来上がった薬がこれだ。
〇アイテム:魔力回復薬 効果:魔力回復:微
飲むと魔力をわずかに回復する薬。苦みが強い。
やっぱり、そのまま使うと効果が一段階落ちるな。なにか一手間加えろという運営の思惑があるのかもしれない。
ということで次は、骨を擂り鉢と擂り粉木ですり潰してみる。粉末状になるまで潰したら、水の入った鍋に加え、沸騰させる。
少し待つと、オレンジ色のなにかが沁み出してきた。これが魔力回復の成分だろうか。
茶こしで粉末を回収する。しまった。細かくしすぎて一部が取れないぞ。
〇アイテム:魔力回復薬 効果:魔力回復:小
飲むと魔力を少し回復する薬。苦みが少しある。
ひとつ前のものと比べて、効果と味が変わったな。これは、もっと作ってみる必要があるか。
今度は、骨を粗く潰して茶こしで取り除きやすくした。後の手順は全て一緒だ。
〇アイテム:魔力回復薬 効果:魔力回復:小
飲むと魔力を少し回復する薬。無味。
どうやら、骨が残ってると苦みが出るらしい。
さらに効果を上げるには組み合わせの素材が必要になりそうだし、ここまでかな。
では、今回の調薬の成果を発表します。
この度得られた薬は、
〇アイテム:疲労回復薬 効果:疲労回復:中
疲労を回復する薬。飲むと日をまたいだときの体力、魔力の回復量が増える。旨味にあふれる味。
〇アイテム:毒薬 効果:神経毒:中
飲んだ相手を神経毒に侵す毒薬。相手によって効き目が異なるので注意が必要。
〇アイテム:魔力回復薬 効果:魔力回復:小
飲むと魔力を少し回復する薬。無味。
の三種類になります。
疲労回復薬、魔力回復薬はNPCに高く売れそうだし、素材がある限り量産しておこう。
毒薬はちょっと売るわけにはいかないな。シズクさんにばれたら大目玉じゃ済まないだろう。なので、自分用にキープするに留めておく。
その後、調薬を繰り返し、作った九十本がこちらになります。
疲労回復薬×50、毒薬×10、魔力回復薬×30。
毒薬と魔力回復薬は使えそうなので、『試験管ホルダー』に一本ずつセットしておく。体力回復薬は全部売ってしまったので、ホルダーにはこの二本しかない。
うーん、もっとヨクナレ草が欲しいな。
そんなことを思いつつ、俺はログインを確認できたフクキチに連絡を取るのだった。
※※※
時刻は十八時半。俺とフクキチは、今回作った薬について商談を進めていた。
「すごいよ、効果:中の疲労回復薬なんて!しかも味も申し分ない。これは売れるよ!魔力回復薬は効果:中のものが出回ってるからそんなに高く買い取ってもらえないだろうけど、なにより飲みやすさがいいね。初心者用に十分売れるよ」
「それで、毒薬はどうだ。俺としては一番作りやすいからもっと出したいんだが」
俺がそう言うと、フクキチは渋い顔を作った。
さっき毒薬は売らないと言ったが、舌の根が乾かぬうちに売りに出す提案をしてしまっていた。
やはりお金がほしいのだ。シズクさんに見つかったら謝ろう。
「そーだね、毒薬はあんまり需要がないんだよね。弓使いが先端に塗るくらいでね。刃に塗った薬の効果って一撃与えただけで落ちちゃうから、剣とかには採用しづらいんだ」
「なるほど、それで毒薬は不人気と……」
[AnotherWorld]の世界でも、需要と供給のバランスはしっかり存在する。
毒や薬も、世間のニーズに比例して売れるか売れないかが決まるというわけだ。世知辛いが、面白いよな。
「そういうわけなんだ、ごめん。毒薬は買い取れないや」
「ダメで元々だったから、気にしなくていい。それに近い将来、需要が急増するかもしれないぞ」
「トール?顔が歪んできてるけど……」
そんなにひどい顔してるか?
と思いつつ、俺は邪悪な顔を隠そうともせずに商談を進めていくのだった。




