表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/83

021 僕、獣王の息子と喧嘩する

『ヴィルヘルム総督、ダイキ魔王、ガガリオン獣王国、ダイン魔族連合王国の皆、ドルゴーン連邦の大王バザル・ドルゴーである。急な連絡にも関わらず、応じてくれたこと感謝する』


 僕達はガガリオン獣王国との2国間会談の最中に急遽、ドワーフ族のドルゴーン連邦の大王バザル・ドルゴーが加わって、3国間会談になっていた。


「まったく、バザル大王はいつも突然だな」

『グハハハハ。そう言ってくれるな。ヴィルヘルム総督よ』


 2人はどうやら旧知の仲らしい。


『ダイキ魔王、改めて急な要請を聞いてくれたこと感謝する』

「いえ、初めましてバザル大王。画面越しではありますが、お会い出来て光栄です」

『こちらこそ光栄だ。魔族の救世主よ』


 このハザル大王は2国間会談中に入って来たことといい、救世主という呼び名を知っていることといい、情報網が凄いらしい。


『してお2人、獣王国と魔族連合王国はどうやら同盟を結ぶということらしいが相違ないか?』


 いきなり核心をついて来た。


「バザル大王、相変わらずだな」

『グハハハハ。バザル大王、わしを仲間外れとは寂しいではないか』

「飲み会ではあるまいし。つまりは、貴国も同盟に加わりたいということか?」

『左様。我がドルゴーン連邦も同盟に加えてもらいたい』


 ざわざわ。


 会談場が一気にざわついた。


『今現在、周知の通り、我がドルゴーン連邦とガガリオン獣王国は同盟状態にある。

 我らは工業分野に長け、ガガリオンは農業分野に長ける。それをお互いに補っている訳ではあるが、我らもガガリオンも魔法分野には疎い。

 そのため、ガガリオンはダイン魔族連合王国と同盟を結ぼうとしておるのだろう?

 ダインについても農業分野の協力が欲しかったはずだ。

 そこに我らの工業分野も加わるのはどうだ? 魅力的ではないか?

 ガガリオンも我らとダインで協力して出来た技術の恩恵を受け、我らにとっては逆も然り。

 我らとガガリオオン、ダインの3国が協力すれば、単に1+1+1ではない相乗効果が望めると考える。双方いかがか?』


「「「「「っ!!!!!」」」」」


 確かに。これはすごくいい提案だと思う。

 そっとアイルちゃんを見ると頷いてくれた。つまり、GOってことだ。

 次にヴィルヘルム総督を見ると、総督も頷いた。それに僕も頷き返した。


「バザル大王、まったく、強かではないか。しかし、この提案は確かに3国にとって非常に利があるように思う。

 我がガガリオン獣王国はこの提案を受けよう」

「僕達、ダイン魔族連合王国も受けます」

『ありがたい。両国の英断に感謝する』


「では、詳細の調整についてはダイン魔族連合王国の面々と共に我らもドルゴーン連邦に向かい、3国で行うのはどうだ?

 ダインの面々もドルゴーン連邦に行ったこともないのではなかなか難しい部分もあるだろう」

「では、それと同時に両国から僕達ダイン魔族連合王国に使者を送ってはどうですか?

 そうすれば3国ともお互いを見ることが出来ますし」


「それはありがたい。なぁ、大王?」

『そうだな。ありがたい提案だ』

「調印はどうします?」

「流石に3国のトップが集まる必要があるな」


『ダイキ魔王とヴィルヘルム総督にもドルゴーン連邦に来ていただき、詳細がつまり次第そこで調印といのはいかがか?』

「なるほど、それならばわしはしばらく国内の調整をした後にドルゴーンに向かおう」

「僕はドルゴーン連邦も見てみたいですし、それで構いません」


 こうして、魔獣ドワーフ3国同盟の土台が整ったのだった。


 この後、僕とヴィルヘルム総督が中継される予定だったけど、重大な事案が発生したとして中止された。

 これが両国の間で様々な憶測を呼んだが、大きな混乱は起きなかった。


 僕はあてがわれた部屋に戻るとぐったりしていた。


「はぁ〜疲れた〜。展開が急すぎるよ。でもこれでドワーフの国にも行けるし、結果オーライだよね」


 僕は、いろんな調整はアイルちゃんに丸投げして、部屋でゆっくりすることにした。

 明日は、イェスタくんも来るし、今日は早めに寝よう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 次の日は朝早く起きて、部屋で朝ごはんを食べると、食べ終わるのを見計らったようにイェスタくんがやって来た。


「おはよう。イェスタくん早いね」

「おう」


 コンコン。


「どうぞ」


 アイルちゃんが入ってきた。


「!!!

 これは、イェスタ様!」

「あ、ガルスタンで会ったよな」

「はい。その節は失礼いたしました」


「それで、アイルちゃん。これからイェスタくんと不戦の草原に行って来るね」

「えっ、これからですか?」

「うん。そのために今日は予定を開けてもらってたからね」


「おい、ダイキ。不戦の草原?」

「そう、これから行くよ」

「???」


「魔王様、私も付いて行ってよろしいでしょうか?」

「ん? 別にいいけど、大丈夫なの?」

「はい。私もそのつもりで昨日中にあらかた必要な事は終わらせてありますので」


「じゃあ行こっか。3人とアイルちゃんは自分で来れるよね?お父さんと戦った時に結界張ったとこに集合しよっか」

「「「「は」」」」

「じゃあ、イェスタくん手を」

「???

 こうか?」

「じゃあ行くよ」


 こうして僕達は不戦の草原に飛んだ。


「えっ!? え!?

 はぁ〜〜〜〜!!!!!」


 イェスタくんがめっちゃ驚いている。


「おい、ダイキ! どうなってんだよ!?」

「転移したんだけど?」

「いやいや、転移の時点で超レアじゃねぇか!?

 しかも、距離がありえねぇだろ?」

「あ、来た。ほら、4人も出来るよ」

「マジか」


 3執事とアイルちゃんも何事もなく転移して来た。これはイェスタくんからしてもすごい事らしい。

 空間魔法が得意なサンは当然として、コウとシュン、アイルちゃんまで当然のように長距離転移が出来るようになっているのはうれしいね。


「ダイキ、お前のとこはめちゃくちゃだな。お前は当然化物だけど、この4人も十分化物じゃねぇか。お前ら5人だけで大陸を掌握出来るんじゃねぇか?」

「いや〜、褒めてもらえるのはうれしいけど、そんな物騒な事しないよ。僕は、楽しく自由に過ごせればそれでいいからね」

「へっ、力のあるやつが言うと違って聞こえるけどな。

 まぁいいか。それで、オレをここに連れて来て、何をやらせるんだ?」

「まずは、イェスタくんと喧嘩しようかと思ってね」

「ほう」


 イェスタくんから魔力が放出された。ヴィルヘルム総督よりはるかに凶悪だ。


「いいね。まずはイェスタくんの力を把握させてもらうよ。訓練はそれから」


 そう言って、僕も魔力を放出した。


「お前とやるのは楽しそうだ。行列に突っ込んで行ったのは正解だったよ」

「僕も楽しみだよ。

 サン。早速結界を張って。ここから半径1kmくらいでいいかな。残りのみんなもサンの補助をお願い」

「「「「はっ」」」」


 そして、半径1kmの球状の結界が張られた。


「ここから半径1kmの結界が張られたから、この中でやろう。際限なくやると環境が滅茶苦茶いんなっちゃうしね。

 というか、この草原をこんな溶岩地帯にしちゃったのって、僕がお父さんと戦ったからなんだよね。これ以上は不味いからさ」

「へぇ〜、お前も邪竜も大概だな。でも、これで心置きなくやれるわけだ」


 イェスタくんがさらに魔力を放出した。Aランク以下だとこの時点で意識を保てないと思う。Sランクでも下位だと怪しいかも。

 僕も、イェスタくんにあてられて、気が昂ぶっている。僕も全力に近いくらい魔力を放出した。


「じゃあ、お互い10mくらい離れよう。

 そしたら、コウ、コインを上に弾いて。それが地面についたらスタートって事で」

「いいぜ」


 そして、僕達は10m程離れた。


「主様、イェスタ様、よろしいですね」

「ああ」

「いいよ。あと、みんな。全力で見るんだよ」

「「「「は!!!」」」」


 コウがコインを弾いた。


 カン。


 コインが地面についた瞬間、イェスタくんが消えた。


 シュン!!!!!


 僕はスウェーでなんとか避けた。

 いきなり僕の右からイェスタくんの貫手が飛んで来た。避けた先の結界は早速ひびが入っている。


『おい、もっと強度を上げろ!』

『もう全力だって!』

『100%じゃなくて150%出せ!!!』


 それからも、見えない程のスピードで動くイェスタくんはいろんな方向から攻撃を放って来た。その度に結界は悲鳴をあげている。

 見えないほど速いけど存在は感じられるし、攻撃の瞬間は殺気みたいなのが出てるから、避けられてはいるけど、このままじゃ防戦一方だよね。


 僕は短距離転移を繰り返して撹乱することにした。

 次の攻撃が飛んでくる瞬間にイェスタくんの後ろに転移してパンチを出した。

 けど、流石にイェスタくんは簡単に避けてくれた。そして気付くと10m以上離れている。

 だから、さらに短距離転移してパンチ。避けられるとさらに短距離転移してパンチ。


 なんとか主導権を取り戻したかな。


 ここでイェスタくんはさらに距離を取った。


「ダイキやるな。そんなにポンポン飛ばれちゃ、オレの今のスピードじゃキツいな」

「イェスタくんこそ、短距離転移を乱発してやっと追いつけるスピードってとんでもないけどね」

「でも、このままじゃ埒が明かねぇ。

 奥の手、行かせてもらうぜ。

 獣人化!!!」


 この瞬間、イェスタくんの魔力はさらに爆発的に高まった。


 髪は逆立って、頭に狼みたいな耳がついて、爪は伸び、歯が牙になり、背中が銀色の体毛で覆われた。

 そう、イェスタくんはフェンリルの獣人に変化した。


「行くぞ!」


 イェスタくんは音も無く消えた。


 速い!


 僕は慌てて短距離転移をした。

 けど、避けきれなかったのか、頬から血が滴った。


 神剣パールに付与した強化と同じ様に自分を強化しているのに傷をつけるとかハンパな攻撃じゃない。

 その証拠に後ろでは結界に穴が空いている。


「……、やるね」


 今のイェスタくんは間違いなくSSSランクに昇華していた。


 この圧倒的スピードの前では魔法戦は無意味だ。まず当たらないし、打つ前に叩かれる。

 空間魔法を使って、剣の雨を振らせてたとしても、かすりもしないだろう。


「なら、僕もイェスタくんに敬意を表して、奥の手、行かせてもらうよ」


 そして僕は神剣パールを亜空間から抜いた。

 イェスタくんが警戒のレベルを引き上げたのが伝わって来た。


「ヤベェな。それ」

「実戦で使うのは初めてだから、イェスタくん、上手く避けてね。行くよ!」


 イェスタくんはすぐに高速移動で姿を消した。

 僕は探知を最大限に引き上げて、イェスタくんの動きを予測し、


 一閃。


 結界が真っ二つに斬れた。


 そして、イェスタくんの姿が100m程先に現れた。

 イェスタくんは避けきれなかったらしく、右肩から血を流していた。


「ダイキ、おもしれぇな、お前」

「避けてとは言ったけど、肩を掠めただけっていうのは、ちょっとショックだけどね。それよりも、そんなに距離を取ってよかったのかな?」


 僕は、この時点で第十位階火魔法の準備をほぼ終えていた。

 これだけ距離があれば打つ前に叩かれることはない。


「これは、避けれるかな?」

「ちっ!!!」

「第十位階火魔法、」

「「「「待ってください!!!!」」」」

「「!!」」


 僕とイェスタくんは揃って4人を見た。


「主様、イェスタ様、もう我らが限界です。これ以上は環境が壊れてしまいます」


 4人とも見るからに疲弊して、肩で息をしていた。


「「あっ」」


 戦いに夢中だったけど、もう結界が意味をなしてなかった。


「ごめ〜ん。ちょっと夢中になっちゃってた」

「わ、悪ぃな」

「イェスタくん。とりあえず今日はここまでにしよう。別に殺しあう訳でもないしね」

「そうだな」


 イェスタくんは獣人化を解いた。

 僕も神剣パールを仕舞った。


「ダイキ、お前はやっぱ化物だな」

「え〜、イェスタくんが言う〜?」

「「はっはっはっは」」


 僕は自然とイェスタくんと握手していた。


「こんなに暴れたのは初めてだ」

「僕もかも。お父さんとは魔法戦だったけど、神剣パール使ったの初めてだし」

「つか、何だよあの剣。反則だろ」

「やっぱり? お父さんの持ってた剣に僕が付与魔法で強化したら、とんでもないのが出来ちゃったんだよね」

「獣人化状態で傷つけられたのは初めてだ。親父にすら獣人化を覚えてからは傷つけられてねぇからな」

「僕もだよ。パールと同じ強化をかけてるのに、簡単に傷つけられたしね。僕もこの強化を覚えてからはお父さんからも傷を負ったことないし」


 僕達はまた笑いあった。


「改めて、よろしくな」

「こっちこそよろしく」


 こうして、初めて友達と喧嘩をして、より仲を深めた。

 4人がボロボロになっちゃったけど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼新作の短編書きました。こちらもお願いいたします!!!▼
【世界最大の敵の元魔王、現在はウエイター見習い 〜人間の領地を侵攻中の魔王が偶然出会った町娘に一目惚れした結果、魔王軍を解体してそのまま婿入りしちゃった話〜】

ご愛読の皆様いつもありがとうございます。
この小説がいいなと思っていただけたら
是非一票をお願いいたします!

↓ 一票入れる ↓
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ