表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/83

007 僕、魔族領へ行く

 僕は、今とてもウキウキだ。なんせ人生で初めて龍ヶ峰と不戦の草原以外の場所にいるのだから。


 そう、僕達は今、魔の森と呼ばれる森に来ている。不戦の草原からはいつも見ていたけど、入ったのは初めてだ。アイルちゃんとアンサッスさんが現れた森でもある。


 僕と配下の3人、アイルちゃんとその配下、アンサッスさんとその配下の計8人は魔族領ダイン王国へと向かっていた。王女であるアイルちゃんが10年に1度の御前試合に出るためだ。


 そして僕は、それに便乗して魔族の国を観光しようとしている。第1の目的は2000年前にお父さんの友人であった魔王ガルム=ダインの魔剣ガルムを見ることだ。僕がお父さんからもらった神剣パールの兄弟剣だ。


「ダインくん、楽しそうだね」

「まぁね。ここすら初めてだからね」


 アインちゃんも楽しそうだ。3年ぶりの故郷だし、両親に会うのも3年ぶりだし、そりゃそうかな。


「そう言えば、ここからダイン王国の王都まではどれくらいかかるの?」

「そうだね、以前の私の足で魔の森を抜けるのに4日ほど。今なら1日あれば十分抜けれるかな。抜けた先に小さな村があって、その村から近くの領主街まで歩いても1日ほど。

 魔動車ならすぐだけど、今の私達ならそんなに変わらないかも。その街からは魔動列車が出てるから、それに乗って1日ってところかな。」


 うお〜、車に列車もあるんだ!? 生前も車に乗ったことなかったからめっちゃ楽しみだなぁ。


「龍ヶ峰から出たことがないのであれば、魔動車も魔動列車も初めてだよね?

 というか街や村も初めてか。全部初めだし、すごく楽しいと思うよ」

「それで、何でここは魔の森っていうの?」

「いや〜、龍ヶ峰に比べると全然だけど、ここも一般の人からすると凶悪な魔物がいるからね。といってもせいぜいランクBくらいだけど」

「でも、1体も出てこないね」

「そりゃ、ダイキくんだし。龍ヶ峰の魔物ですら近寄ってこないじゃん。魔の森の魔物なんて近寄ってくるわけないよ。いくら魔素の放出を抑えてても、魔物ってそういう本能は敏感だからさ。」

「へ〜、ちょっと残念だなぁ」


「あとさ、ダイン王国には魔剣ガルムがあるんだよね?」

「うん。王都の大神殿の祭壇に刺さってるよ」

「神殿に刺さってるの?」

「そう。王国は邪龍教っていう宗教が国教なの。

 始めたのが初代国王でもあるガルム様で、祀られてるのは邪龍パール様。

 魔剣ガルムはパール様から贈られたと伝わってるから、他の宗教でいう聖遺物的な感じなのかな。王国最重要の国宝だよ」

「そこまですごいことになってるなんて。というか、お父さんが祀られてるの?」

「そう、だから私達にとっては神様みたいなもの何だよ」

「じゃあ、その神様と暮らしてたんだね」

「そうだよ!? 毎日緊張とかいうレベルじゃなかったからね! ねぇ、アンサッス様?」

「そうですね。まさか自分が信仰する神にお会いするどころか、共に暮らしたなど、誰に言っても信じてもらえないでしょうね」


 お父さんはやっぱり、すごいな。まさか神だったとは。だからあの幼女の神様、アウム様と知り合いだったのかな?


「アウム様っていう神様は知ってる?」

「うん、主に人族が信仰している神様だね。この世界の創造神と言われているよ」


 あの神様はやっぱりすごいんだな。


「その神様の教会はないのかな?」

「うーん、どうかな? 王国はとにかくダイン様が凄過ぎたせいか、邪龍教しか聞かないんだよね。邪龍教内に派閥はいくつかあるんだけどね」

「そうなんだ。それで派閥っていうのはどんなのがあるの? 」

「そのまま邪龍パール様を信仰する正道派と、パール様よりガルム様を信仰する国祖派、魔剣を信仰する魔剣派、龍ヶ峰を信仰する峰派が主かな。でも、どの派閥にとっても王都の大聖堂が聖地だけどね」

「へぇ〜色々あるんだね。ちなみにアイルちゃんとアンサッスさんはどの派閥なの?」

「私もアンサッス様も国祖派だよ」

「何で国祖派なの?」

「ダイン様は魔法に優れた魔王様であったと言われていて、私やアンサッス様の様な魔法使いに多い派閥かな」

「へぇ〜、じゃあ他の派閥はどんな感じなの?」

「正道派は最大の派閥で、一般人に広く浸透していて、熱心な信者が多い印象かな。

魔剣派は騎士団とかの剣を扱う人に多い感じ。

 峰派は王都の大聖堂に行けなかった地方の人に多いかな。龍ヶ峰は王国のどこからでも見えるから信仰しやすかったのかも。

 今は魔動列車もあるし、割と誰でも大聖堂に行けるんだけどね」


 なるほどね。生前は全く信仰心はなかったし、そんなに宗教に詳しくないけど、キリスト教も仏教もいろんな宗派があったし、2000年もあれば色々分かれるのかもね。


 そんなことを話していると、すぐに森を抜けた。

 すると、すぐに村が見えてきた。村というから、いわゆるファンタジーに出てくるような小さく、せいぜい柵で囲われているようなものかと思っていたけど、ちゃんと立派な塀で囲われていた。


「お〜、すごいね! アイルちゃん!」

「ふふ、この村で驚いていたら王都に行くまで保たないよ」


 ただ、なんか物々しい雰囲気だ。

 塀の上にも下にも兵隊さんがぎっしりいる。


「アイルちゃん、いつもこんなに兵隊さんがいるの?」

「いや、いないよ。魔の森に面しているから多少の兵は常駐しているけど、あんなにいる のは何かおかしいよ」


 僕たちは何かあったのだろうかと訝しみながらも、門の列に並んだ。

 並んでいる間も、アイルちゃんは普段はこんなに時間がかからない。普段よりも相当厳重になっていると言っていた。

 そして、しばらくして順番が来た。


「はい、次。通行証出して」

「8人で旅をしているのですが、代表して私のもので構いませんか?」

「ああ、構わないよ。お嬢ちゃん」

「では、これを」

「えーと、アイル=ダルムね。って、えっ!? ほ、本物? お嬢ちゃん、もし偽物なら王族を語るのは大罪だよ」

「では、これでどうでしょう」


 そう言って、アイルちゃんはいつも付けているペンダントを服の中から取り出した。

 周りの兵隊さんも一斉に騒ぎ始めた。


「こ、これは!? 王族のみが携帯を許されているペンダント!? 魔力を通してもらえるだろうか?」

「わかりました」


 アイルちゃんがペンダントに魔力を通すとペンダントの紋章が光出した。


「ほ、本物! た、た、た、大変失礼致しました!!! まだ生きておいでだったのですね。アイル王女殿下」

「大丈夫ですよ。それより通ってもいいですか?」


「申し訳ありませんが、少し別室でお待ちいただけますでしょうか。魔王様より、もし王女殿下を見つけたら、まずは保護した上で至急連絡をと王令が出ておりまして」


「そうですか、ダイキくん、少し待ってもらってもいい」

「別にいいよ。急ぐ旅でもないしね」

「では、私達は別室で待たせてもらいますね」


「ありがとうございます!!!」


 僕達を別室に案内した後、門番さんは部屋の中の僕達に聞こえるほど大きな声で、『至急王城に連絡しろ! 大至急だ! アイル王女殿下が生きておられた!』と慌ただしく言いながら走って行った。


 しばらくして、若い兵隊さん? がお茶を持って来た。緊張しているのかカップがカタカタ言っていた。なんとかこぼさずに全員分置くとそそくさと出て行った。

 お茶は、すごく美味しかった。あまりお茶の味がわかる訳ではないけど、王女様に出すんだからそれは良い物だったんだと思う。


 そうやって、まったりしていると、


 !!!


 何者かが高速でこっちに向かって来ている。


「主様」

「わかってるよ。念のため警戒して」


 そして、その何者かは門の中の別室の天井を突き破ってきた。

 誰かわかんないけど、ぱっと見で魔力量が多い。


「貴様か〜! 私の娘の攫ったゴミは〜!」

「えっ、お父様?」


 僕は、魔族領に入って早々に、魔王様に因縁を付けられたらしい。

 というか、魔王様って病に臥せってるんじゃなかったの? 超元気じゃんこのおっさん!? しかも普通に強いぞ。


 なんか面倒な事になったなぁと思いつつ、魔王といきなり手合わせ出来ることに少しだけワクワクしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼新作の短編書きました。こちらもお願いいたします!!!▼
【世界最大の敵の元魔王、現在はウエイター見習い 〜人間の領地を侵攻中の魔王が偶然出会った町娘に一目惚れした結果、魔王軍を解体してそのまま婿入りしちゃった話〜】

ご愛読の皆様いつもありがとうございます。
この小説がいいなと思っていただけたら
是非一票をお願いいたします!

↓ 一票入れる ↓
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[良い点] 続きが気になるくらいおもしろい!! [一言] 更新はよ!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ