第42話 アニム・オリホス
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武器などはじいちゃんしか作れない。
レアな人だ。
でも、それで無理を重ね過ぎたら倒れないだろうか。
そう思うと不安だが、本人が嫌がってないようだから経過観察だな。
颯は相変わらずスライムと遊んでいる。
凛はやっぱり触らせてもらえないようだが、一緒に横になったりゴロゴロしている。
優は迷ってるみたいだったが、スクッと立ち上がってこちらへ来た。
「おやじさん・・俺、ハンターにしてみるよ」
そう力強く言う。
「そうか・・ハンターか。 響き、かっこいいよな。 レベルがあるんだし、また違う強さがあるかもな」
「うん。 俺もそう思うよ」
そう言って優はハンターを選択した。
ハンターの職を選んでも、俺の忍者の時もそうだったが、身体の変化はそれほど感じないようだ。
軽く感じる程度のことはあるが、実際に動いて戦闘などしてみないとよくわからない。
そう思っていると、颯がこちらへやって来て話しかけてきた。
「兄ちゃん・・スラちゃんが、兄ちゃんが怖い感じがするって」
え?
颯・・スライムと話ができるのか?
それってすごい衝撃だぞ。
「颯・・お前、スライムと会話できるのか?」
俺はそう聞かずにいられなかった。
「えっとねぇ・・話ができるわけじゃないけど、何となくそう思うだけ」
颯はそう言うとスライムを抱っこしてこちらに近寄ってきた。
凛も颯の後ろについてくる。
「やっぱりそう感じるね。 テツよりも兄ちゃんの方が怖い感じだって・・そんでもって、テツは大きい感じがするって」
会話というか意思疎通ができるのか。
颯よ、それってすごいことなんじゃない?
それよりもスライムさん・・魔物の感覚だな。
「優が俺よりも怖い感じか・・ハンターの特性だよな、きっと・・」
何か少しショックだな。
レベルは俺の方が上のはずなのに。
「おやじさん。 落ち込むなよ・・仕方ないじゃないか」
優が背中に軽く手を置いてくれた。
あのなぁ・・俺を慰めてくれるな!
「いやいや、優。 悔しくないからな。 そんなんじゃないんだからな」
「わかってる、わかってるって・・」
優はニコニコしながらばあちゃんの横へ行き、座ってお茶を飲み始めた。
これじゃあ、まるで俺が子供じゃないか。
あれ?
何か忘れてる気がするが。
・・・
・・
!!
思い出した。
嫁たちを迎えに行くの忘れてた。
迎えに行く前に、ばあちゃんとじいちゃんに伝える。
嫁のお義母さんを2階に来させてもいいかと聞いてみた。
何せこの家は、じいちゃんの退職金で建てた家だからな。
俺も少しは出した。
嫁は1円の金も出していない。
「梓ちゃんのお母さんね、一人で不安だろうし、うちは全然問題ないよ」
ばあちゃんは、嫌な顔することなく答えてくれる。
じいちゃんも無言でうなずいていた。
なんていい人たちなんだ。
俺って心が小さいのか?
「そうか、ありがとうばあちゃん、それにじいちゃんも・・」
俺はそう言って迎えに行こうとした。
時間は12時45分頃になっている。
また、そろそろ魔物が現れてくるだろう。
今なら、優に頼んでおけば何とかなるだろう。
「うん、やってみるよ。 レベルも9だしね。 それになんかうまく狩れそうな感じがするんだ」
スキルには「観察」と「見切り」というのがあるらしい。
感じ的には見切りって武術だろうし、それって忍者にあってもおかしくないんじゃないか?
優こそチートだろ。
俺がそうつぶやくと、優はうれしそうだった。
俺の選択って本当に大丈夫だったのか?
ほんの少しだけ沈んだ気持ちになったが、すぐに切り替えて嫁たちを迎えに行く。
10秒とかかってないだろう。
嫁の実家に到着。
ドアのインターホンを鳴らした。
すぐにカチリと鍵が開く音が聞こえてドアが開いた。
だから、不用心だと言ってるだろ!
心の声です、はい。
嫁とお義母さんは、さすがに準備はできていたみたいで一緒に歩いて行くことになった。
俺がお義母さんを背負った方が早いだろうが、まぁそれはいいや。
お義母さんの歩く速度で移動し始める。
普通の人の移動速度だな。
・・遅すぎる。
嫁とお義母さんは他愛もない話をしながら歩いている。
俺も辺りを索敵しながら歩いていると、またしても声が聞こえてきた。
『・・誰かいないか・・返事をしてくれ・・』
やっぱり天の声じゃない。
誰かの声だ。
嫁とお義母さんは楽しそうに俺の前を歩いている。
どうしようかな・・この声に答えてみるか。
別に声を出すわけじゃない。
頭の中で返事をすればいいわけだしな。
でも、やばい引っかけの誘いだったら・・。
そんなことを考えつつも、どうせ今の状態も異常だろと思い、俺は思い切って答えてみた。
『はい!』
俺は頭の中でそう返事をする。
すぐに返答があった。
『答えてくれたのか? ありがとう! こちらから呼びかけていて申し訳ないが、君は誰なのかね?』
誰ってなぁ・・俺は少し迷ったが頭の中の会話を続ける。
『私はテツというものです。 あなたはどちら様ですか』
『あはは・・すまない。 失礼したね。 私はアニム、アニム・オリホス。 アニム王国の王です』
ん?
!!
王様ぁ?
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