015 僕、魔王になる
僕は転移で大武闘場に戻った。
僕の配下が全員、武闘台の上にいた。雑魚は片付いたらしい。
そして、気持ち悪い姿、ところどころがぶくぶくと膨れ上がった悪魔?のようなのが3体とその後ろにあいつがいた。
「みんな、遅くなった」
「ダイキ様! アイル様はご無事ですか?」
「うん、大丈夫だよ。結局お父さんに頼っちゃったけどね。今はお父さんが診てくれてる」
「そうですか、邪竜様が」
「それで状況は?」
「はい、すぐに兵士は無力化し、サン殿により観客席には結界も張られております。
しかし、2人の魔王と公爵様、カーミルそしてあの黒髪の魔術師は、即無効化とはいきませんでした。
その時、あの魔術師から何かの薬瓶を受け取った4人は、それを飲み、魔族の奥の手である悪魔契約を行いました」
「!?
悪魔っているの?」
「正確なことはわかりませんが、並行別次元世界に存在するとされています。
悪魔はこちらの世界では生きられないとされていますが、こちらの者と契約することで力を借りることが出来るのです」
「なるほど。これがお父さんの言っていた隠し球の一つってことか」
「しかし、4人は分不相応な高位悪魔と契約したようで、カーミルは契約した瞬間に爆散し、残りの3人も逆に身体を乗っ取られております。
それはあの者から受け取った薬が原因かと思われます」
「結局、黒幕はあいつってことか。それで、倒し方は?」
「悪魔には聖魔法が有効とされています。その他の攻撃はどれも効きにくいのです。
それで悪魔のみを退けることが出来れば、契約した本体は助かるのですが、あの姿ですので3人も助かるかどうか。
私達の中で最も聖魔法に長けたノワールでも決定打に欠け、攻めあぐねているところでした」
皆、不甲斐ないと思っているのか、苦々しい表情だ。特にエメラは悔しそうだ。
まぁ、ここらで主としての力を見せておきますか。
ただ、あの3人もあいつに操られてただけかもしれないし、とにかく悪魔をぶっ潰してみようか。
「サン! 会場の結界を最大限に引きあげろ!
コウとシュンとアンサッスさんはあの3体の動きを少しの間止めてくれ!
残りは固まって自分達の周りに最大限の防御結界を張れ!」
「「「「「「「は!!!!!」」」」」」」
配下はすぐに会場の結界を強化し、3体の動きを止め、自分達にも強力な結界を張った。
「お前達、よく見ておけ!これが聖魔法の極地だ」
僕は両手を合わせて一気に魔力を練った。
そして、会場の上に会場全体を覆うほどの巨大な光の円を出現させた。
「これが下界で言うところの第十位界聖魔法<神の制裁>!!!」
巨大な円から会場に向かって、その円と同じ大きさの光線が降り注ぎ、会場は光に包まれた。
光が晴れた時、結界で護られていた場所以外は地中深くまで穴が空いていた。
「こ、これが、第十位界聖魔法。
なんというお力か」
アンサッスさんだけでなく、みんな身震いしている。
「アンサッスさん、しっかり見てた? みんなもこれくらい出来るように頑張ってね。これでもだいぶ加減してるんだから。
さてと」
僕は出来上がった穴を除いた。やっぱり、3人は穴の底でくたばっていた。元の姿に戻っているし、瀕死だけど生きてるからまぁ、良しとしよう。
「あの状態から悪魔だけを斃すとは」
「そこは腐っても魔王ってことかな。悪魔とかには効果抜群で、それ以外には効果は半減するんだけど、それでも普通は塵も残らないと思うよ」
おや、あいつもまだ生きてるな。うまいこと今ので殺せればそれはそれで良かったんだけど。
僕は、穴の中に下りて、こいつの頭を掴んで無理矢理立たせた。
「やっぱりか、これは本体じゃないな? いわゆるゴーレムか。いや、死霊術の類かな」
「き、さま、、、、」
「まだ喋れたんだ。まぁいいや、どのみち本体は無事なんだろうしね。ただ、闇魔法が使えるのはお前だけじゃないぞ。」
「ぐぁぁぁああああああ!!!!!」
僕はこの分身体から本体の精神に意識を繋げた。逆探知からのハッキングみたいな感じかな。
「ほう、アウム神教国の闇の勇者、ユウヤ・キサラギか。
他にも、火の勇者と水の勇者と聖の勇者がいるのか。アウム神教国は4人も勇者を抱えていると。
ふーん、国ぐるみで魔族領を奪取するのが目的だったわけね。
それで、本当の黒幕はこいつか、教皇グレゴリオ8世。
他には、おっと」
本体側で無理矢理接続を切ったか。それやると精神がだいぶ焼き切れるんだけど。これ以上情報を渡せないってことかな。
僕が掴んでいるこいつは急に生気を失い、顔も身体もパラパラと崩れ落ちて別人に変わった。
「やっぱり、死霊術か。魔族に化ければ良かったのに本人の顔にしていたのはいわゆるナメプってやつかな」
僕は転がってる3人を見た。横に魔剣ガルムも転がっていた。
「あ、やば! 魔剣のことはすっかり忘れてた!
でも無事で良かったー。さすが魔剣ガルム。壊しちゃってたらお父さんになんて説明していいかわからないとこだったよ」
僕は魔剣ガルムを亜空間にしまうと、3人とあいつだった者を連れて地上に転移した。
「さて、サン、といあえずこの4人食っといて」
「は」
サンはエンペラースライムの形態に戻ると3人を丸呑みした。
エンペラースライムの中は亜空間になっていて、吸収しないものはしまっておけるし、自分の実力以下の者を飲み込んだ場合、半永久的に封印しておけるという便利機能が付いている。
僕が戻った時には、倒した兵士は全員食ってあった。
「エメラ、穴を塞いでくれる」
「は」
エメラは水魔法と土魔法が得意だ。
あっという間に穴を塞いでくれた。
「ダイキ様、アイル様を救って頂きありがとうございました。
そして、私ではあの者を仕留めきれませんでした」
「いや、エメラのせいじゃない。アイルちゃんが闇魔法を食らったのは僕の判断が遅かったからだし、実際にアイルちゃんを治したのはお父さんだし、仕留めたって言っても、僕は殺すつもりで魔法打ったしね。
エメラは生かして捉えようとしてくれてたんでしょ? まぁ、実際エメラは僕から見たら実力不足だけど、それは今後頑張ってよ」
「はい。精進いたします」
「じゃあ、一旦龍ヶ峰に戻ろっか。僕達ここにいても部外者だしね」
僕達は龍ヶ峰に戻った。アイルちゃんはお父さんが人化して僕のベッドに寝かしてくれてたみたい。
僕が部屋に入るとアイルちゃんは意識を取り戻していた。でも、魔王さんを失ったのがショックなのか、ひどく落ち込んでいた。
「アイルちゃん、ごめん! 魔王さんを守ることも出来たかも知れないのに、僕は魔王さんを見殺しにしてしまった」
アイルちゃんは驚いた顔をしたあと、落ち着いた表情になった。
「ダイキくん、顔をあげて。ダイキくんが下界のいざこざに手を出さないことは知ってたし、あそこですぐに動けなかった私が悪いの。
それに闇魔法を受けて迷惑をかけたこっちこそごめんなさい」
「そんなこと気にしてたの? そこは仲間なんだし当然だよ」
「ありがとう、ダイキくん」
アイルちゃんはそう言うと暗い翳を落として黙ってしまった。
僕は気付くとアイルちゃんを抱きしめていた。
「ダイキ、くん?」
「アイルちゃん、今後はアイルちゃんを悲しませるようなことはしない。僕は下界でも自由に生きる。
だから、魔王さんを守れなくて本当にごめん。でも、アイルちゃんが無事で本当に良かった」
アイルちゃんは泣き出した。
僕はそれを黙って受け止めるしかなかった。
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次の日、アイルちゃんと王都に戻ると王都は大騒ぎになっていた。
まぁ、魔王さんが刺されたのは精神干渉を受けていたとはいえ多くの人が見ていたし、その後、隣国の兵も魔王まで出てきて、でも気付いたらその辺の人達がみんな消えてたんだから、そりゃ騒ぎになるよね。
僕の聖魔法も会場の外から見たら、普通の光景じゃなかっただろうし。
でも、僕達部外者は何も出来ないし、魔族のアイルちゃんとアンサッスさんに丸投げすることにした。
まずは、魔王さんの葬儀が執り行われることになった。魔王さんの遺体もサンが回収していたからすぐに引き渡した。ついでに、魔剣ダインも返しておいた。
3日後、魔王さんの葬儀が大々的に執り行われた。魔王さんの入った棺は王都中を回って、最後大聖堂に運ばれた。司祭のベインさんだけでなく、教皇や枢機卿と行った教会の大幹部の元、魔王さんは彼岸に渡って行った。
国中が喪に服し、国中が泣いた。
この日から1週間、魔王さんの遺体は魔剣ガルムの前に安置され、魔王さんへの献花の列は途切れることがなかった。
最後は、アイルちゃんに見守られ、王立墓地に埋葬された。
葬儀が一段落すると、今後は次の魔王は誰になるんだと言う話題一色になった。
多くは御前試合に出ていないけど、アイルちゃんに継いで欲しいと言う声をあげていた。
そんな中で、公爵さんと魔王2人の身柄をアイルちゃんに引き渡した。
まずは、この3人を取り調べるらしい。さらに隣国の2か国にはかなり強気にアイルちゃんは出ているみたいだ。
そりゃそうか。宣戦布告もなしに兵を挙げた上に、隣国は魔王さんを含め、進軍した兵が全員捉えらえているんだから。
結局、公爵さんも、魔術団の団長さんも、2人の魔王も皆、闇の勇者ユウヤ・キサラギに操られていたことがわかった。魔王さんは病に臥せっていたから、操る対象から外されていたのだろうと言うことだった。
この結果を元に、魔族3大国の3国会談が行われた。3国が全部集まるのは150年ぶりらしい。
この会談は1週間に及んだ。
気付くと、御前試合から1か月が経っていた。
そんなある日、アンサッスさんから連絡を受け、王城に呼び出された。
3国会談で話がまとまったからきて欲しいとのことだった。
なんで僕が、と思ったけど、いまだに隣国の兵はサンの中だし、公爵さんと2人魔王を倒したのは僕だし、無関係とは言い切れないのかなぁ、と思い何の気なしに王城へ向かった。
正門でアンサッスさんが待っていてくれた。アンサッスさんに大広間に案内された。アンサッスさんが扉を開くと、
100人を超える魔族が僕に跪いていた。
アイルちゃんに公爵さん、御前試合で見た王下十六剣。
さらに、2人の魔王さんとおそらくは3国の重鎮であろう人達が皆、一様に僕に向かって跪いている。
「えっ、あれ? どういうこと?」
僕は理解が全く追いつかない。
すると、アイルちゃんが口を開いた。
「私たち、ダイン王国とガーネット王国、サムラン王国は、ダイン魔族連合王国として統一国家となることを決めました。
ダイキ様、貴方にはその初代魔王になってもらいたいのです。それが、3国の総意です」
「はぁ〜〜〜〜!!!!!」
この後、散々ごねたけど、押し切られてしまった。
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アウムという神様からこの世界の魔素の減少を抑えるためにと異世界に転生させてもらって15年、龍ヶ峰を降りて1か月半、僕は異世界で魔王になっていた。
僕は今度こそ自由に生きたいのに、
魔王になってるってどういうことだよ!!!!!
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