049 僕、競馬的なのを作る
「アイルちゃん、魔族領にギャンブルってある?」
「ギャンブル、ですか。酒場などでの賭け事はあるでしょうが、それくらいではないでしょうか」
「そうなんだ」
思い返せば、日本ってギャンブルに溢れてたよね。そこら中にパチンコ屋さんがあったし、公営ギャンブルも競馬、競艇、競輪、あとはオートなんかもあった。しかもテレビで普通にCMしてたしね。何なら宝クジもギャンブルだしね。カジノも出来るとか出来ないとかいう話もあったし。
僕はどれもやったことないんだけど。
生前読んだ異世界ものの小説でも、転生後にギャンブル場を作るのは結構あった。やっぱり儲かるんだろうか。
といっても、現状で財政的には十分だし、特別作る必要はないかも。市民の娯楽として作ると言う視点なら有り何だろうか?
「アイルちゃん、公営でギャンブル場を作るっていうのは有り?」
「そうですね。ヒト族の国の中には公営ギャンブル場を持っている国もあると聞きますが」
「そうなの? どんなのがあるの?」
「乗馬により順位を競うものですね。競馬と呼ばれているようです」
「そっか、競馬はあるんだね」
「特に反対はしませんが、のめり込んで破産する者が出ないか心配です」
「それはそうだね。何か対策しないと」
という事で、しっかりと税金を納めている者しか入場出来ないことにした。つまり、ある程度は余裕がある人に限ることにし、そんな人でもギャンブルに使い込んで税金が払えないほどになると、翌年からは入場出来なくなるわけだ。
これなら、破産する人は抑えられるかな。それでも破産する人は破産しそうだけど。
あとはギャンブルの内容か。やっぱ競馬かな。この世界にもあるみたいだし。アイルちゃんに相談しよう。
「競馬は取っ付きやすいと思いますが、魔族には馬より速い者が大勢いるのでいまいち盛り上がりにかけるかと」
「なるほど! じゃあどうしようか。何に乗るかは任せる?」
「そうですね、ただ、大きさは制限すべきかと」
「そっか、コースに収まんなくなっちゃうしね」
「あと、転移魔法は禁止にすべきですね」
「そうだね。それは反則だよね。でも、妨害しない限りは他の魔法はオッケーにしよう」
「そうですね。強化魔法や風魔法などは有用です」
「じゃあ、レースに出る人を募集しよっか」
結果、めっちゃ集まった。1000近くの募集があった。
「とりあえず、18頭立てでやってみよっか。徐々に、強さでグループ分けしていこう」
僕は温泉地を作ってくれたゼネコンにコースと競技場を発注し、1月後、記念すべき初レースが開催された。
馬の代わりに魔物に乗るから、競魔という名前にしてみた。
はい、めっちゃ盛り上がりました。
僕も魔券を買ってみたけど、当たんないもんだね。
騎手の実力も馬の代わりの魔物の実力も何となくわかるから楽勝かと思ったけど、レースとなるとそれだけで勝負はつかないみたい。人馬一体って言葉もあるしね。この場合は人魔一体かな。いや、魔族と魔物だから魔魔一体? まあいいや。
競魔を始めてしばらく経ったある日、久しぶりにイェスタくんがやって来た。
「よおダイキ」
「お、イェスタくん。久しぶりだね。どうしたの?」
「お前がやってる競魔だっけか。あれ、俺も出させろよ」
「えっ?」
どうやら獣人族にまで広まっているらしい。
「けど、イェスタくん、何か乗れる魔物持ってるの?」
「もちろんだ。驚くなよ。サンダーウルフだ」
「おお! 凄い!」
サンダーウルフはフェンリルを除いた狼系最強と言われる魔物だ。もちろんSランク。サンダーの名に恥じず、滅茶苦茶速いらしい。うちのシュンが虎系最強のストームタイガーだけど、よく比較されるみたい。
そんなのに乗るとか流石はイェスタくん。でも、それだけで勝てるほど競魔は甘くないぜ。なんせ今の勝率上位陣はみんなAランクかSランクだからね。
Sランクに乗れる人なんて魔族でもそんなにいないはずはんだけどね。ようは、今は平和だからか、大魔将軍も参戦してるって話なんだよね。まあいいんだけどね。
「じゃあ、誰か案内してあげて。……あ、今日も誰もいないや。最近じゃサンもあんまりいないんだよね。まあいっか、僕が競魔場に案内するよ」
「おう」
イェスタくんは早速翌日のレースに出た。単勝の倍率が1.1倍。まあそうだようね。
もちろん圧倒的に勝利した。
「どうだダイキ。楽勝だったぜ」
「ふふ、やるね。でもまだまだ弱いレースだからね。年末には収率上位18組で魔王杯を開催するからね。そこで優勝したら手放しで褒めてあげるよ」
「へ〜、まあ俺の優勝は間違いないけどな。ところでお前は出ないのか?」
「僕は主催者だしね。単純に楽しみにしてるよ。最近は前情報も見ないようにしてるしね。だから、魔王杯の当日になって出走表にイェスタくんの名前が無いとかならないようにしてね」
「当たり前だろ。楽しみにしとけよ」
こうして年末になり、今日は魔王杯の当日だ。
僕は出走表を見ている。
8枠 サンダーウルフ イェスタ 2.1倍 1番人気
やはりイェスタくんは凄かったみたい。
ただ、僕は1つ気になる組みがあった。
15枠 ストームタイガー 謎のジョッキーS 2.9倍 2番人気
ストームタイガーってシュン以外にもいたんだ。てか、謎のジョッキーSて。
人気はこの2組に集中しているみたい。
僕はイェスタくんを頭にして、2着を謎のジョッキーS、3着はパドックで見て強うそうな3組を選んだ。
ファンファーレが鳴る。遂に今日のメインレース、魔王杯が始まる。
会場は大歓声だ。
アナウンスも絶好調だ。
『早く見たいという期待に満ち溢れる競魔場の大歓声です。解説の大魔総統アイル様にイェスタ様についてお伺いします』
『イェスタ様については敬意を表さざるを得ません。私はまったく心配は無いと思います。コース取りも良いレース運びが出来る様にもなっていますし、一瞬の加速力も素晴らしいです。あとはスタートですね』
『なるほど、順に皆枠に収まっていきます。2番人気の謎のジョッキーSも枠に収まりました。この組みも全時点で無敗を誇っています。
最後の1組も今枠に収まりました』
いよいよだ。
『さあ役者が揃いました。グランプリオブグランプリ第1回魔王杯スタートを切りました!
ちょっとバラついたスタート!
謎のジョッキーSは後ろからになりました!
まずは各魔最初の2つのコーナーです! 先頭争いはどうか!
ここはバイコーンに駆る大魔将軍セリュジュ・ガーネット様が行くのか!
イェスタ様は良い形で中段にいます!』
お、セリュジュさんは逃げなんだね。
『おーっと、入りの20kmが何と25秒だ! 各魔当然の様に音速を超えております!
かなり、セリュジュ様が思いきった逃げとなっています!
いまだイェスタ様は中段だ、ここで外から謎のジョッキーS!
各魔3コーナーにかかります!
まだ逃げているセリュジュ様!』
イェスタくんは最後の直線で仕掛けるつもりかな?
『さあ残り6km! じわりじわりとイェスタ様がポジションをあげてまいります!
間も無く残り4km!
最後の直線に入ります!
ここでイェスタ様が先頭に立つ!
おーっと外からは謎のジョッキーS〜!!!』
イェスタくん! 行け! 差せ! 謎のジョッキーS、邪魔すんなよ!
『謎のジョッキーS、イェスタ様を捉えるか!? 捉えた! 並んだ!
イェスタ様か!? 謎のジョッキーSか!?
抜けた! 突き抜けた! 強かった! 謎のジョッキーS〜!!!』
あ〜!!! イェスタく〜ん!!! 僕、結構賭けたんだけど〜!!!
『初の魔王杯は謎のジョッキーSの頭上に輝いた〜!!!
これが結末でした。謎のジョッキーSでした。イェスタ様、敗れました』
僕はみんなと一緒に魔券を放り投げた。
何はともあれ初の魔王杯は大盛り上がりだった。
この後の表彰式は僕が謎のジョッキーSにメダルを掛けたんだけど、
「主様、やりました!!!」
「えっ!? サン!?」
謎のジョッキーSってサンかよ! じゃあ、あのストームタイガーはシュン!?
それはずるくない? まあ違反じゃないんだけどさ。
つか、サンまで最近いないと思ったらこういうことだったの?
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翌日執務室ではイェスタくんがまだ悔しそうだ。
「クッソ〜、悔しい! てか、お前らズルイだろ! 3執事が2人で出るとかよ〜」
「いいえ、イェスタ様、あくまでもルールの範囲内です。それを言うならイェスタ様も十分反則です」
「うっ……」
まあ、そうだよね。イェスタくんは反論出来ないみたいだ。
「俺が自分で走ったら絶対負けないのに……」
イェスタくんがボソっととんでもないことを呟いた。
そりゃそうだろうけど、絶対やらないでね。
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