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VRMMO [AnotherWorld]   作者: LostAngel
102/125

第百二話

投稿が滞ってしまい申し訳ありません。本日より投稿を再開します。

2024/11/09 一部を修正、加筆しました。

[第百二話]


 時刻は二十時半。俺とアケミさんは『オアシス』に帰ってきた。


「お疲れ、ごはんだから落ちるねっ!」


「俺もご飯です。お疲れさまでした」


 大した活躍はできなかったが、いい勉強になった。火力が全てを解決するときもあるんだな。


 メニューからログアウトを選択し、現実世界へと戻る。


 ふう、今日も疲れたな。晩ご飯はなににしようか。


 そうだ、パスタにしよう。疲れたときには簡単なものだ。


 早速麺を茹で、ミートソーススパゲッティを作ると、お腹が空いていたのか一気に平らげてしまった。


 少し物足りないが、これ以上食べても太るのが心配だ。追加で食べるのはなしにしよう。


 俺は食器を片付け、皿洗いをちゃちゃっと済ませる。


 時刻は二十一時。課題や読書は明日の午前に済ませるとして、今夜は[AnotherWorld]の続きだ。


 俺は『チェリーギア』をセットして、電脳空間へと潜り込むのだった。



 ※※※



 一時間くらい遊ぼうと考えているので、今夜は『オアシス』観光をしよう。ノーレッジのために本を買いたいしな。


 現在の所持金は145000タメル。


 元々持っていた5000タメル+カクタス、ウルフの依頼分5000タメル+ベアーの依頼分100000タメル+サソリの依頼分の半分35000タメル=145000だな。


 これだけあれば装備も新調できるだろうか。いや、カナメさんに頼んだアレがあるからな……。


 そう考えつつ、南門から村の中央に向かって歩いていると、面白いお店を見つけた。


△カンカン遺跡の不思議な書物△

~レプリカだけど、ロマンだよ!~


 カンカン遺跡?どこだろう、そこは。


 と思ってエリアマップを確認してみる。


 すると、砂漠の真下に、大きな遺跡が広がっているらしいということが分かった。


 なるほど、そこで発掘された書物のレプリカが売られているのか。


 俺は気になって入店してみる。


「へいらっしゃい!」


 溌溂としたかけ声とともに、店主であろう人が出迎えてくれる。


「あっしはここの店長をしております、アノムって言います。以後お見知りおきを」


「ご丁寧にありがとうございます。水魔法使いのトールです。よろしくお願いします」


 なんだか怪しそうな見た目のおじさん、アノムさんと挨拶を交わす。


 四方に飾られた書棚に、書物がびっしりと収められている。奥側にはアノムさんが佇むカウンター席がある。


 本を眺めていてもちんぷんかんぷんなので、俺はカウンターに近づく。


「それで、本日はどういったものをお求めで?翻訳初心者でも読めるような薄いものから、未だ一割も解読されていない分厚いものまで色々ありますよ」


「後者の方がいいですね。未解読の分厚い本をください」


「おっ、お客さ~ん。チャレンジャーですね。少々お待ちください。取ってきますんで」


 そう言うと、アノムさんはカウンターの奥に引っ込んでしまった。


 なにやらガサゴソと物を探すような音が奥から止んだのは、数分後のことだった。


「はい、こちらお求めの品になりやす」


 と言って彼が差し出したのは、辞書のように大きく分厚い書物だった。ページの紙が真新しいので、古臭さはさほど感じない。


 書物の表紙にはよく分からない文字で題がつけられている。


 なんだかこういうのを見るとわくわくするな。


「大きいですね。それにすごく重そうだ。……それで、一体いくらくらいですか?」


「そうですね。贋作家のあっしが半年かけて写し取ったことを加味して、十万タメルはいただきましょうかね」


 十万タメル……!高いな。


 しかし、未解読の言語で書かれた分厚い書物となると、ノーレッジが喉から手が出るほど読みたいだろう。


 仕方がない、買うか。


「じゃあ、買います。こちら十万タメルです」


「ありがとうございやす。写し取ったはいいものの、なかなか買い手がつかなくて困ってたんでさあ」


 俺はアノムさんに十万タメルを手渡し、分厚い書物を受け取る。


「一つ聞いてもいいですか?……贋作家ってなんですか?」


「シンプルに言うと模造品を作る役職でさあ。魔力を消費して、発掘された品や絵画、陶芸品といった美術品なんかを模造することができやす。商売と相性のいい役職になりやすね」


「なるほど、ありがとうございます!」


 勉強になったな。


「そうそう、その模造についてなんですが、中には偽物を本物として販売するような輩もいるので、気をつけてくださいね。あっしは模造品専門でやらせてもらってて、贋作家ギルドの認証もありますから、安心してくだせえ」


 そう言ってへんてこなカードを見せるアノムさん。そこには『贋作家ギルド 認定証 -アノム・ヒャルティ-』と書いてあった。


 やっぱり、偽物を堂々と販売する人もいるんだな。その辺りは注意しないと。


「それと、遺跡で見つけた考古物は全て、『オアシス』の考古学者ギルドに納品するようにしてくだせえ。あっこで一元して管理を行っています。こちらに持ってきてもすぐにレプリカを作ることができねえんで、注意してくだせえ」


「分かりました」


 遺跡からなにか持ち帰ってきたら考古学者ギルド、ね。きっとギルドで無断に贋作を作ることを防止するために、このように厳格な処置を取っているのだろう。


「なにからなにまでありがとうございました。失礼します」


「またなにかあったら、ぜひうちに立ち寄ってくだせえ。ありがとうございやした」


 見た目は怪しそうだったけど、親切な人だったな。お金が貯まったらまた来よう。


 一気に十万タメルを失ってしまったので、予定を変更してお金稼ぎでもしようか。


 そう思い、俺は中央の冒険者ギルドへと足を進める。


「こんばんは」


 受付の男性と挨拶を交わし、依頼を見せてもらう。


 その中から、すぐに終わりそうな依頼を二つ選んだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 [依頼]:カンカン大砂漠におけるアイアンアリジゴク十頭の討伐


  〇発注者:カンディア・アマジー


  〇報酬:20000タメル


  〇詳細:『オアシス』騎士団防衛隊隊長のカンディアだよ!元気に砂漠で冒険者してるかい!?


      今日もお前らにとっておきの依頼があるよ!


      砂漠の掃除屋、アイアンアリジゴクが少しばかり数を増やしてきていてね!


      これ以上増えると行商にも影響が出かねないから、今すぐ討伐を頼むよ!


      大砂漠の中だったらどこでもいいからね!


      討伐証明はいらないよ!それじゃ頼んだからね!

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 [依頼]:カンカン大砂漠におけるデザートシャーク十頭の討伐


  〇発注者:カンディア・アマジー


  〇報酬:20000タメル


  〇詳細:『オアシス』騎士団防衛隊隊長のカンディアだよ!元気に砂漠で冒険者してるかい!?


      今日もお前らにとっておきの依頼があるよ!


      砂漠のハイエナともいえるデザートシャークが少しばかり数を増やしてきていてね!


      これ以上増えると行商にも影響が出かねないから、今すぐ討伐を頼むよ!


      大砂漠の中だったらどこでもいいからね!


      討伐証明はいらないよ!それじゃ頼んだからね!

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 こちらの世界でもコピー&ペーストが便利なんだな。防衛隊長も忙しいだろうから目をつぶろう。


 さて、多分こいつらはオアシスを目指していたときに出会った魔物だろう。


 休憩中に砂の中から現れたやつと、数を減らしたら日和って逃げたやつ。


 どちらも一筋縄ではいかないが、工夫すれば倒せるだろう。


 さて、あとは北側には行ったことがないので、北部に行ってみよう。


 砂漠北部も砂しかないのだろうか。大砂漠っていうくらいだし、そうだよな。


 なんて考えていると、『オアシス』の北門に到着した。


 門番の人にチェックしてもらって、いざカンカン大砂漠の北部へ!


 まずはアイアンアリジゴクから狩ろう。


 俺は『オアシス』から十分離れたところまで走ると、ぱたりと足を止めた。


 ついでに雪豹の杖に持ち替えておく。


 やつは砂漠の掃除屋らしい。足を止めた獲物に食らいつく生態があると見た。


 さらさらさらさら……。


 来る。


 俺は転がってよけると、元居たところに向かって魔法を唱える。


「『アイス・フリーズ』」


 カチンッ!


 砂から突き出した鋼鉄の鋏がカチコチに凍る。


 『アイス・フリーズ』。以前は生鮮食品を凍らせるのに使っていたが、実は近くの相手を凍らせることもできる便利な魔法だ。


「水属性の杖に持ち替えて、と。『アクア・ランス』」


 そして俺は、鋏の下の地面に向かって水の槍を放つ。


 鋏同様本体も堅そうだが、至近距離からのランスには耐えられなかったみたいだ。


 『アクア・ランス』をまともに食らったアイアンアリジゴクはその身をアイテムに変えた。


〇アイテム:アイアンアリジゴクの鋏

 砂漠地帯に生息するアイアンアリジゴクの鋏。大ぶりで、金属成分を含むので鍛冶に用いられる。 


〇アイテム:アイアンアリジゴクの甲殻

 砂漠地帯に生息するアイアンアリジゴクの甲殻。小さいが、硬さは十分だ。


〇アイテム:アイアンアリジゴクの脚

 砂漠地帯に生息するアイアンアリジゴクの脚。針金のような柔軟性と硬さを持っている。


 アイアンアリジゴクからは三種類のアイテムが取れた。見たところ、鍛冶や細工に使えそうな素材だな。


 とりあえず、アリジゴクはこの戦法で倒せそうだ。残り九体。油断せずに狩っていこう。


 そんなこんなでアリジゴクを狩り続けること、数十分。


 ついに砂色の背びれたちが現れた。


 今度は六つ。そこそこ大きい群れのようだ。


 デザートシャークは『アクア・ソード』でカウンターすればいい。わりかし楽な相手だ。しかし、賢いのか残り頭数が少なくなると逃げに徹してしまう。


 あえて倒さないで全体を均等に弱らせる、という戦法もありか?いや、なしだな。それならそれで逃げられそうな気がする。


 そんなことを考えているうちに、群れは目前まで迫ってきた。


 一頭目が元気よく跳ねてこちらに向かってくる。


「『アクア・ソード』!」


 一刀の下に付す。やっぱり一頭一頭は強くないな。


 振り抜いた硬直を狙って二頭目、三頭目がやってくる。


「ぐっ」


 一頭は避け、一頭は左腕で受ける。


 食らいついている一頭をソードで卸し、残り四頭。


 四方からタイミングをずらして、全頭が襲いかかってくる。


 くっ。ソードのカウンターが警戒されている。


 なら、集中して全頭狩るだけだ。


 一番手は正面の一頭目。


 顔面を狙ってくる噛みつき攻撃を、口内に刺す突き攻撃で応戦する。


 見事撃破。お次は……。


 真後ろからやってくる一頭。前に体重が移動している今の体勢を狙って、俺の左足の踵に噛みつかんとする。


「はっ!」


 それを、前に転がってよける。カウンターは体勢的に無理だ。


 体勢が崩れたところに、左右の二頭が噛みついてくる。


 引きつけて引きつけて、上手く位置関係を調節する。


 そして、二頭が砂中から飛び出したところを見計らって……。


 今だ。


「『アクア・ウェーブ』!」


 大きな波が二頭を押し流す。カウンターがクリーンヒットし、大ダメージを与えて二頭を倒す。


 まずい。このままだと真後ろにいた一頭が逃げる。


 視線を奥に向けると案の定、背びれを翻して逃げるところだった。


「させるか。『アクア・アロー』」


 逃げる背びれに水の矢が貫通する。大きく跳ねてシャークが砂から出てくる。


 これでトドメだ。


「『アクア・アロー』」


 鋭い水の矢がシャークの胴に命中。無事六頭を討伐することに成功した。


〇アイテム:デザートシャークの歯

 砂漠地帯に生息するデザートシャークの歯。ヤスリのようにギザギザとしている。


〇アイテム:デザートシャークの皮

 砂漠地帯に生息するデザートシャークの皮。ぶにょぶにょとして伸縮性に優れる。


〇アイテム:デザートシャークの背びれ

 砂漠地帯に生息するデザートシャークの背びれ。意外とおいしい、かも?


 以前と変わらない入手アイテムだった。デザートシャークはこの三種類しか手に入らないのだろうか。


 まあいいや。残り四頭を狩ろう。


 こんな感じでアリジゴクとシャークを狩り、無事依頼を達成するのだった。



 ※※※



 『オアシス』の冒険者ギルドに戻ってきて依頼の達成報告をし、所持金が85000タメルになった。


 時刻は二十二時半。いい時間だな。今日はここいらでログアウトしよう。


 俺はメニューからログアウトし、現実世界へと帰還する。


「ふう、今日も疲れたな」


 明日は夜から航海が始まる。一体どんな旅になるんだろうな。


 俺は期待と不安を胸に抱えたまま、寝室の明かりを消すのだった。

2022/03/01 所持タメルについて不備があったので記述を変更しました。

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