転生者
前回の投稿から、随分と時間が経ってしまいました。
◆転生者◆
礼拝が終わり、今は侯爵亭へ帰る途中である。今日、私は宿を取るつもりだったのだが、ジェラルドの
「なんで?侯爵亭に泊まればいいじゃねぇか。」
という一言で侯爵亭へと戻っているのだが、………本当に良いのでしょうか?
帰り道、悩み続けた私の横でジェラルドは楽し気に話していた。「侯爵なら良いと言ってくれるはずだ」とか、「俺に任せとけ」と言ったことを何度も言っていた。
「「「「「「おかえりなさいませ!!」」」」」」
そう言って迎えてくれたのは、一人の執事と、5人のメイドさん達だった。
「応!」
それに応えるジェラルドは場慣れしている。なんだか違う世界の人と言った感じだ。……そう言えば異世界でしたね、此処。ジェラルドと執事さんは何やら話し込んでいる。大方私のことだろうと思うのだが………急に押し掛ける形になってしまって、スミマセン。と、心の中で謝っておく。
ジェラルドと執事さんの話は終った。
「主でしたら、書斎におられるかと。」
「そうか、ありがとう」
どうやら侯爵の居場所を訊いていたようだ。しかし、ジェラルドは貴族相手でも臆さないというか、侯爵亭の人たちからの信用も厚いというか……剣聖だから当たり前なのかもしれないが、…………。そんなことを考えていると、あっという間に書斎に到着した。
――コンコン
ジェラルドが扉をノックしてすぐに、「入っていいよ」という侯爵の優しげな声が聞こえた。
ジェラルドはいきなり扉を開けてしまった。「失礼します」の一言もなかったよ!……まぁ、私も勢いで一緒に入りましたけど。
「只今戻りました。」と、ジェラルドが挨拶をすると、「おかえり、ジェラルド殿」と、侯爵も挨拶をした。侯爵がジェラルドの後ろに立っていた私に気が付いていないことに気づいた私は、
「すみません、お邪魔します。」
と言って、ジェラルドの後ろから出た。すると、侯爵は一瞬だけ驚いた顔をしたがすぐに笑顔で、
「やぁ、いらっしゃい。」
と言いつつ、どうしたのかとジェラルドに視線を送っていた。
視線を送られたジェラルドは、
「いやぁ、行く当ても、頼れる人もいないって言うからだな……」
そう言いながら、私にステータスのことを話していいかと視線で問う。私は、頷くことで了解の意を示した。ジェラルドはそれを確認すると、ため息を吐いてから、
「実は、乃蒼のステータスが外に漏れないようにっていうのもある。」
「どういうことだ?」
侯爵の疑問にジェラルドは、私が世界神、妖精王、精霊王からの加護を受けていることや、スキルが多く、貴族や他国の者に目を付けられると厄介なことになるであろうことを告げた。侯爵は考え事をしているようで、しばらく沈黙が続いた。
長い沈黙を破ったのは侯爵だった。
「わかった。因みにこの街にはどれくらいの滞在を考えているんだい?」
「まだ、何も決めていません。」
「そうか。………実は私は3日後には王都に戻らなくてはならないんだ。」
侯爵がそう言ったので、私は少し考えてから、
「では、私も3日の滞在の後に世界神様からの使命を果たす旅に出ようかと思います。」
そう言うと、侯爵は「すまないね」と謝った。
「いえ。………では、3日間お世話になります。」
「じゃぁ、客間に案内させるよ。」
そう言うと、いつの間にかいた執事さんが部屋に案内をしてくれた。
部屋に案内された私は、執事さんにお礼を言うと、明日からのことを考え始めた。
――3日くらい滞在しようかと思っていたのを見透かしたみたいな偶然だったなぁ。
偶然ではないのかもしれないが……。
一先ず明日からの3日間は買い物をしよう。入用なものはたくさんある。
何を買おうかと考えていると、
――コンコン、とノック音が響いた。
「はい」
「乃蒼、話があるんだが、入ってもいいか?」
「どうぞ」
急な来訪者に驚きつつも、私は返事をした。声の主、ジェラルドは真剣な顔をしていた。
ジェラルドを部屋に入れたはいいが、なかなか話とやらを切り出さない目の前の男に少しイラッだってきた頃、彼は口を開いた。
「俺を、お前の旅に一緒に同行させてくれないか?」
「何故ですか?」
突然の申し出に、動揺が隠せなかったが、それでも私は冷静さを装って理由を問う。
そんな私の質問に彼は、苦虫を噛み潰したようなしかめっ面で
「理由は、言えない。」
と答えた。私は、理由がわからない以上同行を認めるわけにはいかない、と彼の頼みを突っぱねた。
読んでいただきありがとうございます。
これからも頑張って投稿していきますので、どうぞ宜しくお願いします。