一角獣との盟約
大変長らくお待たせいたしました。
森に来てから一週間、私と青藍は午前は薬草の採集と薬の調合、午後は魔法の練習をしたりして過ごしていた。精霊たちも魔法について教えてくれたり、一緒に薬草採集をしたりと、のんびり生活をしていた。
今日も、魔法薬の材料になる薬草を採集していた。
(なのに、どうしてこんなことに、………一角獣に囲まれているんだ!?)
数日前、私が『図書館』の本のリストを見ていたとき魔法薬の専門書を見つけた。私は、こんなファンタジー世界の必須アイテムともいえる魔法薬の存在に喜び、さっそく専門書を開いた。読み始めてみると意外と簡単だった………のはいいが、用意するものや手順が複雑で挑戦するのに時間がかかった。
そして今日、準備する器具が全てそろい足りない薬草を採集しようと森へ来たまでは良かった。しかし、薬草を取っているところに一角獣が一頭また一頭と現れ、私の周囲を固めてしまったのだ。そうして早3時間。最初は薬草を取り終えてからでもいいかと思っていた私も、取り終わってしまうとすることもなく、家に帰ろうにも彼らが邪魔で身動きもとれない。私は仕方なく、念話を使って青藍を呼び出した。
数分後、青藍が現れると先ほどまで眠っていらした一角獣が起きだした。私の一番近くで眠っていた子は青藍の顔を見た瞬間、露骨に嫌そうな顔をした。………馬なのに全部筒抜けだよ!
青藍が笑顔で一角獣を連れ、行ってしまった。
………数分後。
笑顔の青藍と、真っ青な一角獣が並んで歩いている。………一体何があったのか。
こちらに戻ってきた瞬間、一角獣が
「申し訳ない、乙女の纏う魔力や気があまりにも心地よかったのでつい皆で足止めをしてしまった」
と膝を折って頭を垂れた。
「まぁ、別に良いよ。困ったときはお互い様だもん」
謝られても何も言うことは無い。それに心地いいと言われて気分が良い。だからだろう、私は思わず続けてしまった。
「また、いつでも遊びに来るといいよ。………あ、でも群れはごめんしてね」
「本当に?」
「うん」
「我らが困ったとき、助けてくれるのか?」
「もちろん」
というような会話をした。次の瞬間、一角獣達は歓声をあげてはしゃぎ始めた。そして暫くすると、何やら会議を始めてしまった。………全く、忙しい人……じゃなくて馬たちです。
暫くして会議が終わったらしい彼らのうちの一頭が出てきて、こう切り出した。
「乙女よ、我らと盟約を交わしては貰えないか」
と。盟約が何のことかわからず、頭に?を浮かべていると、
「主、盟約とは何かを対等に交換するときにたてる誓いのことだ」
「なるほど。………で、一角獣さん達はいったい何が欲しいの?」
「我らは礼がしたいだけだ」
「よくわからない。それがどうして盟約を交わすという話になるの?」
「先ほどの会議で、全員一致で返礼は乙女が欲したときに我らの角を差し上げるということになった。しかし、一角獣が他人に角を譲渡できるのは盟約の対価としてのみ、と一族代々の掟なのだ。だから乙女よ、我らは貴女に『我らが困ったとき頼らせてもらう』ことの対価に『我らの角を差し上げる』という、盟約を交わしてほしい。」
彼の言葉に私は、
「いいよ。でも、もう一つお願いがある。もし精霊や妖精、幻獣、魔物に異変があれば森の内外問わず教えて欲しい、」
と答えていた。青藍が後ろで咎めるように声を上げていたが知ったことではない。私は彼らに盟約の交わし方を尋ねた。
一角獣曰く、
~盟約の交わし方~
①自分の印(人間側)を地面に描く。(陣)
②互いの血を陣の上に垂らす。
③誓いの祝詞を読む。
④互いに対価を提示する。
私は言われたとおりに準備を進める。青藍曰く、自分の印というのは家紋のことらしい。
私の場合は『星に月』という家紋だ。地面に書き終えると、私と一角獣は自分の血を陣の上に垂らした。そして、祝詞をよみあげた。
『我ら、血と名において此処に盟約を交わす。「我、一角獣の一族が族長、クリス」、「我、世界神が巫女、乃蒼」。盟約の神イシュパよ、我らが盟約を聞き届けよ』
………と恥ずかしい、中二病のようなセリフを言ったはいいが、恥ずかしさで穴があったら入りたいと、思ってしまった。
まぁ、こうして私は一角獣と盟約を交わしたのだが………誓いを終えた私たちの体には盟約の印が浮かび上がっている。クリスの印は鬣に隠れてわかりにくいが、額に小さな五芒星がある。
因みに私のは左手首だ。蛇の体が手首を一周しているような印だった。
その日の夜、私は青藍に説教を食らっていた。
「主!どうして、あんな女大好き変態馬どもと盟約なんて交わしてしまったんですか!?」
「そ、そこまで言わなくても」
一角獣達のことをあまりにひどく言うものだから、私は彼らを擁護した。
「だってあいつら、処女にはすり寄っていくくせに、男の匂いが少しでもする女には一切近づかないんですよ。それどころか、酷い罵倒を受けることもあります」
「マジか、………そんなにひどいの?」
「はい」
うん、きっぱりと答えたね。……正直言ってショックだ。一角獣には少し夢を見ていたんだよ。一本の角を持つ動物ってなんか綺麗というか、神秘的というか………まぁ確かに、ユニコーンに関しては昔読んだラノベとか漫画に処女大好きって書いてあったけどさ、人の妄想じゃん!実際見たことのない生き物の生態について書かれていても信じないでしょ、普通。この世界では、……いや、ユニコーンさんに関してはラノベ先生が正解だったけれど、まだ夢はあるはずだ。いざとなったら、……いや、最悪の場合はドラゴンでも探しに行って……って、我が家には翼竜とは言えないけど、龍!そう、龍である青藍がいるのだ!!おそらく、いかにも翼竜っていう感じのドラゴンがいるはずだ!………そう信じよう。
と、いうわけで、とりあえず誤っておこう。
「ごめんね、青藍。……心配してくれてありがとう」
と、礼を言ったタイミングだった。
「大変よ!!」
と、エアリエル――森で仲良くなった風の妖精の一人――が叫びながら窓から飛び込んできた。
「一体どうし……」
――ドンドン
一体どうしたの、という問いは門の扉をたたく音に遮られた。
一先ず門へと急いだ。そっと、「どちら様ですか」と問うと、ドシャッという音と「団長!」と言う男の声が聞こえた。慌てて扉を開こうとした私に、
「主、私が開けます」
と言って止めるので
「青藍、この屋敷を囲む森は先代の巫女が幾重にも結界を施して安全に関しては問題ないから」
と言って、青藍を押しのけて扉を開いた…が、そこには誰も居らず、代わりに「グハッ」という声が聞こえて扉の外側を覗き込んだ私たちは固まった。
結果から言おう、危険はなかった。……そう、私たち――屋敷の内部の者達には。ただ、怪我人を抱えていた青年は勢いよく開かれた扉に鼻先をぶつけ、更に夕方から降り続く雨でぬかるんだ地面に足を取られ、盛大にこけていた。………申し訳ない。
ようやく何を書くかが決まり、一話書けました。
最近は、「何の種族から出そうかな」とか、どう話を進めようかなどと、無計画に投稿を開始してひまった自分への自責の念と、自分の文章力のなさへの絶望感にさいなまれておりました。
ギャグのような軽いノリを入れるためだけに悩む時間が増えてきていますが、……ちゃんとノリとツッコミが書けているでしょうか?
少しずつでも、成長できるように頑張ってまいりたいと思っています。
そして、不定期な投稿で大変申し訳ないですが、これからもよろしくお願いします。