逃亡者
何とか書けました。
今週は空いた時間にせっせとストーリーを考えていたのであと数話は近日中に上げさせていただきます。
来週は忙しいのでおそらく無理ですが、今週中に書き上げて、数日おきに最新話が読めるようにしていくつもりです。
前書きが長くなりましたが、どうぞ。
◆逃亡者◆
「大丈夫ですか!?」
扉にぶつかってしまった青年は、服や体が泥だらけなのも気にせずにこう言った
「夜分遅くにすみません。一晩だけ泊めてください!!」
と。私は青藍に目配せをすると、
「はぁ、……仕方ありませんね」
と言って、屋敷へと戻っていった。その行動に勘違いをした青年は、
「お、お願いします。この方だけでも、どうか」
と、必死に訴えてくきた。私が安心させるように青年の肩に触れて「大丈夫ですよ」と言うと青年はホッとしたように、「ありがとうございます」と礼を述べた。
一先ず、屋敷の方へと案内する。玄関に着くと青藍がタオルを渡してくれた。
「ありがとうございます」
青年はそう言うと、少し顔を拭いて外へ出て行こうとしたので、
「どこへ行くんです?」
と、思わず聞いてしまった。青年は、
「さすがに俺……私までお世話になるわけにはいきませんから」
と言ってのけた。私たちは部屋は余っているし問題ないことと、青年がいないことで起こる問題を丁寧に、そう、それはもう丁寧に教えることで引き留めたのだった。
青年は体が泥だらけになっていたので、先にお風呂に入ってもらった。
先に彼の抱えていた男を客間に運ぶ。青年が湯あみをしている間に怪我の状態を確認していく。
男の傷はそれはもう酷いものだった。顔は腫れあがり、右足は骨折、体のあちこちに剣で斬られたような傷と殴られたような打撲がたくさんあった。
「酷い……」
そうつぶやいたとき、廊下から「主、入りますよ」と声を掛けて、青藍が襖を開けた。
青年と共に客間に入ってきた青藍は、大量の魔法薬を渡してくれた。それを男の口に流し込み無理やり飲ませると、傷はあっという間に消えた。…………魔法薬、おそるべし!!
男が治ったのを確認すると、「ありがとうございます」と必死に礼を言う青年を何とかなだめ、何があったのかを尋ねた。青年はしばらく考え込んでから、ぽつりぽつりと語り始めた。
「私は帝国の騎士でアランと申します。私の連れは騎士団の団長でカルロといいます。三か月前、皇帝陛下の命でアルメリア王国に戦争を仕掛けました。団長はその戦争で捕虜として王国に捕まり、我々が三日前に助け出すまでずっと拷問を受けていたのです」
「……そう、ですか」
「やはり迷惑、ですよね……」
あまりの内容にびっくりして言葉もないというのが私の信条なのですが、アランさんは何かを勘違いしたように、「やはり私だけでも出て行ったほうが」などと悩んでいるのです。私が、「そんなことは無い」と言おうとしたとき、青藍が大きなため息をついてから、
「今出ていかれたら、それこそ迷惑です。主も、出ていかれては困るでしょう。一先ず、今日はもう寝て、詳しい話は明日、彼が目を覚ましてからにしましょう」
決して冷たくはないが、優しくもない淡々とした言葉だった。アランさんは今にも泣きそうな顔で
「ありがとうございます」
と言っている。……ちょっと、礼を言いすぎではないかな?
……(翌朝)
早朝、やはりと言っていいのか、頭痛で目を覚ました。痛み止めを取りに台所へと行くと、青藍が心配そうに痛み止めを差し出してくれた。低血圧でやはり機嫌の悪い、低血圧モンスターと化した私は黙って受け取り、それを一気に飲み干した。(因みに痛み止め、ブドウ味である)
私が落ち着いたタイミングを見計らって、青藍が昨日のうちにエアリエルから聞いておいてくれたことを教えてくれた。……まとめると、エアリエルが彼らが来たことを教えてくれた理由は、私がアルメリア王国から来たことを知っていたかららしい。それは良いとして、団長さんが捕まった理由は、戦争時に帝国付近にドラゴンが現れて大暴れをしたためだそう。急遽戻るように伝令が入ったのは戦闘が始まった後で、騎士団を国へ帰すために、足止めに残ったのが団長さんだそう。そして、捕虜になり、それからずっと拷問を受け続けていた、と。
彼らに関する情報をまとめ、とりあえず彼らが起きるまで待とうということになった。……とはいえ、家を空けるわけにもいかないので、縁側で読書をする。題名は『着物・唐衣の着方~初心者編~』である。
え?何故かって?それはですね、先日押し入れから大量の着物と中華服や軍服まで出てきちゃったんです。確実に先代様はレイヤーさんだと思うんですが、着物は前世からずっと好きでしたし、軍服って動きやすいですから結構便利なんですよね。
……と、いうわけで、本も読み終わりましたし、まだ起きる気配のない二人は放置して着物でも着ましょうかね。意気込んで着替え始めた時、「主」と声がかかった。
「どうしたの?」
私が反応したので、襖を開けて青藍が入ってきてしまった。
「す、すみません!!えーと、……二人が目を覚ましました」
頬を朱に染めて顔をそらした青藍……………ちょっと、いや大分、可愛い!!
私はそれを聞いて、青藍に部屋に薬を持っていくように指示を出し、手間のかかる着物をやめ、蒼いカンフー服に着替えた。
〇●○●○●○●○●○●
私は着替えてすぐに台所でお粥を作り始めた。
お粥を作っていると、青藍からの念話が入った。
『主』
『どうしたの?』
『それがお二人が、これ以上此処にいられない、もう出ていく、と言っていて』
『そっか、とりあえずもうすぐご飯できるから、薬渡して引き留めておいて』
『わかりました』
『ところで青藍、』
『なんですか?』
『敬語、いつまで使うつもり?』
『すみ、……すまない、慣れなくて』
『全く、龍種の王様なんだし、これからずっと一緒なんだからはやく慣れてよ?』
『あ、あぁ』
これは最近行われている私たちの日常会話だ。私はまだ十代の小娘で、青藍は千年を生きている竜帝である。あまり、敬語を使われたことのない私がいきなり敬語を使われるようになっただけでも違和感が半端ないのに、相手が龍の王っていうね、……何かの悪戯なんじゃないかな。
おぉっと、雑談しているうちに卵粥が完成しましたよ~と。
客間の方へとご飯を持っていくと、
「とにかく、俺は国へ帰る!!」
という怒鳴り声が、廊下にまで聞こえてきた。私は思わず、乱暴に襖をあけて、
「五月蠅い!!」
と怒鳴ってしまった。
……ちょっと、はしたなかったでしょうか?
今日から少しずつ、更新と称してどこかの話を修正したりしていきます。
少し設定が変わるだけなのですが、せいぜい数か所…………片手で数えられる程度の予定なのであまり気にしないでください。一応どこの話を修正したかは、活動報告として投稿していくつもりなので確認をしていただけると幸いです。