無題6
言葉は刹那。言葉は生きている。
外に出したとたんに死んでいく。まるでサンゴみたい。
あるいは箱詰めの猫。
ぼくの言葉はぼく以外の言葉になっていく。
生きるとは言葉を吐き出し続けることだ。
僕はぼくに向かって、自分を証明し続ける。
お風呂は言葉でいっぱい。
古くて色がなくなった言葉が、お湯と一緒に流れる。
部屋の中には言葉がいっぱい。
窓を開けると、ぴゅうと飛んでいく。
頭の中は言葉でいっぱい。
カメみたいにのろのろとただよう言葉もあれば、ひゅんひゅんと飛んでいて、見えない言葉もある。
心が指揮棒を振るけど、みんなお構いなしだ。
夜は言葉が冷たい剣になる。
剣は僕にどんどん突き刺さる。痛いけど血は出ない。だから「痛い」って言えない。
だけど、僕は知ってるよ。剣をおいしく食べる方法。
夜は言葉の舞踏会。
冷たい剣が踊りだせば優雅なロンドを紡ぎだす。