060 吾、バイコーンと共に戦場を駆る
「一人一殺! 皆アイル様に続け〜!」
「「「「「はっ!!!!!」」」」」
吾は飛び出したアイル様に続いて敵陣に向かいながら叫んだ。
「セリュジュよ、我らの力を見せる時だな」
「ああ、ダリオ。存分に見せつけようでは無いか」
吾と同じく旧魔王であり、大魔将軍と共に軍をまとめている副魔将軍が声を掛けて来た。
ダリオも吾と同じく燃えているようだ。
吾も、ダリオもこの戦いに掛ける思いは強い。
2人共、元は力で魔王の座にいたのだ。力を信奉する魔族にとって力は絶対的正義だった。
魔王の時には、今は亡きもう1人の旧魔王であるジョルジュを含め、3人が拮抗した力であり、3国はバランスが取られていた。
しかし、魔界統一がなされると、吾とダリオより強い者がわらわらと現れた。
その筆頭はもちろん、現魔王のダイキ様だ。
ダイキ様は圧倒的な力をお持ちだ。吾もダリオもすぐに主と認め忠誠を誓った。
何より、ダイキ様の元ならますます強くなれることが容易に想像できた。
さらに、ダイキ様直属の3執事。彼らもまた化物だった。ダイキ様に破れたSランク魔物だというが、普段から人化していて、到底魔物とは思えん。その上、魔物の身体能力に加え、ダイキ様仕込みの魔法を駆使する。
彼らもまた遥か高みにいた。
いつからか、3執事のコウ様は吾、シュン様はダリオの師になっていた。
そこまではいい。規格外の4人だ。
だが、元はセリュジュの娘であるアイル様、元は国の役職に付いていなかった魔術士のアンサッスすらも吾とダリオの上にいた。さらにアイル様とアンサッスの配下の魔物、エメラとノワールもまた吾らを超える実力者だった。
悔しいという思いは当然あった。だがそれ以上に、こいつらはダイキ様の元で強くなることの証左だ。吾らはますます燃えた。
吾らはあっという間に過去の自分を置き去りにした。
そして龍ヶ峰奪還ではその力を見せようと張り切ったのだが、吾らに出番はなかった。
ダイキ様は吾らの力は隠すと仰られた。
言わんとすることはわかる。わかるが、出番がまったく無いというのは歯痒いものだった。
それからの2年は平和だった。
だが、吾らは研鑽を惜しまず、部下も徹底的に鍛えた。
もう2度とヒト族なんぞに好きにはさせん。
ただ、その間にダイキ様が開発されたものは面白いものが多かった。
吾は、龍ヶ峰で捉えたバイコーンと共に競魔に出場し、トップ選手として活躍した。
しかしそこでも3執事のシュン様、サン様の壁は高く、中々勝てなかった。
が、先日ようやく勝ったのだ。この日ばかりは祝杯をあげずにはいられなかった。
このような平和が続けばと思ったものだ。
が、そうはいかなかった。
そして、今、吾らは戦場で邪竜様を討った、怨敵と対峙している。
燃えずにはいられるか!
吾はダリオと拳を合わせた。
「セリュジュ、武運を祈る」
「は、そんなもん祈られるまでも無い。蹴散らして当然じゃ」
「ふ、そうだな。では。副魔将軍、ダリオ・サムラン、参る!!!」
ダリオは勇者の1人に向かって行った。
それを見届けると、吾は走りながら、相棒のバイコーンを召喚した。
現れたバイコーンは通常の馬の倍はありそうな体躯に、隆々の四肢、銀にたなびく鬣、闘志を隠そうとしない両の眼、そして美しくも逞しく聳える2本の角を備える。
吾はすぐさまバイコーンに跨ると、叫んだ。
「行け! シルバー! 敵は眼前の勇者だ。はっ!!!」
吾は、伝説の勇者リューンの固有スキルを解析し、同じ技を使えるようにする大剣を片手で持ち、勇者に迫った。
この大剣は何かのトラブルでまだ、固有スキルをインストールできていないものの、大剣自体が比類なき名剣だ。
吾はシルバーを駆り、勇者を通り過ぎざまに大剣を一薙ぎした。
ガキーン!!!
甲高い金属音が鳴る。
吾はシルバーの向きを変え、勇者と向いあった。
「やるでは無いか。この一撃で終わらせるつもりであったのだがな」
「こちとら、これでも勇者を張ってるもんでね。そうは簡単に死ね無いんだよ!」
「一端の強者だったか。では礼を欠いては申し訳ない。
吾はダイン魔族連合王国が大魔将軍、セリュジュ・ガーネットだ。
小僧、名を名乗れ」
「へっ、武人だねぇ。俺はアウム神教国の火の勇者、ホムラ・ジングウジだ!」
「ホムラ・ジングウジ。覚えておこう」
「どうも、ありがとよ! だが、その必要はねぇ! あんたはここで死ぬんだからな!」
吾とホムラ・ジングウジの戦いがこうして始まった。
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