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019 僕、獣王の息子と友達になる

「おい! ダイキっていうやつ! いるんだろ? 出てきて僕と勝負しろ!」


 僕は、獣王国に入国早々、誰か知らないやつに喧嘩を売られていた。しかも、ぱっと見で3執事より強いんじゃないか。どう見てもSSランク以上の強さだ。魔力というより、身に纏うオーラ? みたいなものがハンパじゃない。


「コウ、僕って出ていいのかな? 一応アイルちゃんには総督さんとの会談までは姿を見せないようにって言われてるんだけど」

「判断しかねます。とりあえずは様子見がよいかと」

「だよね〜」


 しかも、向こうの獅子獣人さんもどうしたものかと困ってるみたいだ。

 その時、アイルちゃんが欧米人くんに近づいて何か話しかけた。

 すると、


「絶対だぞ! 絶対に絶対だぞ! ダイキとかいうやつ絶対に逃げるんじゃないぞ!」


 そう言って欧米人くんはどっかに飛んで行った。


「なんだったんだ、あいつ?」


 なんかよくわからないけど、僕達はそのまま領主館に案内された。


「僕は、今日はパーティ出なくていいから気が楽でいいね」


 僕は3執事と一緒に最高級の客室だろう部屋でのんびりしていた。


 コンコン。


「どうぞ」

「失礼します」


 アイルちゃんが入ってきた。


「アイルちゃん? どうしたの? 忙しいんじゃないの?」

「魔王様は先ほどの少年が気になるかと思いまして」

「あっ、そうだよ! アイルちゃんなんか話してたよね?」

「はい。結論から言いますと、あの少年は獣王フェンリル様の御子です」

「「「「っ!!!!!」」」」


 マジか!? 本当の子供ってことはないだろうし、僕と同じ転生者かも。


「それで、何を話したの?」

「それなんですが、」


 ?

 なんか話しずらそうにしてるけど、


「え〜、実は、後日魔王様と戦う場を用意するのでここは引いて欲しいと」

「え〜!!!」

「申し訳ありません。あの少年がとてつもない力を持っていることはわかりましたので、あの場を収めるにはそれしか思いつきませんでした」

「えっ、うん。でも、どうしよう?」


「ここは不戦の草原で戦ってもらうしかないかと」

「いいの? これ以上不戦の草原でやると浄化がますます大変になっちゃうよ」

「では、サン様にもご協力いただき結界を張り、その範囲内で決着というのは?」

「まぁ、それしかないかな? サンも協力してもらえる?」

「わかりました。問題ないです」

「はぁ、まさかフーおじさんの子供と戦うことになるなんてびっくりだね。子供がいたこと自体びっくりだけど。はぁ」


 僕はまた溜息をついた。


「ん?」


 なんかアイルちゃんがポカンとしている。


「アイルちゃんどうしたの?」

「あの魔王様、フーおじさんというのは?」

「えっ? 四神獣のフェンリルのことだけど? あまり名前は知られてないの?」

「確かに私は獣王様の名前を存じ上げませんでしたが、魔王様が面識があるようにお話されたので」

「小さい頃に何度か会ったことあるんだよね。言ってなかったっけ?」

「!!!!!」


 アイルちゃんが滅茶苦茶驚いてる。そんなにかな?


「本当ですか? 獣人族ですら総督しかお会い出来ない存在と伺っていますが」

「そうなの? 小さい頃はたまにうちに遊びにきてたよ。毎回お父さんとベロベロになるまでお酒飲んでるだけだったけどね。そっか、そういえば来なくなったなとは思ってたんだけど、子供ができたからなのかな」


「やはり魔王様はとんでもないお方ですね。それで私の興味なのですが、他の四神獣の海龍様と天魚様にもお会いしたことがあるのでしょうか?」

「シー姉さんは2、3回会ったことあるかな。あっ、リヴァイアサンの方ね。ウルヴァースおじいちゃんは1番会ってるかな。最近も話したよ。」


「はぁ、もう驚きすぎて疲れてきました。天魚様と一体どこでお会いしているんですか?」

「ウルヴァースおじいちゃんはふらっと飛んでくるからね。雲よりももっと上だけど。だから普通には絶対気づけないけどね。でも僕は近くに来るとわかるからね。顔を付き合わしては滅多にないけど、上空のウルヴァースおじいちゃんとはちょくちょく話してるよ」

「ちなみにそんな距離でどうやってお話を?」


「なんか、念話っていうの? 近くに来ると頭の中に飛んで来るんだよね。それで僕は頭の中で会話する感じかな。外にいるときは手を振ったりくらいはするけどね」

「はぁ、四神獣様ともなると常識が通じませんね。天魚様がおじいちゃんということは、四神獣様の中でも最年長なのでしょうか?」


「なんていうか、四神獣には最早年齢の概念ってないんだよね。みんな何万年も生きてるらしいから。だからキャラっていうか、なんかウルヴァースおじいちゃんはおじいちゃんって感じなんだよね。

 あと、アイルちゃんもシー姉さんには絶対おばさんって言っちゃダメだよ?マジでヤバいから。酔った勢いでおばさんって言ったフーおじさんが半殺しにされてたからね。気をつけてね」

「気をつけるというか、そもそも海龍様にお会いする機会があるとは思えないのですが」


 なんかアイルちゃんがどっと疲れてる。


「それでは私は戻ります。獣人族の方を待たせていますので」


 アイルちゃんが戻って行った。胃のあたりを抑えていたけど大丈夫だろうか?


「まぁ、僕達はすることもないし、置いてあるお菓子でも食べてのんびりしてようっか」

「では、お茶を入れましょう」

「コウ、ありがとう」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 あー、ここの紅茶美味しいな。

 ダイン王国とはまた違っていいな。僕も渋味が美味しいと思える大人になったってことかな。


「それはそうと、君もお菓子食べる? 美味しいよ?」

「「「!!!!」」」


 ベランダから、さっきの欧米人くんが入って来た。


「よくわかったな。お前がダイキってやつなんだろ?」

「うまく気配を隠してたみたいだけど、まだまだフーおじさんには及ばないね。フーおじさんが本気出したらお父さんでも気づかないことあったしね」

「む〜、親父と比べるなよ。親父だってそのうち超えてやるんだからな」

「まぁまぁ、とりあえずお菓子食べようよ」

「なんでだよ」

「いいから、いいから」

「そ、そこまで言うなら食べてやらないことも、ない」


 僕は、急にやってきた欧米人くんとお菓子を食べることにした。でも、コウ達は気付いてなかったみたいだ。まだまだ修行が足りませんな。


 僕は欧米人くんを座るよう促すして、コウに僕の分の紅茶のおかわりと欧米人くんの分を淹れるようお願いした。

 紅茶が来ると早速欧米人くんは早速お菓子を食べ出した。

 ああ言う言い方をしていた割にうれしそうに食べている。


「おいしい?」

「うっ、ま、まぁまぁだな。」


 僕は子供ってそういうところあるよねとニコニコして見ていた。


「それで、何しに来たの?」

「別に、用はねぇよ」

「そうなの? じゃあせっかくだし、少しお話しようよ。僕はダイキ。君は?」

「な、なんでお前なんかと」


「いいじゃん。ねっ?」

「ちっ、しょうがねぇな。オレはイェスタ」

「イェスタくんはフーおじさんの息子って聞いたけど、ホント?ちなみに知ってるかもだけど、僕は邪竜パール・リューンガルムの息子だよ」

「ふん、本当さ。それにお前は本当に邪竜の息子だったんだな。親父から話しは聞いてた」


「それで気になって来ちゃったの?」

「べ、別に気になんかなってねぇし」

「そっか。そういえば家名はないの? フーおじさんの家名も聞いたことなかったけど」

「ふん。四神獣で家名がある邪竜の方がおかしいんだ。シー姉もウル爺も家名なんかねぇよ」


「そうだったんだ。イェスタくんもシー姉さんとウルヴァースおじいちゃんと会ったことあるんだね。お父さんとも会ったことあるの?」

「何度かうちに遊びに来てたからな。いつも親父と飲んだくれてるだけだったけどな」

「はは、一緒だね。フーおじさんがうちに来た時もベロベロになってたよ」

「だよなぁ。飲むなとは言わねぇけど、もうちょい加減してほしいよな」

「だよね!」


 いつの間にか四神獣を親に持つ者同士、話しが盛り上がっていた。


 聞くと、やっぱりイェスタくんも転生者だった。ノルウエー出身らしい。

 僕と一緒でずっとベッド生活だったけど、死んだあとアウル様にこっちに送られたみたい。


 だから、イェスタくんも魔素の回復について聞いていた。上手く協力してなんとか出来ればいいな。



 気付くともう日が沈んでいた。


「じゃあ、オレは行くわ」

「もう、夜になっちゃったもんね。また、遊びに来てよ。明日首都のヴィナガーデンに向かうけど、しばらくは獣王国にいるし。

 なんならダインに戻った後、ダインに来てくれたら案内するよ。もう僕達、友達でしょ?」

「お、おう。友達、か。そ、そうだな。じゃあまた来る。お前もうちに来いよ。親父も会いたがってる」

「わかった! 是非お伺いするよ」

「絶対だぞ!」

「うん」


 イェスタくんは少し黙ってから、僕をキッと見据えた。


「ただ、どっかでお前とは喧嘩してみてぇ。ますますお前に興味が湧いたし」

「やっぱり、気になってたんだね」

「ち、違ぇし! そんなんじゃねぇし」

「わかってる、わかってる」

「ちっ、まぁいい。それじゃな」

「またね」


 こうしてイェスタくんは帰って行った。

 僕は、こっちに来て初めて友達が出来たと思って、すごくうれしかった。というか、前世を含めても初めての友達だ。


「いやー、楽しかった。面白い子だったね。でも、イェスタくんと喧嘩か。僕も楽しみになって来ちゃったよ」


 お父さん以外で初めて全力を出せるかもしれない相手だし、考えれば考えるほど気持ちは昂ぶっていった。


「3人は僕とイェスタくんが喧嘩したらどっちが勝つと思う?」

「私達は最初イェスタ様がいることに気付くことも出来ませんでしたし、私達が言うのは烏滸がましいのですが、今戦えば、主様の勝利は揺るがないと思います。

 しかし、底知れないものを感じました。今後ますます強くなられるでしょうし、いかに主様とはいえ、うかうかはしていられないかと」

「だよね。フーおじさんの息子だから、魔法は僕の方が上だろうけど、今の時点で身体能力は負けてそうだしね。とにかくフーおじさんは速いからな。イェスタくんも同じだったら苦戦しそうなんだよね。魔法も当たらなければ意味ないしね」


 コンコン。


「どうぞ」

「失礼します」


 やっぱりアイルちゃんだ。


「何かありましたか?すごく嬉しそうですが」

「さっきまでイェスタくんが遊びに来ててさ。あ、例のフーおじさんの息子ね。意気投合しちゃってさ。友達になったんだ」

「は!?」

「また遊びに来るって。僕も家にお呼ばれしちゃったしね」


「ちょっと待ってください。ここに来られていたのですか?

 周りを我らの兵とガガリオンの兵が固めているのですよ。元とはいえ魔王もお2人いるのですよ?

 それを誰にも気付かれずに?」

「アイルちゃん。それはムリだよ。フーおじさんの息子だよ?アイルちゃんはこの程度の守りで僕をどうにも出来ないでしょ?一緒だよ」


 アイルちゃんはまた胃のあたりを抑えている。


「しかも、友達ですか。1国以上の戦力であるお2人が。うっ、胃が痛い」


 アイルちゃん胃が痛いの? 大丈夫かな?


 僕は獣王国1日目で既に来てよかったと思っていた。

 まだまだ楽しみがあるし、良い旅になりそう。

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