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026 僕、ヒト族とエルフ族に宣戦布告する

 「コウ、シュン、サン!!! そこのも含めて6人の精神支配を解け!!!

 その後、ダインの王城の庭で待機しろ!!! 僕は行く!!!」

 「「「は!!!」」」


 お父さんに助太刀とかむしろ怒られそうだけど、反射的に飛び出してしまった。

 それに、なんか嫌な予感がする。


 僕は転移でお父さんがいる、龍ヶ峰の頂上へ飛んだ。



 バキーン!!!!!


 「痛ってえええええ!!!」


 転移したけど、何かにぶつかったような衝撃を受けた。


 「何だ、これ!?」


 龍ヶ峰全体が強力な結界に覆われたいた。


 「クッソ!!!」


 僕は結界を殴ってみたけど、ビクともしない。

 第十位階魔法でも通らなそうだ。


 とにかく落ち着け!


 「ふ〜、ふぅ〜」


 とりあえず、深呼吸した。


 少し落ち着いた。結界が張られているから、この中にお父さんがいるのは間違いないはず。


 お父さんは無事なのか? いや、お父さんの強さを1番わかっているのは僕だ。お父さんがやられるわけはない。僕は自分にそう言い聞かせた。

 でも、嫌な予感はその思いに反比例するように高まっていた。


 僕は、龍ヶ峰を探知した。


 「くそっ!!!」


 結界の中はジャミングされているようでうまく探知出来ない。

 この時、結界の境界に多数の反応を見つけた。どうやら、麓にわらわらと魔術士がいるみたいだ。そいつらは龍ヶ峰をぐるっと囲んでいる。


 「こいつらが結界を張ってるのか。大規模な集団術式だな。全員倒せば解除されるかもだけど、多分この結界のキーになってる奴は結界の中っぽいんだよな。最悪全員倒しても解除出来ないかも。しかも結構時間がかかるな」


 とにかく結界の中の探知を行うことにした。


 「ぐっ!!!」


 無理やり探知を続けているから、頭が割れるように痛い。

 でも、僕は探知を続けるしかなかった。


 「見つけた!!!」


 ようやく薄っすらとだけど、頂上を探知出来た。お父さんはそれなりに強うそうな奴7人に囲まれているみたいだ。

 そして、お父さんは結界のせいかひどく弱々しく感じた。


 「お父さん!!!」


 その瞬間、僕は第十位階魔法を結界に向かって放っていた。


 「なんでだよ!!!」


 僕の最大火力の第十位階火魔法でも、ヒビひとつ入らなかった。


 「なら!!!」


 僕は王証環ソロモンを腕につけ、神剣パールを抜いた。魔力も全開を超えるほど放出し、全力で神剣を振るった。


 しかし、ほんの僅かにヒビが入っただけだった。それもすぐに修復されてしまった。

 僕はこの時、獣王国出発の時以上の悔しさで泣きそうになった。


 「僕は今まで何をいい気になってたんだ!!!

 こんな時にお父さんの元にいけないほど弱いくせに!!!!!」


 僕は、絶望感で呆然としてしまっていた。

 その時、探知魔法を使っているわけではなかったにも関わらず、結界の中から今まで感じことないほど強力な魔力を感じた。


 「なにが起こってるんだよ!!!」


 急いでまた探知をすると、お父さんはさらに弱々しくなり、代わりにとんでもなく強い奴が増えていた。

 今のお父さんよりは明らかに強い。ひょっとしたら全力のお父さんよりも。


 「お父さーん!!!!!」


 僕は無我夢中で神剣パールを振るった。


 しかし、結果は変わらなかった。


 「ダメだ」


 また、弱気になりそうになったけど、僕はそんな気持ちを無理やり振り払った。


 「ダメなら、ここで僕は僕を超えるしかない!!!」


 僕は冷静になって考えた。僕の強みは何だ?

 膨大な魔力を持っていることか?、違う!!!

 全ての属性の第十位階魔法が使えることか?、違う!!!

 神剣パールを持っていることか?、違う!!!

 何だ? 僕の強みは何だ?


 僕はふと、初めてお父さんから魔法を教わった時のことを思い出していた。


 『基本は全て使えるな。ダイキは特にどの魔法を伸ばしたい?』

 『僕は空間魔法がいい! お父さんみたいに転移が出来るようになりたい!』


 そうだ!!!

 空間魔法だ!!!


 僕は他の何よりも空間魔法を磨いてきた。空間魔法の使い手としてはおそらく世界最高だと思う。

 でも、空間魔法自体で攻撃を行うことを今まで考えたことはなかった。

 結界魔法も空間魔法の応用だ。これを打ち破るのも空間魔法なら。


 「……例えば、無理やり亜空間をぶつけたりしたら」


 僕は魔力を練って手の中に亜空間を展開した。


 でもこれをぶつけてもダメだ。ぶつかった瞬間にそこに亜空間を展開して無理やり結界に穴を開けるようなことが出来ないと。


 試行錯誤したけど、出来ない。

 どうしても攻撃として成立しない。


 「あっ」


 僕が攻撃するんじゃなく、攻撃はパールに任せて、その斬撃の瞬間に亜空間を展開したらどうだろうか。

 僕は早速試した。


 ガキーン!!!


 今まででは1番ヒビが入った。


 「でも、まだうまく攻撃になってない」


 亜空間が結局、結界を破壊する前に霧散してしまう。


 「はじめからパールに攻撃としての亜空間を纏うことが出来ないとダメだ」


 でも、パールに亜空間ただ纏わせても、結界に当たった瞬間に亜空間が消えてしまう。


 「パールと亜空間だけでダメなら、もうひとつ別の亜空間を混ぜる!」


 これは、マジで難しい!!!

 亜空間を2つ同時に展開すること自体が初めてだ。


 「うわぁあああああああ!!!!」


 僕は強引に2つの亜空間を展開して結界に切りかかった。


 「はぁ、はぁ、ダメか。

 なら、3つだぁー!!!」


 バリン!!!!!


 初めてヒビじゃなくて亀裂が入った。


 「4つ!!!!」


 ついに、一瞬だけど僕が通れるくらいの断裂を作った。

 でも、これも一瞬で直ってしまう。


 「ごふっ!!!」


 無理をしすぎたのか、僕は大量の血を吐いた。

 治癒魔法で無理やり直して、もう1回と振りかぶった時、今までよりさらに強力な魔力を感じ、僕は思わず山頂を見た。


 バリーン!!!!!


 そして、内側から飛んできた凄まじい斬撃が結界を破壊した。


 僕はその斬撃を見えなくなるまで目で追っていた。

 1秒にも満たない時間だったと思うけど、僕には凄まじく長く感じられた。


 「……、すごい」


 正確にはわからなかったけど、5つの亜空間がグルグルと回っているように見えた。


 「そうか!!!」


 全力を超えろ!!! と力を振り絞り、5つの亜空間をパールのまわりに展開し、それをゆっくりと回転させた。


 「む、難しい。ごふっ。」


 少しでも気を抜くとダメだ。今の状態だと霧散するだけじゃなくて、亜空間が消える時に周辺も一緒に消滅させてしまいそうだ。


 「少しずつ!」


 僕は、徐々に回転を加速させた。口の中は血の味しかしない。


 「ああああああああああ!!!!!」


 僕は何度も血を吐きながら、少しずつ回転を加速させた。亜空間の操作に集中するため、治癒魔法も使わず。


 そして、

 僕は、これを完成させた。


 「で、出来た。これなら。はぁ、ごふっ。

 あ、お父さん!!!」


 まだ、生きてる!!! でも、瀕死だ。


 僕はお父さんの元に転移した。



 転移したと同時に、さっきの結界を破壊した斬撃が飛んできた。


 ガキーン!!!


 「ザ・ブレイクが防がれただと!」


 危なっ!!! これが完成してなかったら、僕もお父さんも死んでたぞ。 

 しかも、なんか神剣がめっちゃ光ってる!?


 それよりお父さんを連れて逃げないと!!!


 「お父さん、文句は後で聞く!!! とりあえず逃げるよ!!!」


 僕はお父さんを連れて、ダインの王城の庭に転移した。

 そこにいたあの斬撃を飛ばした化物といくつか言葉を交わした気がするけど、正直あんまり覚えていない。


 「こ、ここは?」

 「お父さん、喋らないで!!! お前ら全力でお父さんを治せ!!!」

 「「「は!!!」」」


 お父さんの魔力が急速に弱まっていく。

 僕も全力で治癒魔法をかけた。


 「お父さん、意識をしっかり持って!!!」

 「お館様!!!」

 「お館様!!!」

 「お館様!!!」


 ダメだ。どんどん魔力が弱くなっている。


 「お前ら!!! 絶対に死なせるな!!!」

 「「「はっ!!!」」」

 「た、頼むから。お父さんを死なせないでくれー!!!」


 僕の叫びがダインの夜に響いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 僕は次の日、憔悴しきっていた。

 体に力が入らない。


 コンコン。

 返事をする気力もない。

 そっと、扉が開き、アイルちゃんが入ってきた。


 「魔王様、」


 そして、僕はアイルちゃんに全世界に向けて、お父さんの死を発表させた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 この1週間後、ヴィルヘルム総督をはじめとする獣王国の面々と、7人の王をはじめとするドルゴーン連邦の面がダインの王城に集まっていた。アイルちゃん達は僕が、憔悴している間も3国間の同盟について進めてくれていた。


 この日は同盟の調印式だった。この状況であるため、獣王国もドルゴーンもうちに来てくれていた。


 僕は、お父さんの葬儀については行わないことに決めた。

 だから、本来は調印式なんてやってる場合じゃないけど、ヒト族、エルフ族と対抗する為にも、同盟の締結を急ぐことにしていた。

 魔族がヒト族とエルフ族と対立したことが明らかになったため、ドルゴーンは同盟におよび腰になっていたけど、アイルちゃんに絶対に成立させろと命じてあった。


 調印式ではまず、ドルゴーン連邦の謝罪から始まった。そういえば、そんなこともあったな。


 具体的な内容はアイルちゃんに丸投げしていた僕は、アイルちゃんに言われるがまま、調印し、ガガリオン獣王国とドルゴーン連邦と同盟を結んだ。


 後の歴史書、教科書にすら載ることになる魔獣ドワーフ3国同盟はこうして締結された。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 調印式の次の日、僕はダイン魔族連合王国の幹部を全員集めた。


 この日の僕は憔悴していた時を乗り越えて、力を漲らせていた。魔力を抑えることもせず、目は怒りで燃えていた。


 そして、皆に向かって強く宣言した。


 「聞いているだろうが、ヒト族とエルフ族は我らが神に手をかけた。僕は、これを許すつもりはない!!!」


 ダンっ!!!!!


 全員が右拳で机を叩くことにより、強い同意を示した。

 ここにいる全員が僕と同じ目の色をしている。


 「我がダイン魔族連合王国は、ヒト族とエルフ族に対して宣戦を布告する!!!」


 ダンっ!!!!!


 「まずは、我らの聖域である龍ヶ峰を奪還する!!!」


 ダンっ!!!!!


 「皆、魔族の誇りを示せ!!!!!」


 「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」


 この日、全世界にとって、本当の意味で魔王が誕生した。

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【世界最大の敵の元魔王、現在はウエイター見習い 〜人間の領地を侵攻中の魔王が偶然出会った町娘に一目惚れした結果、魔王軍を解体してそのまま婿入りしちゃった話〜】

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