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イケ子の金魚

作者: 二本柳亜美

イケ子の金魚

「糞みたいな臭いのする顔をしている」

イケ子はとても醜い顔をしています。顔はやせ細っていて

物を噛む力が弱くて体もどことなく小さくて貧弱です

由紀子はあまり美しくありませんしかわいくもないですが

イケ子を見るとあまりの不細工さに嫌な顔をしました。

イケ子は一生懸命綺麗になるように美人の子の真似をしました

そうすると、おしゃべりが好きなアキ子がやってきてイケ子にいいました

「いつも真似ばかりして、金魚の糞ね、ほんと糞みたい、顔も糞、やることも糞、糞糞糞」

どんな子もイケ子を見て「糞」と人差し指を指して笑いました

真似された人は、イケ子に真似をされて不愉快な気分になりました

すると、みどりがやってきて、イケ子にいいました。

「名前を変えろ、その変な いけこという名を変えなさい」

イケている子という意味で親からつけられたのです。

「イケてないくせに他人の真似ばかりしているから、そういう目にあうのよ」

イケ子は嫌味を言われたのに泣きながら助言をされたと喜びましたが

みどりの助言を断りました

「とても無理です」

みどりはいいました

「裁判所にいけばいいじゃない」

由紀子もいいました

「明日からイケ子が使う名前を考えましょう くそ子がいいんじゃいかしら?イケ子にぴったりだわ」

アキ子はイケ子を人差し指でさしながら腹を抱えて笑います

「ほらほら、頭を下げてお願いしなさい。イケ子からくそ子って呼んでくださいって」

つづけてみどりはいいました

「くそ子じゃなくてもいい、丸子っていうのはどうだ?かわいいと思う、

貧弱な身体とは正反対で良い。」

由紀子とアキ子は「反対!」と手をあげ「多数決」といいました。

みどりは困った顔をしてイケ子にいいました

「あたまを下げてみんなにお願いしなさい」

するとイケ子はいいました「無理です、この名前は親がつけたんです」

由紀子は嫌そうな顔をしてアキ子もムスッとしました

みどりはイケ子の前で由紀子とアキ子に頭をさげながら横目でイケ子をみていいました。

「いつも真似をしているように、こうやって頭をみんなに下げるんだ」

そうやってみどりは頭を下げて、イケ子にやるようにいいます。

イケ子は走って走ってその場から逃げました。

そうして家に帰って自転車にのってまた走りました。

イケ子はなぜかとてもつらい気持ちになりました。

「どうして私はこんなに醜いんだろう。」イケ子はふいにうつった鏡を見て言いました。

鏡の向こうにいるイケ子は醜く泣いていました。


イケ子は自宅に帰りました。池の近くにある自宅へ

自転車にのって泣き叫ぶと、口に蠅が入りました。

イケ子はなにをやってもうまくいきません。

イケ子は自転車の操作を誤って転んでしまいました。

転んで腕や肘が擦り剝けて血が出ていました。

イケ子は小さく泣いて一言、「つらい」そういいました。


イケ子は池に飛び込んでしまいたくなりました。


イケ子は自転車をよろよろと押し歩いて

家に帰って傷口を水で洗いました


平らな顔をした親戚の平川君が家にきました

平川君はお父さんとお母さんに火をつけたタバコで押し付けられた

根性焼きの跡が手に数個並べていました。

平川君は聞きます「イケ子、どうしたんだ?」

イケ子はチェーンのかかった扉越しに言いました。

イケ子は一人になりたいと

「わたし、ひとりになりたいの。さようなら。さようなら」

そう一言いうと扉をしてめ、平川君とさよならをいいました。


イケ子は化粧台に水をためて自分の顔を映しました

「なんて醜い顔なんだろう」イケ子は顔を溜まった水に押しつけました


息が苦しくなってケホケホと水を吐きました


今度はお風呂場に水をためて鼻をつまんでつかりました

お風呂の水はイケ子を拒むかのように冷たく、イケ子を浮かばせます


イケ子は水を飲んでしまってゲロを吐きました。

イケ子の家には金魚がいました。

金魚は水槽の中をぐるぐる泳いでいます。イケ子の金魚は金魚の糞をつけています。

「金魚でも水を泳げるのに、水さえも私を拒絶する」

イケ子は泣いて泣いて泣きました。

泣きすぎて前が見えずふらついてまた転びました。


イケ子は近所の池に走りました。

イケに足を突っ込むとズボズボと入っていきました。

底なし沼がイケ子を飲み込みます


イケ子は意識がもうろうとしていままであったことはとてもくだらないことだと思ってつらくなくなっていきました


冷たい寒さが襲ってきましたが

もう手足は動きません

目から涙がでますが底なしの池だった沼が飲み込んでいきます。

ガボッと最後の息がイケ子から吐き出されます


イケ子は沼の温かさを感じました。

ホッと最後に温かく、イケ子を受け入れました。

それはイケ子の最後でした。

イケ子は微笑んでいましたがそれはだれにもわかりませんでした

もう誰の真似をする必要もなく、醜い顔を見る必要もありません。

安らかにイケ子は沼のなかへ引きずり込まれていきました。


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