063 我、水の勇者を拘束す
我は大剣を地面から引き抜き切っ先を天に向けて頭の上に構えた。
「第十位階風魔法<地獄の竜巻>」
我の周りにあった暴風の結界が天高く、渦を巻いて立ち上がった。
そしてそれは大きさを増し、直径2mだった暴風の結界が直径20mを超える竜巻に変わった。
天高く立ち昇る竜巻は我を囲んでいた水球を全て吹き飛ばした。
我は水球を吹き飛ばしたのを確認すると、竜巻を大剣の周囲に纏わせる状態に戻した。
水の勇者の姿は見えない。
「逃げたか?」
周りを見渡しても、水の勇者は見当たらない。
しかし、周囲を探るとそれらしい反応をそこらじゅうから感じる。
しばらくすると小さい水球が現れた。
それは空気中の散った水分を吸収するようにして、どんどん大きさを増していった。
それが、元通り直径2mほどになった時、その中には水の勇者がいた。
「あれを受けて生きているとは」
「はぁ、はぁ」
水の勇者は息も絶え絶えといった様相だ。
しかし、水が空気中に残ってしまうと倒しきれないわけか。
我はダイキ様に頼み室長に作ってもらった特性の手投げ剣を6振り亜空間収納から取り出す。
それらを投げ、水球の周りを取り囲むように地面に刺した。
「第九位階火魔法<猛炎の檻>」
先程の手投げ剣は我が苦手な火魔法を補助し、第六位階までしか使えない火魔法を第九位階にまで引き上げる宝具だ。
水球はどんどん蒸発していく。
水球はあっという間に姿を消した。
そこで我は<猛炎の檻>を解いた。
しかし、水の勇者の存在は消えていない。
「やはりか」
しばらくすると、靄が集まってきた。
それは次第に球体を形作り、直径10mを超える球体の靄になる。
それが徐々に小さくなっていくと、再び元の直径2mの水球に戻った。
「……、無駄だ。水蒸気になっても私は死なない」
「だろうな」
我は手投げ剣を同様に水球の周りに刺した。
「第九位階闇魔法<暗黒の拘束>」
各手投げ剣の影が鎖となり、水球に絡みつく。
「これで逃げることは出来んぞ」
そして我は追加で2本水球に突き刺した。
その2振りの柄の先からは紐が伸び、それは亜空間から取り出した50cm角の装置に繋がっている。
加えてこの2振りはある仕掛けが施してある。
「まさか、お前!!!」
水の勇者は気付いたようだ。
我は装置を起動した。
「貴様〜!!!」
水の勇者が慌て出す。
が、我はそれをただ見つめる。
2振りの剣からはぶくぶくと泡が出る。
そして、水球がみるみるうちに小さくなっていく。
これは何度見ても不思議だ。
この装置はダイキ様の元の世界にあったという電池というものを巨大化させたものだそうだ。
そして、水球に刺した2振りの剣の刀身には水酸化ナトリウムというものが仕込んである。
我にはよく分からんが、ダイキ様が言うには、水酸化ナトリウムを溶かした水に電池から電流というものを流すと、水が分解され、水素と酸素に変化するという。
水の勇者もダイキ様と同じ世界の出身のようだから、途中で気づいたのだろう。
水球がどんどんと小さくなり、
遂に維持出来なくなったのか、水球が弾け、水の勇者本体が現れる。
水球に絡みついていた<暗黒の拘束>はそのまま水の勇者を拘束した。
「勝負ありだ」
水の勇者は<暗黒の拘束>から逃れようとジタバタしているが、それは無理だ。
一度拘束してしまえば、ダイキ様ですら簡単には逃げられない。
これはアイル様が証明済みだ。
アイル様は<暗黒の拘束>で執務室から逃げようとするダイキ様を何度も捕まえているらしい。
「我も早く宝具無しで風魔法以外を使えるようにならねばな」
ここでセリュジュが近ずいてきた。
「終わったか」
「ああ。セリュジュ、お前もか」
「お前より早いわ」
我はセリュジュが戦っていたであろう火の勇者を見た。
見事に胴体が真っ二つになっている。
「だが、胴体ぶった斬ったらいかんだろう」
「やっぱりか? ならとっとと魔王城に持って行くか」
「ならついでにこいつも持っていってくれ」
「ええ〜、まぁいいか。じゃあしばらく戦場を預けるぞ」
「任せろ」
「3執事の方々は放って置いていいが、他は念のため注意しておけ」
「わかっている。ただ、心配はいらんだろうがな」
「だろうがな。じゃあ、行ってくるとする」
セリュジュは火の勇者と水の勇者を連れて魔王城に転移した。
我はゆっくりと観戦するとしようか。
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