表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/83

006 私、訓練を受ける

 私、アイル=ダルムは現魔王の娘として生まれた。そのため、早くから頭角を現し、神童と呼ばれていました。

 しかし、それを面白く思わない者からは七光りと蔑まれました。


 だからこそ、努力を重ね、実力で周りの声を黙らせて来たのです。周りの者より圧倒的に努力をして来たと思っていました。


 思っていましたが、そんな努力は遊びに過ぎませんでした。そう思い知ったのはダイキくんの訓練が始まって早々のことです。



 はじめの半年は、ひたすら魔力操作の訓練を行いました。


 ダイキくんが私の身体に凄まじい負荷をかけ、ちょっとでも気を抜くとあっという間に昏倒してしまう。

 気絶したら、無理やり起こされ、魔力が尽きるまで延々と続く。魔力が切れて、やっと終わったと思って気絶すると、無理やり魔力を回復させられ、続けさせられました。


 半年たった頃には、一度も気絶も魔力を枯渇することもなく1日の訓練を終えることが出来るようになっていました。



 次の半年は、放出魔法、強化魔法、付与魔法、作用魔法、空間魔法を学びました。


 1日の始まりは放出魔法を魔力が尽きるまで撃ち続けることから始まリます。

 魔力が尽きると無理やり回復させられ、次は強化魔法を魔力が尽きるまで、次は付与魔法、次は作用魔法、最後は空間魔法。そこまで終わるのに日を跨ぐ直前までかかりました。


 しかも、恐ろしいのは、慣れれば慣れるほど魔力量も上がり、魔力効率も上がるため、魔力が尽きにくくなることです。

 それでも、魔力が尽きるまで終わらない。だから、毎日毎日、全力で魔法を使い続け、気絶し続けました。


 ただ、これは非常に楽しかった。私がマゾヒストという訳ではないですけど。

 そもそも、魔族の魔法に放出魔法、強化魔法、付与魔法、作用魔法、空間魔法というカテゴリー分けの概念が存在しません。おそらくヒト族など他の種族、魔法が得意とされるエルフ族も同様でしょう。


 通常は火、水、風、土、雷の5大属性という分け方であり、2属性以上を使える者は国にも数えるほどしかいません。

 また、それとは別に特異3属性として聖、闇、空間がありますが、これらは使える者はほとんどいません。


 しかし、ダイキくんはその全てを圧倒的な強さで使うことが出来ました。

 そもそも考え方が違っていたのです。この革命とも言える考え方は、魔法に覚えがある者なら誰しもが凄まじい興奮を覚えることでしょう。


 半年たった頃には、どの魔法もおそらくは魔族一と言えるほどになっていました(一緒に訓練しているアンサッス様は除く)。



 そして、アンサッス様とバラバラに山の北側と南側の麓に放り出され、山を登ってSランクの魔物を従えて頂上に戻って来いと言われました。


 この時ばかりは、ダイキくんの頭はマジでおかしいんじゃないかと思わざるをえませんでした。


 そもそもこの龍ヶ峰は大魔境と呼ばれており、麓の草原にすら誰も近寄らない。それくらい危険な魔物がうじゃうじゃしているのです。


 その上Sランクを従えろ? Sランクを単独で倒すということはそれだけでも歴史上数百年は現れていないと言われるSSランク相当が必要なのに、従えろ? マジ頭おかしい。


 だいたい、ダイン王国にSランクはお父様と叔父様とアンサッス様しかいないというのに。


 ただ、聞くところによるとダイキくんは10歳の時に1人で山の全てを屈服させたとか。

 今ダイキくんに従っている3人の執事服のお兄さん達はその時のSランクの魔物だとか。もう滅茶苦茶です。


 しかもダイキくんは普段、溢れ出る自分の魔素を空間魔法で山のそこら中にばらまいているらしいです。

 だから直接対峙しても魔力量のすごさが伝わらない。


 ただ、そのおかげで山の魔物のレベルが全体的に上がっているらしく、その上『都合よくSランクも2体発生してたからラッキーだね』だと。巫山戯んな!


 でも、やらないとSランクの魔物よりよっぽど怖いダイキくんの鉄拳制裁が飛んでくるから、私は泣きながら頑張りました。


 1年後、私はようやくSランクのキングサーペントを従えることが出来たのです。



 次は、その従えた魔物を3執事と同じくらい手懐けろと言われました。一応、人語は理解できるみたいですけど、まともに喋れないし、人化もできるけど原人みたいでした。

 これを3執事にしろと? むしろそう出来たダイキくんがおかしい!


 泣く泣く頑張りました。ちょっとでも私が弱味を見せるとすぐに舐められるから、今まで以上に自分の鍛錬も行いました。


 1年経って、ようやくダイキくんから合格をもらうことが出来ました。


 このキングサーペントはメスだったので、執事服ではなくメイド服にさせたら、なぜかダイキくんがすごく喜んでいました。なぜでしょう?


 私はこの子にエメラと名付けました。ちなみにアンサッス様はダークペガサスを従えて、ノワールと名付けていました。

 

 この時、ちょうど3年が経過していました。


「2人ともよく頑張ったね。2人ともSSランクは間違いないし、御前試合は楽勝でしょ」


 ダイキくんはめっちゃいい笑顔です。

 私とアンサッス様は顔を見合わせて引き攣った笑顔を浮かべています。

 私とアンサッス様は20歳以上離れていますが、ともに地獄の3年を過ごしたことで、そこには友情が芽生えていました。


「じゃあ、最後に特別授業をするからしっかり見ているように」


 ダイキくんはそう言って、お父上である邪竜パール様を呼んできました。


「今から僕とお父さんが戦うからしっかり見てるんだよ。多分これ以上にすごい戦いは滅多に見れないからね」

「っ!!!!!」


 私はダイキくんとパール様が戦う姿を想像しただけで、全身が粟立ち、滝のように冷や汗を流していました。


 見ると、3執事の皆さんすら額に汗が浮かんでいる。


「亜空間結界。取り合えずその中にいれば安心だから」


 そう言ってダイキくんはパール様のお顔の高さまで浮かび上がったのです。


「さあ、お父さん。やろうか。そろそろ龍ヶ峰最強の座を譲ってもらうよ」

「ははは。言うようになったな、ダイキよ。わしはこの座を譲る気など毛頭ない。

 座りたければ、引き摺り下ろして見せろ!」


 その瞬間、パール様の抑えていた魔力が溢れ出しました。

 ダイキくんに張ってもらった結界がなければそれだけで気を失っていたかもしれません。


「……、やってやるさ!」


 そして、ダイキくんも抑えていた魔力は放ちました。本当にパール様と同じくらいの圧力を感じます。


 そこからは神話の世界の戦いでした。


 ダイキくんはいきなり第十位階火魔法を放ちます。大気が震え、結界越しにも焼ける様な熱さが伝わって来ます。

 それをパール様はフッと吐いた息でかき消したのです!

 第十位階火魔法ですよ! 伝説の第十位階魔法を吐息でかき消すんですか!?


「流石、これくらいじゃダメか」

「ダイキよ、ただの十位階魔法ではわしを傷付けることは出来んぞ」


 ダイキくんはギラっと目を輝かせ、第十位階雷魔法を放ちました。晴れていた空はあっという間に雷雲で覆われ、雷雲から幾筋もの高出力の雷がパール様を襲います。


 しかし、全てがパール様の鱗に弾かれました。

 何と言う対魔法強度でしょうか。


 気付くとダイキ様がいません。ここで、再び雷がパール様を襲います。


 すると、初めてパール様が雷を避けました。


 「ダイキ、やるではないか」


 この時、ドシーンという音を立て、何かが大地に落ちました。

 何と、パール様の鱗でした!!!


 「へへ、とりあえずは一矢報いたかな」


 姿を表したダイキくんの体は雷で覆われています。

 先程の攻撃は、おそらくダイキくんは自らも雷の1筋と化すことで雷の群れに紛れて攻撃を仕掛けたということだと思います。


 私は既に自分のキャパをオーバーしています。

 不戦の草原は既に見る影もありません。



 そして、2人はこのまま丸3日戦い続けました。



 そして引き分けに終わったのです。

 どうやら最初から3日と決めていたようです。


 最早、草原は地獄のようになっています。


 結界で守られている部分以外の全てが溶岩と化し、2人の圧倒的魔力により、Sランクの魔物でも近づかないだろうと言うほどに魔力濃度が高くなっています。


「やっぱり、環境に気を使ってちゃ、お父さんは倒せないや」

「ふん。手加減して座れるほど安い座ではないわ」


 あれだけの戦いをしながら、お互いに手加減していたと言うのです。どんだけなの? これがSSSランクなの。

 しかも2人とも「いやー、良い汗かいた」的なノリなんだけど?

 地上は天変地異どころじゃないって言うのに。


「みんな、ちゃんと見てた? 流石の僕もお父さんと戦いながら他に気を配ることは出来ないからさ」

「見てはいたよ。でも、次元が違い過ぎて何が何やらわからなかったよ」

「ちゃんと最後まで見ていられただけでも成長したってことじゃない? 最初はお父さんを見ただけで気絶してたもんね」

「それは言わないでよ」

「ははは」


 こうして最後に特別授業も終えた私達は、ダイキくんからご褒美として伝説級の杖をもらいました。


 これは、泣いてしまうほど嬉しかったです。地獄の3年間だったけど、ダイキくんに認めてもらえたと思うと感極まってしまいました。

 アンサッス様も涙を流していました。


 聞くと、3執事の皆さんはそれぞれ剣をもらったらしいです。


 そしてこの1週間後、私達は龍ヶ峰を下りました。

 ダイキくんは龍ヶ峰を下りたところで振り返りると、龍ヶ峰に一礼しました。


 ダイキくんは決意を新たにしたのか、目をキラキラさせて言いました。


「今度の人生は自由に生きる!!! これから僕の自由な異世界生活が始まるんだ」


 楽しそうなダイキくんを見て、私も胸が高鳴ったのです。


 そして、私とアンサッス様の母国、魔族領ダイン王国へと向かいました。

「おもしろかった!」、「続きが気になる!」という方は、


下の☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて行ってください。

おもしろくなかったという方は、★☆☆☆☆でお願いします。


ブックマークや感想もお待ちしています。


非常に励みになりますので、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼新作の短編書きました。こちらもお願いいたします!!!▼
【世界最大の敵の元魔王、現在はウエイター見習い 〜人間の領地を侵攻中の魔王が偶然出会った町娘に一目惚れした結果、魔王軍を解体してそのまま婿入りしちゃった話〜】

ご愛読の皆様いつもありがとうございます。
この小説がいいなと思っていただけたら
是非一票をお願いいたします!

↓ 一票入れる ↓
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[気になる点] RT企画ご参加ありがとうございます。 ここまで読んだことをお知らせします。 1話の入りが良いですね。病弱だから空想に耽る主人公が、空想で思い描いた異世界へ行く。しっくりくる始まり方で…
[一言] ツイッターにリプを送っていただいてありがとうございます。 6話ということだったので6話を読ませていただきました。 なろう系の作品は普段読まないので、的外れな意見を書いてしまうことがあるかも…
[良い点] 展開が早く、すぐに読めるところが良い。 [気になる点] 展開の早さゆえなのか、一つ一つのシーンに物足りなさを感じる。 修行の回想。龍との戦闘シーンなど、もう少し詳しく書いてみても良いかも…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ