064 おい、聖の勇者に苦戦する
「あ〜、なんじゃ!? 将軍の旦那2人はもう終わったんかい」
おいは聖の勇者っちゅう女とやりおうとるんじゃが、あの旧魔王のおっさんズはもう勇者を倒したんか。
流石は大魔将軍様、副魔将軍様じゃ。
おいも負けとれんわな。
「何を余所見している」
聖の勇者が聖剣でおいに斬りかかってきおった。
「うおっと!?」
おいは体をひねって聖剣の一撃を躱す。
アウム神教国に伝わる2本の聖剣のうち1つをこないな戦いに持ち出すないうがじゃ。くそったれ。
しかももう1本は伝説の勇者リューンが持っとんのじゃろ。やっとれんわ。
おいは内心で愚痴りながら火魔法を放つ。
「ほい」
おいはその火魔法で牽制し、一旦距離を取った。
「ほお、今度は火魔法か。器用だな」
聖の勇者は、聖剣の切っ先を後ろに向け、右脇腹から右太もものあたりに構えた。いわゆる脇構えっちゅうやつか。
「私は聖魔法と剣術しか使えないからな。少々羨ましいよ」
「何を言うとんがじゃ。それでこんだけ強い方がどうかしとるいうがじゃ」
ふっ、と一瞬口元を緩めた直後、一気においに向かってきた。
「またかい」
こいつの話が本当なら、身体能力のみで、このミサイルみたいな突進力生み出しとるっちゅうんか。化物やないか。
そいで突っ込んできたこいつは脇に構えた聖剣をそのまま左斜めに切り上げる。
なんとか見切れる!
じゃけども、さっきからこいつは聖剣に聖魔法を纏わせ斬撃と共に聖魔法を飛ばしてきおる。
じゃから後ろじゃなく横に避けなあかん。
「どっせい」
おいはなんとか手で弾きつつ体をひねって躱した。
「お〜、痛え。弾いただけで手がもげそうじゃ」
「普通は触っただけで手なんて亡くなるんだがね。けど、油断するなよ」
聖の勇者は切り上げた聖剣を今度は振り下ろしてきた。
「おいしゃあ!!!」
おいは両手から風魔法を放ち、それを推進力にして体を動かし、無理やり聖の勇者と距離を取る。
「ふふふ、おもしろい。お前はいくつの属性を操るんだ?」
「そんなもん、教えるわけないいじゃろが」
「まあいい、もっと私を楽しませろ! ドラゴニュートというだけでもおもしろいが、ドサ、お前はそれ以上だ」
「くそ、戦闘狂が!!!」
「お前は魔王の糞野郎と違って、転移からの爆弾なんていう卑怯なまねをするなよ」
「そんなもん知るか! 勝ったもんが正義じゃ!」
くそ、どんどん攻めてきおる。攻撃は最大の防御っちゅうのはこいつのためにあるような言葉じゃな。
魔族を除けば、対人戦世界最強っちゅうのは嘘やないっちゅうわけか。
「ふふふ、楽しいな。なあ、ドサ」
「なんも楽しないわ。ドアホ」
おいは少し距離が出来た隙に第八位階雷魔法を準備する。
「今度はどうじゃ!!!」
空からドギツイ雷が聖の勇者に落ちる。
その瞬間、そいつは動きを止めた。
「またじゃ」
けたたましい音と激しい光が場を支配した。
じゃが、雷を受けても無傷の聖の勇者は、首を鳴らしながらゆっくりとこちらに歩いてきた。
「無駄だよ。ドサ。
この第十位階聖魔法<神の加護>は動きを止めている間の攻撃を全て無効化する」
「くっそ、この卑怯もんが!!!」
「さっきお前が言っていたじゃないか。勝ったものが正義なんだろ?
そもそも、自分の力を最大限に駆使して戦うことの何が卑怯なんだい? 卑怯と言うのは自分は城に引きこもったまま、爆弾なんぞで不意打ちしてくる魔王のことだ。そうだろ、ドサ?」
おいは額に青筋が入る。
「おまい、さっきからなんなんじゃ。魔王様に出し抜かれたんが、そがいムカついたがか。
対人戦世界最強も高が知れるのお」
「そんな安い挑発には乗らないよ。あの時は自分よりエルフの姫を守ることを優先したせいで負傷したけど、2度はない」
こいつはマジで強いのお。まともにやって勝ち目が見えん。まあ、負ける気もせんが。
しっかし、こいつはまだ固有スキルを使っとらん。そいでこない強いんは勘弁してほしいわ。
「じゃあなんじゃ、魔王様に出し抜かれても守ってくれんおまいらの神様が大したことないいうことか?」
「なんだと貴様! 今、アウム様を侮辱したのか!!!」
挑発の方向を変えてみたらえらい反応がええのお。
そがいアウム様っちゅうがが大事なんか。ほな、もうちょいおちょくって見よか。
「アウム様じゃあ? なんぞしょうもない神様なんじゃな。笑かしてくれるわ」
「貴様〜!!! アウム様をそこまで扱き下ろすか」
「事実じゃろうが。アウム様がおまいらに何してくれたんじゃあ? 爆弾で軍を壊滅してもろたんもアウム様のおかげなんちゃうか」
「巫山戯るな!!! 貴様、もはや生かしておかんぞ」
「いやいや、初めから生かしとくつもりは無かったじゃろが」
聖の勇者は騎士が宣誓なんぞやる時のように聖剣を自分の前に持ってきた。
「固有スキル発動」
聖の勇者の雰囲気がいちだんと険しくなりおった。
「うお、いよいよかいな」
どんなもんかはわからんが、こっからが本番っちゅうわけか。
ほんまキッツいわ。
亜人隊の隊長も楽じゃないわ。
「でも、ここで逃げられんのが辛いとこじゃ。活躍して魔王様にお褒めいただきたいとは思っとったが、おいの初戦、厳しすぎんか?」
おいはまた愚痴りつつ、気を引き締めた。
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