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やはり男の娘は女になるべきだ  作者: あったかもこもこ
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1話 「朝、のちに転換」

──ジリリリリリッ!


「ん……」


 けたたましく鳴る目覚まし時計。窓から入る光が(まぶた)を刺激し、朝を知らせている。

 朝特有の体のだるさを感じながら、学校か──なんて悠は思ってみるが、よくよく考えれば今日は土曜日。学校は休みだった。

 そうと分かると、急に気が楽になった。どうせ今日は予定も何もない。布団に潜り、もう一眠りしようと思う、がその前に……


──ジリリリッ!


 鳴り続ける目覚ましをどうにかしなければいけない。どうにか、といってもただスイッチ押せばいいのだが……寝惚けた思考にだるい体のせいで、手元から少しだけ離れた目覚ましを止めるのが難しい……というよりめんどうだった。

 情けなく呻きながら、布団から手を出し目覚ましのある方向へと伸ばすが、目覚ましを捉えること叶わず、ただ空を切るばかり。

 なんでこんな遠くに置いたんだと、昨日の自分を呪っていると。


──ジリンッ


 あのけたましい音が鳴り止んだ。

 あぁ、電池切れか──と、悠は思う。

 これが良い事なのか悪い事なのかはさておき、とりあえずは止まったという事実を喜んでおこう。


 さて、音が止まればもう悠を眠りを妨げるものはない。

 ぐっすりと二度寝するために、近くにある枕に抱き付き、悠は意識を濁していく。


「ん、やっ……」


 妙に柔らかく弾力のある枕に抱き付いた際、何か変な声が聞こえたような気がしたが。多分気のせいだろうと思い、意識を闇に落としていった。





────

────


「ん……」


 二度目の起床。

 時刻を確認するため時計は確認すると、針は9時を指していた。


(……起きるか)


 一度目の起床は何時だったのだろうかと考えながら、重い体を起こす。意識がまだ寝惚けた状態なので、スッキリするために洗面所へと向かった。


(あー……なんかいつもより体が重い、気がする)


 歩いていると少し体に違和感を感じた。

 寝過ぎたか、と反省しながら、やっとの思いで洗面所に辿り着く。

 事前にタオルを用意し、冷たい水で顔をバシャバシャ──。寝起きの冷水は顔を刺激し、意識をスッキリとさせていった。


「んぅ……」


 ひとしきりに洗い、満足がいったところで顔を拭く。

 何気なしに鏡を見てみると、そこにはいつもの自分の顔。長い睫毛に、小さいながらもふっくらとした唇。女々しいパーツが勢揃いの自分の顔だ。


「はぁ……」


 つい、ため息が出た。なんでこんな女顔なんだつくづく思う。

 今日なんて特に酷い気がする。酷いというのは、プラスに言えばいつもより女っぽいという事だ。


──女性にとって、こういう日をコンディションが良い日だと言うのだろうか


 そんな事を思いながら、悠は少し遅めの朝食をとりにリビングへと向かった。


「なんかすぐに食べれる物……」

「あ、おはよう悠ちゃん」

「ん、おはよー」


 朝の挨拶を返し、冷蔵庫の中をあさっていく……


──ん?


「……おはよう?」

「うんおはよう、悠ちゃん♪」


 壊れた人形の如く、声のする方へと振り向くと──そこには、ソファでリラックスしながらこちを笑顔で見つめる一人の妙齢の女性がいた。

 日本では珍しいロングの金髪に青の瞳。白いワンピースに身を包んだ美人さんであった。


「……」

「悠ちゃん、そうなに見つめられたら……私っ……」


 何かほざいているが、それどころではない。いや、そのほざいている奴のせいでそれどころではないのだが。

 とりあえず今言える事は、この状況が普通ではないという事……つまりは──


「……夢か」

「違うよー」

「うわぁ!」


 いつの間にか女性の綺麗な顔がすぐ側にまで来ていた。


「あ、そういえば悠ちゃん。自分の体、確認した?」


「え……な、何?」


「んー、その様子じゃ、まだみたいだねー。……あ、いっそのこと今確認しちゃおっか!」


 閃いたとばかりにそう言った後、女は自らの体を悠の方へと寄せた。


「え? えっ?」


 女性のすべらかな手、サラサラの綺麗な髪、そして豊満な胸が、悠の体に触れた。

 突然の事で、悠は混乱し、赤面した。

 こんなのありえない!やっぱり夢だ! と自分に言い聞かせるが、触れる女の体がそれを否定する。


「ふふ、悠ちゃん可愛い」


 女が妖艶な表情を浮かべ。

 やがて女性の細くすべらかな指が悠の体を這っていった。腕から肩、肩から胸へと。


「んっ……な、なに、してっ」

「悠ちゃん、やっぱり敏感なんだね」


 何がやっぱりだよ!──なんて言葉は出せない。

 そんなことより早く離れないと、きっとまずい事になる。そう、分かっているのになぜか力が入らない。女性から離れようと、先程から手で女性の肩を押しているが、全く成果が見られないままだ。


「ふふふ」


 そんな悠を知ってか知らずか、女性は順調に確認とやらを進めていき。しまいには女性の手が悠の下腹部のデリケートな部分へと侵入した。そう、侵入である。


「どこにっ、手を──」


「こら、大人しく。確認だから仕方ないの……ふへへ」


「だ、だめぇ……」


 抵抗空しく、結果まさぐられた。

 不思議な感覚に襲われる悠は、その感覚に耐えきれず膝から崩れ落ちる。それを女が悠の腰を持ち支える。


「うん! しっかりなくなってるね!」

「ぁあ、れ?」


 何だか感覚がおかしい。それに、こんな美女にまさぐられてるのにアレが反応しない。まるでない(・・)みたいに全く。


「混乱してるね。何がどうなってるか教えてあげる」


 女は悠から離れ、改まった様子になると。座り込む悠に向かって一つ、とんでもない爆弾を落とした。


「なんと! 悠ちゃんは今日から……女の子です!」


……女の子です


……です


「……、……は?」


 悠の中で女の言葉がこだました。

 しっかりと言葉は聞き取れたが、女が何を言っているのか、悠には分からなかった。


「ほら! 今の悠ちゃんの状態だよ!」


 混乱する悠に、一枚の写真が見せられる。

そこにはベッドに眠る全裸の自分が写っていた。


「う、嘘……」


 その写真を見た悠の顔は一気に青ざめた。青ざめた理由は、“写真を撮られた”という事実からではない。その写真に写る自分が原因であった。


「なん、で……ない?」


 まさか──と、悠は急いで自分の下着の中を確認した。そして大きく目を見開く。


「う……」


 下着の中。そこにはあるべき長年付き添った相棒が、綺麗さっぱりなくなっていた。


「♪」

「嘘だぁぁぁぁぁぁぁ」


 機嫌が良さそうな女をよそに、悠が響かせた声は、いつもより妙に高かったような気がした。


ほら見たことか

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