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002 僕、ドラゴンに育てられる

 僕は育ての親、ドラゴンのパール・リューンガルムに魔法の英才教育を受け、この世界について学びながら、すくすくと成長した。


 身体は上手く動かせなくても、意識ははっきりしていたから、魔力の操作を0歳から毎日練習した。


 同様に知識も色々教わった。


 この世界は、人族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族、魔族の5つの大きな勢力に分かれている。他にも小人族や妖精族なんかの小規模な種族はどこかの勢力の庇護下に置かれるか、隠れて住んでいる。


 さらに、種族の枠組みを超えた存在として四神獣と呼ばれる、ドラゴン、フェンリル、バハムート、リヴァイアサンがいる。種族の中にはこの4個体を神と崇める種族もあるらしい。


 何を隠そう、僕のお父さんがこのドラゴンだ。


 僕達は、龍ヶ峰と呼ばれる山の山頂に普段は住んでいる。お父さんの昔からの住処だ。だからか、お父さんは他の種族を下界のものと呼んでいる。


 そして、僕は5歳になった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「お父さん、今日から本格的に魔法を教えてもらえるんだよね?」

「慌てるな。約束通り教える。そのかわり、身体を鍛えることと、勉強もしっかりやるんだ」

「わかってるよ、お父さん!」


 僕は前世ではまともに運動もしたことがないし、どうせ長くは生きられないとわかっていたから、まともに勉強もしてこなかった。だから、身体を鍛えることも勉強も楽しくて仕方なかった。


 ちなみにお父さんは、四神獣の中でも最も魔法が得意だと言っていた。つまり、この世界で最強の魔法使いってことだ。

 そんなお父さんは、ドラゴンというだけのことはあり、体長は30mをゆうにこえる。そして、名前の通り真珠のような輝く真っ白な身体をしている。


「ダイキよ、わしに掴まれ」

「うん!」


 僕はお父さんに掴まった。

 次の瞬間見たことのない草原の中にいた。


「え〜〜〜、どういうこと!?」

「これも魔法の一種だ。教えた魔法の種類を言ってみろ」

「えっと、放出魔法、強化魔法、付与魔法、作用魔法、空間魔法だよね」

「そうだ。空間魔法を極めれば、このように、転移を行うことも可能だ」

「すっげぇ〜〜! 流石お父さん!」

「素養があればお前でも、出来る。魔力量だけなら、わしに引けをとらんからな」

「え? 僕ってそんなに魔力量が多いの?」

「ん? アウムは説明したと言っていたがな」

「確かにこの世界でも最高クラスとは聞いたけど」

「聞いてるじゃないか。つまり、わしクラスだな」

「え〜〜〜、人族の中で最高かと思ってた。まさか、お父さんを含めた全種族の中で最高とは思ってなかったよ」

「魔力量だけで見るなら、人族からすると神の領域かもな」


 マジですか?

 神様、俺そこまでのチートは求めてないですよ。


「まぁ、わしから習うんだから、そうでなくてはな。ダイキ、次に各魔法の特徴を言ってみろ」

「そうだね、強くて困ることはないよね。

 えっと、放出魔法は自分の魔力を火や水に変えて外に出すこと。いわゆる火魔法や水魔法だよね。

 強化魔法は魔力で自分の身体を強化すること。自分にバフをかける感じ。

 付与魔法は剣なんかの道具を強化すること。

 作用魔法は周囲の環境に魔力を流して操作すること。土で壁を作ったり、天候も操れる。

 空間魔法は、魔力で亜空間を作ること。アイテムボックスみたいなものかな」


「だいたい理解しているな。ただし、多くのものはこのカテゴリー分けを理解せず、才能に任せている。 

例えば同じ雷魔法でも、手から出すのと、雲から落とすのでは魔法の種類が違うということだな。下界のものはこれを理解しないから、手から出す魔法を第1位界〜第5位界の魔法、自然の力を借りる作用魔法を第6位界以降と位置付けている。

 わしやお前のような膨大な魔力を持つものでなければ、当然自然の力を借りたほうが強力な魔法になるが、そこの理解がないがために、第6位界以降を習得するものは少ないな」


 「じゃあ、下界では作用魔法を使えるものはいないの?」

 「身近にある土や、水を操作することが出来るものは大勢いるな。ただし、それを作用魔法と理解してないから、効率が悪く大魔法に至るものは稀だな」


 そうなのか、下界は魔法が遅れてるのかな。僕はドラゴン(お父さん)に習ってるから下界の魔法の感覚はよくわからないや。


「ところでなんで、今日はここに来たの?」

「魔法が強くなると、山の上では手狭だからな。それに、魔物を狩るにしても山頂付近はまだお前には早い。

 わしから漏れ出た膨大な魔素によってな。魔素はアウムスフィアに住むあらゆる生物に必要なものだが、濃度が濃くなると逆に身体に悪影響を及ぼす。

 長い年月のうちにこの山の魔素濃度は下界と比べてはるかに濃くなってしまった。そのため、濃い魔素に耐えられる強力なモンスターばかりになったのだ。そして、当然山頂の方が魔素が濃いため、山頂に近ずくほど生息するモンスターも強力になる。

 だから山の麓の草原に来たわけだ。それにこの辺りまではどの種族もそうそうやって来ないから、邪魔されずにすむしな」


「じゃあ、僕もお父さんの魔素に影響を受けてるの?」

「ははは。お前がきてからはコントロールして魔素の放出を抑えている。むしろお前から出ている魔素が周りに影響を与えているな。お前もそのうち下界に行くなら、抑えるコントールも出来なければな」


 確かに、ドラゴン(お父さん)なみの魔力量の僕は、抑えないと下界で生活出来ないかも。でも、神様は魔素をこの世界に放出してほしいみたいだしなぁ。


 まぁ、そのうち考えよう。僕は問題を先送りにした。それよりも、今日は魔法を教えてもらう方が大事だ。


「基本は全て使えるな。ダイキは特にどの魔法を伸ばしたい?」

「僕は空間魔法がいい! お父さんみたいに転移が出来るようになりたい!」


 お父さんはニッコリと笑った。


「よし、じゃあ始めるか」

「うん!」


 僕はこれから魔法の訓練に励んだ。もちろん身体を鍛えるのも忘れない。

 あ〜、身体を鍛えることも魔法を覚えることもなんて楽しいんだ。


 そして、5年が過ぎた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 僕は自分で転移していつもの草原にやってきた。僕は特に空間魔法に適正があった。他の魔法はまだまだお父さんに敵わないけど、空間魔法だけはすでにお父さんの域にあると褒められた。


 お父さんも転移でやってきた。


「ダイキ、今日からは山の魔物の攻略をしてもらう。麓から頂上まで全ての魔物を屈服させろ。頂上に近づくほど魔物は強くなり、山頂付近はAランクもごろごろしているし、Sランクも数体いる」


 このランク付けはヒト族によるもので、いまではどの種族もこのランク分けを使っている。ランクはFランクからSランクまである。ヒト族には冒険者という職業があるらしく、例えばAランクの魔物はAランクの冒険者が数人のパーティを組んで倒せるレベルらしい。


 ただし、Aランクはその国でも最高レベルの実力者で、世界でも100人くらいしかいないらしい。Sランクともなると、勇者や英雄として歴史に名を残すレベル。


 その英雄であるSランク冒険者がパーティで倒す、Sランクの魔物を屈服させろとか、お父さんも無茶言うよね。


「ちなみにお父さんは何ランクなの?」

「わしら四神獣はSSSランクだな。世界で4体だけだ」


 やっぱ、とんでもないよね。基本的にSランクまでって聞いてたのに、SSランクを飛ばしてSSSランクとか。そりゃあ神として崇められるのもムリないよね。


「でも、Sランクの魔物なら、お父さんのペットにくらいは出来そうだね」

「ダイキ、わしがヒト族だとすると、ヒト族は蟻みたいなものだ。Sランクの魔物はせいぜいカマキリといったところか。せめて、犬や猫くらいなら飼ってもいいんだがな」


 そんななんだ。


「じゃあ、SSランクの魔物っていないの?」

「100年程前にはいたな。空飛ぶ鯨の魔物が。その当時の勇者引き入るヒト族、エルフ族、獣人族の連合による大軍勢に倒された。

 普段は仲の悪い種族同士が連合を組んだくらいだから、それほどの脅威だったといことだろう。わしにとっては犬猫レベルではあったがな」


「ちなみに、下界の種族には単独でSランクの魔物を倒せる人はいないの?」

「現在はどうかわからんが、数百年に一人くらいの確率でSSランクの勇者が現れるな。鯨を倒した勇者もSSランクだったはずだ。

 お前は、山を制覇すればSSランク相当だろう。下界に出ても、誰にも遅れを取ることはない。ただ、お前は犬猫以上に育ってほしいところだがな」


 この山を制覇した時点で、数百年に一人の勇者レベルになるのか。下界に出たあと大丈夫かな?

 だけど、


「僕は、ライオンになる。いずれお父さんも超えるよ」


 お父さんは、一瞬びっくりしたような表情になった後、ニッコリと笑った。


「よし、じゃあ行ってこい」


 お父さんは僕を送り出した。


 そして、僕は1年で山を制覇した。

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【世界最大の敵の元魔王、現在はウエイター見習い 〜人間の領地を侵攻中の魔王が偶然出会った町娘に一目惚れした結果、魔王軍を解体してそのまま婿入りしちゃった話〜】

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