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短編集 ミネマドカ  作者: Madoka Mine
3/16

赤ずきん

赤ずきんといえばこんな話がある。 あれはいつのことだったろうか──。


久しぶりに定時での帰宅が叶った。 駐車場へ出ようとした時、正面玄関前のベンチに目が釘づけになった。

一つ屋根の下で暮らし始めて3年になる同居人が掛けているのだ。 彼女は僕がすぐ裏手にある会社に勤めていることを知らないのだろう。 この寒空の下でよく眠れることだ。


「冷えますよ」


そんな安易な言葉では目を覚まさないに決まっている。 分かっていることでもそれ以外の言葉が浮かばない。 さてどうして起こそうか──。


時間にして10分ほど考えていただろう。 彼女の被る赤いスカーフが目についた。 いわゆる真知子巻きと呼ばれるそれを、彼女は外に出る度被っている。


同居人の名はいまりというが、スカーフを巻いている時、僕は心の中でまちこさんと呼んでいる。


まちこさん──丁度よく吹いた風に乗せるように呼びかけた。 その風はまちこさんの赤いスカーフをさらって行こうとしたが、眠りから覚めた彼女に阻まれた。


「いやー、飛ばさないでエ」


赤いスカーフを巻かないいまりの声に応えたのか、風はやみ、スカーフはいまりの手に留まったままだった。 陽も傾いてきたころで彼女は帰宅しようと身の回りの整理を始めたところで僕に気づいたようだ。

驚きの声を上げ、どうしてここにいるのと訊ねてきた。


「そこがオフィスなんですよ」


初めて知ったと言わんばかりの表情を浮かべるいまり。 あまりに高いビルに圧倒されているようだ。


永島ながしまさん、大きな会社に勤めているんですね」


冬の夕暮れ時、普段は風通しのいい僕の左側を赤いスカーフのいまりが歩いたのは、後にも先にもこれきりのことだということを当時の僕はまだ知らない。



Date;May 10

Theme;red hood


続編ができたときに参考まで設定を。


彼杵そのぎいまり

 人生の酸いも甘いも経験したアラサー

 永島より年上。 故に人生経験も社会人歴も長いが今までの経歴はよく分かっていない


永島ながしま

 プライベートがよく分からない人物で、同居して数年になるいまりですら下の名前を知らない

 いまりより年下の兄がいる。 どういう感情を抱いているかは決して表に出さない

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