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転生後の運命は  作者: 宵藍
精霊の森にて
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精霊の森へ

◆精霊の森へ◆


 あっという間に王城を去る日がやってきました。

私と青藍は、国王陛下、王妃様、王子様達、侯爵様、そしてジェラルドに別れを告げると、精霊の森に向けて出発しました。………とは言っても、王都を出てすぐに青藍が背中に乗せて飛んでくれたから冒険という冒険はできていない。


 あっという間に精霊の森に到着した私たちは、森の入り口にいる少女を見つけた。地面に届くほどに長い緑の髪をした可愛らしい少女だった。少女は私たちを見つけると、

「貴方たちが女神さまのおっしゃっておられた人間と神獣ね!あたしはドライアド。貴方たちを案内するためにやってきた木の精霊よ、宜しくね!!」

と、捲し立てた。

 ドライアドは、森の入り口から奥へ奥へと入っていく。私たちはそれを見失わないようにと、懸命についていった。その途中には綺麗な泉があり、ドライアド曰く、前の巫女はここで水浴びをしていたそうだ。とても綺麗なので水浴びには最適かもしれないな、と泉の場所を覚えておいた。そこからまたしばらく歩いていくと、女神の言っていた屋敷が見えてきた。

――屋敷、でした。西洋風ではなく、日本の旅館のような屋敷でした。正直言って、創造と全然違う。

そりゃぁまぁ、こういう家に憧れたことはありますけど、まさかここに気て、森の中に日本家屋ってどうなんですかね!?しかもここ、ファンタジーな魔法の世界ですよ!?


………失礼しました。

気を取り直して、中に入ってみる。……はい、中も畳の部屋ばかりでしたし、お風呂大きかったです。ちょっと感動しました。衣服も残っていて、広げてみると着物だった。あと、手紙を発見しました。

手紙には、屋敷に残っているものは引き継いだ次代の者になるので使ってもらって構わないとあった。

台所に行くと、冷蔵庫ならぬ保管庫があり、この中では時間が経過しないそうだ。これは先代が作った魔道具らしい。そこにも手紙があった。やはり、中は好きにしていいとのこと。更に屋敷の裏手には畑があるから、そこで自給自足するのもいいかもね、と書かれていた。……親切ですね、この人。

 屋敷には離れがあった。離れと言ってもさして大きくはなく、中は小規模の礼拝堂のようになっていた。

そこで私はとんでもないことに気が付いてしまった。それは、……ここにいれば、一生外に出ずとも生きて行ける!と、いうことだ。まぁ、外出は好きなほうなので、出たいときに出ればいいのだけどね。

 一通り屋敷の中を調べつくした私と青藍は、自分の部屋を割り当て、余った部屋を客間やら書斎やら書庫やらと分類して、荷をほど着始めた。……言ってしまうと、暇なのである。

することもなくなり、うだうだと半日過ごして、夜には寝てしまった。




 明け方、頭痛で目を覚ました。……最近は収まっていたのだが、実は私は頭痛持ちである。

それも群発頭痛なので、薬を呑むまで治らない。群発頭痛には(人によって異なるが)時期がある。この間まではその時期から外れていたようだ。幸い、転生時の荷物の中に鎮痛剤が多少入っていたので、それを投与し、そして………二度寝した。この時期の私はただでさえ悪い寝起きがさらに最悪になるのだ。これは、気持ちよく起きられる時間まで寝ていれば多少ましになるので、気が済むまで寝ることにした。


 6時間後、午前10:00に目を覚ました私が起きていくと、青藍が私の顔を見て固まった。……一体どうしたというのか。化け物でも見たかのような蒼さだ。……ん?青藍、ちょっと震えてる?

 私は恐る恐る青藍に何があったのかを尋ねてみた。…すると、どうやら私を起こそうとしてひどい目にあったらしい。寝起き最悪なのを伝え忘れていたのは悪かったけど、一体何をしてしまったのだろう。

考えつつ、青藍には謝り、朝は起こさなくていいよ、と伝えておいた。


 因みに、今日は何をするかを決めてある。薬草の採取と、薬の作成である。

さっそく私は、チート能力(?)其の壱『図書館』を発動する。これは、取り出すのにも収納するのにも魔力をあまり消費しない。取り出したら出したままでも問題はないしね。

 薬草の本を取り出し、鎮痛剤に必要な薬草や常備薬として使えそうな薬の材料を書き出し、青藍と共に森に入った。

 まずは、森のニンフたちに挨拶をしにいく。薬草採集の許可を彼女たちに貰うためだ。昔、ニンフたちは森に住まう精霊なので交友を深めようと思ったのだ。勝手に荒らすと怒られるかもしれないしね。

「ドライアドーー!」

大きな声で呼ぶと、後ろから「なぁに?」と返事が返ってきた。

事情を説明すると、「良いよー、じゃぁついてきてねぇ」と言って歩き始めた。

 しばらく歩いて、昨日の泉に着くと、

「みんなぁーー!!」

と、ドライアドが泉に向かって叫んだ。すると、泉の方から美しい乙女の姿をしたニンフたちが出てきた。ドライアドが事情を説明してくれたので、私は自己紹介をしてから、薬草採集の許可を貰った。

許可を貰ったはいいが、ニンフたちのおしゃべりに巻き込まれてしまった。

「おかしな人間ね、貴女」

「そうですか?」

「えぇ、森の植物を採集したり、獣を狩る許可を取りに来た人なんて初めてよ」

「でも、あなたたちの住む森ですし、ニンフは自然を象った者たちだと本で読んだことがあったので」

「それでも、私たちに許可を取りに来る人間なんていないのよ?」

と、ニンフたちに『おかしな人間』というレッテルを張られてしまった。


 話が終わったのはお昼の時間だった。ニンフたちは、話に付き合ってくれた礼だと言って、薬草の取れる場所を案内してくれた。あっという間に、薬草が集まった。

「みんな、ありがとう!」

「またいつでも声を掛けてね。手伝うから」

「私たち、すっかり乃蒼のことが気に入ってしまったわ」

「また、遊びましょうねぇ」

礼を伝えると、ニンフたちはまた手伝うと言ってくれた。


 ニンフたちが消えるのを見届けてから屋敷に帰ると、そそくさと薬を調合する。レシピ通りに作ると、何とか成功した。…何度か失敗してしまったようですが。

 こうして、精霊の森での生活がスタートした。 

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