001 僕、異世界へ行く
僕は物心ついた時からずっと病院に入っていた。
友達と遊んだり、学校に行ったり、普通のことをしてみたかったなぁ。
先天性で原因不明の難病に罹っていた僕は、病院のベッドから出ることなく、12歳という短い生涯に幕を閉じた。
はずだった?
気づくと真っ白な空間に僕は立っていた。
「あれ? 動ける。ほとんど寝たきりで、歩くのこともやっとだったのに。てゆーか、僕、死んだよね?」
「やっほー、マリョー・ダイキくん」
僕は突然の声にビクッとして、声の方を向いた。
そこには可愛い幼女が浮いていた。
僕は状況が理解出来ずフリーズしてしまっていた。
「大丈夫かい? あまり警戒しないで」
いや、それはムリだろ。
幼女は僕の警戒を意に介さず、ニコニコと笑っている。
「それじゃあ、自己紹介しようか。僕はアウム。君達にわかりやすく言うなら、神様ってことになるかな」
ヤバい。電波やで。これはあかんヤツや。
「ダイキくん。いきなり失礼だな。僕のどこが電波なのさ」
心が読まれた? 本当に神様なの? この幼女が?
「だから、そう言ってるじゃん」
「えっ、あの、神様、なんですか? それで僕はどうなったんですか?」
「君は地球ではさぞかし大変だったよね。だから、今度は君が生きやすい世界でもう一度生きてほしいんだ。ここはその中間地点かな」
!!!
これは、いわゆる異世界転生ってやつ?
僕は心拍数が急激に高まっていくのを感じた。
生前は、1日中ベッドにいるだけだった僕はネットやアニメ、マンガ、ラノベなんかで1日を過ごしていた。
だから、流行りの異世界ものの知識はあったし、当然憧れはあった。
「もう一度生きれるんですか?」
「そうだね。君には地球ではなく、僕が管理する世界、アウムスフィアで生きてもらいたいんだ」
僕の心臓は大きく跳ねた。
「ありがとう。神様」
僕は泣いていた。生前は何も出来ずに死んでしまった。こんなチャンスをもらえるなんて。
「まぁ、君がこっちに来てくれるのはこっちにとっても有益なんだ。こっちの世界は地球にはない魔素と呼ばれるもので覆われてる。
地球と違って、アウムスフィアで魔素は欠かせないものなんだけど、徐々に減っていてね。でも、神である僕が直接手を加えるわけにはいかなくてね。だから、魔力が膨大な人を定期的に送り込んでるのさ」
「それってつまり……」
「そう、君は地球人なのになぜか魔力が異常に多いのさ。だけど、地球には魔素がないから、それを外に放出できず、膨大な魔力は体内に溜まる一方だった。それが原因で身体に大きな不調をきたしてたわけ」
「じゃあ、アウムスフィアなら僕は普通に生きられるんですか?」
「その通り! しかも、魔力は魔素を触媒にすることで、いわゆる魔法ってやつが使えるのさ。君の魔力量はアウムスフィアでも最高クラスに多いから、鍛えるとそれはもう無双状態だよ」
マジですか!? ただ普通に生きられるだけでも、すごくうれしいことなのに、憧れのファンタジー世界な上、そんなチート状況なんて。
「ただ、魔法には種類によって適正があってね。君がどの魔法に適正があるかは今の段階ではわからないんだ。それは追々試してみてよ」
なんだか、すごく楽しみになってきた。
「特別、使命みたいなものはない。というのも、魔力は外に放出されると魔素に変わるから、君みたいに膨大な魔力を持ってる人が一人いるだけでもアウムスフィアには有益なんだよね。
ただ、出来たら魔素を少しでも増やすような何かをしてくれるとうれしいな。これという答えがあればいいんだけど、ぼくにもわからないから頭の片隅にでも置いておいてよ」
「わかりました。出来るかどうかわかりませんがやってみます」
「よろしい。基本的には君には自由に生きてほしい。
だから、種族間のわだかまりがなくて、色々と教えてくれそうな僕の知り合いの所にまずは送るからね」
「種族というのは?」
「こっちの世界は君の想像するようなファンタジー世界だと思ってほしい。人族以外にもたくさんの種族が生きているのさ。ただあまり、どの種族も仲が良くなくてね」
神様は少し苦笑いした。
僕の心臓は俄然、高鳴っていた。
「それじゃあ、今度こそ人生を楽しんでね」
「ありがとうございます。行ってきます」
僕は白い光に包まれた。
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明るい。でも、何も見えない。
もう転生は終わったのかな。
なんか手足もうまく動かせない。転生って言ってたし、今の僕は赤ん坊なんだろうか。
『聞こえているか、マリョー・ダイキよ』
!!!
頭に直接声が響いてきた。
『お前がアウムの寄越した転生者なのであろう。ならば、記憶があり、意識もあるはずだ。
今はまだお前は赤ん坊だからな、こうして意識に直接語りかけている。お前もこの声に応えるように何か念じてみろ』
『えーっと、はじめまして。麻凉大輝です。こっちだと、ダイキ・マリョーになるんでしょうか?』
『そうだな。名が先が一般的ではあるな』
『それで、あなたは僕を育ててくれるという神様の知り合いの方でしょうか?』
『そうだな。わしは、パール・リューンガルム。アウムとは古い知り合いだな』
『すいません、よろしくお願いします』
『なーに、気にするな。アウムからの頼みでもあるし、それに1万年以上生きているからな、偶にこういうことも暇つぶしにはなる』
いろんな種族がいるとは聞いてたけど、流石にこれはとんでもないのでは。
『もしかして、すごく強い種族の方なのでしょうか?』
『ふん。わしは、種族という枠組みを超えた4個体の1。
わしは龍だ』
まさかの、僕の育ての親はドラゴンだった。
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