057 僕、次の手を打つ
2日前。
僕はアイルちゃんと大魔将軍、副魔将軍の旧魔王2人の元を後にするとアンサッスさんの元へ向かった。
「アンサッスさん、お待たせ」
「いえ、とんでも御座いません」
アンサッスさんは片膝をついた。
いつも2人の時はそんな畏まらないでって言ってるんだけどね。
「楽にしてよ」
「は」
僕は席に着いた。
ここは執務室の隣にある近衛隊の待機室。隠し部屋のため、近衛隊と僕しか存在を知らない。
そう、アンサッスさんは普段はここにいて、密かに僕の事を見守っているのだ。
「今度の戦争だけど、万が一を想定してアンサッスさんにも動いてもらいたいんだ」
「は」
「一応、魔素安定石の結界で無力化を図ろうとは思っているんだけど、それもうまくいかない場合を想定しないと行けないよね」
「仰る通りかと」
「もし勇者リューンの固有スキルがその結界内でも使えたとすると、あっさり、結界は破られると思う。その固有スキルについてはアイルちゃんと旧魔王の2人に策を渡してあるんだけどね」
「では、私には別の事をお頼みになられるのですか」
「そうだね。結界が破られたとすると、シー姉も自由になるよね。その時に、シー姉が<絶対なる大海の一噛>っていう大魔法を使ってくるかもしれない」
「……大魔法、ですか。それはどういったものなのでしょうか?」
「一言で言えば、とんでもない大津波を発生させるって感じかな」
「大津波。広域殲滅魔法という事でしょうか?」
「そうだね。なんせ高さ100m、幅は数kmに及ぶ大津波だからね」
「っ!!! 何と!?」
アンサッスさんは魔族内でもトップクラスの魔術士だ。何なら場合によっては3執事より強いまである。
そんなアンサッスさんでもシー姉の大魔法には驚きが隠せないようだ。
「しかもさ、一粒一粒が第八位階並なんだよね」
「っ!!!」
アンサッスさんの目はこれ以上は大きくなりようがないだろうと言うほど大きくなった。
「それで、問題はさ。アイルちゃん達は何とか凌いでもらうとしてもさ、そのまま王都まで到達しちゃうと思うんだよね」
「っ!!!」
アンサッスさんは一瞬、大きくなった目をピクっと動かすと、目を細めキリっとした表情になった。
「とは言えね、シー姉の大魔法は分解すれば第八位階の集まりなんだよ。全体で見れば第十位階の枠にも収まらないけどね」
「つまり、ダイキ様は王都の結界ならば防げるとお考えなのですか?」
「ある程度は、かな。王都の結界は第八位階以下の魔法は完全に防ぎきるように設計されてる。でも毎秒何万もの第八位階魔法を浴びる事は流石に想定していないよね。普通に考えたら第十位階魔法の結界ですら耐えられないからね」
「では、どういたしますか?」
「でもね、数秒は耐えられると思うんだよね。だからさ、数秒耐えてもらって、少しでも威力が弱まった所で、アンサッスさんには第十位階聖魔法で結界を張って欲しいんだ。それなら防ぎきれる。せっかく作った王都を破壊されてたまるか」
「なるほど」
「よろしくね」
「は」
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『キヒヒヒ、これを防ぎおるか。お主の言う通り楽しめそうじゃの』
『シーさん、だから言っただろ。パールの息子が魔王の国だ。絶対に面白いってな』
僕は安堵したと同時にシー姉に変えられた不毛の大地を思うと深い溜息が出てしまった。
2人は滅茶苦茶楽しそうだ。
あの2人はそのまま暴れるだけで国が壊滅しちゃう。
もうしょうがない。
僕は指をパチンと鳴らした。
「王手!」
「シュン次は勝つよ!」
「おう!」
僕は3執事を強制召喚した。
「「「あれ?」」」
僕はポカンとする3人に向かってニッコリと笑った。
すると3人は顔を青くして片膝を付いた。
「お願いがあるんだけど、いいかな」
「「「は」」」
戦時だというのに趣味に走ってた負い目があるのか素直だね。
「3人はすぐに転移して勇者リューンとシー姉の相手をしてきて欲しい」
「「「っ!!!」」」
「あの2人とまがりなりにも渡り合えるのは君達しかいないからさ」
「「「畏まりました」」」
「あの2人にさ、こう伝えて。『これ以上国を壊すようなら僕は出て行かない。加えて3執事以外には攻撃しない。その上で3執事で満足出来ない様ならば僕が相手してやろう』ってね」
「「「は」」」
3人はすぐに勇者リューンとシー姉の元に転移した。
ふう。手は打ったけど、結局、僕が出なきゃいけなくなりそうだよね。
はぁ。嫌だな〜。
僕はまた溜息を付いた。
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