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異世界冒険  作者: 華琳
1/1

プロローグ

 キーンコーンカーンコーン!


 学校のチャイムが鳴り、何時ものように授業が終わったからすぐに鞄を持って教室から抜け出そうとした。


「おーい大和! 待てって」

「ん? 圭吾か……」


 俺、桐生(きりゅう)大和(やまと)の事を呼び止めた男の名は本庄(ほんじょう)圭吾(けいご)。幼馴染であり数少ない親友だ。

 圭吾とは幼稚園、小学校に中学、そして高校一年生になった今でもクラスが一緒だから、仲良くなるのに時間がかからなかった事も原因の一つだけど……。


「どうせ今日も彼処に行くんだろ? なら、一緒に行こうぜ」

「……ああ」


 それ以上に、俺たち二人が子供の頃から遊びに行っていた『X研究所』のお陰でもあった。


ー〇⚫〇ー


 X研究所――――。

 俺たちの高校からバスを使って大体一時間かかるが、ほぼ毎日に近いくらい通っている。


「警備の仕事、お疲れ様です」

「お疲れさんですー」

「おぉっ、また来たか? 熱心なガキ共だな、おい!」


 子供の頃から通っているので俺たちは顔パスが出来上がっていた。そのまま入っても職員から何も言われなくなったが、最初は今喋ってるおっちゃんによく止められてたな……。


「おっちゃん、悪いけど俺ら急いでるから」

「おぉ、すまんすまん。あの先生なら今……って、お前さん等には必要ないか」

「そんじゃ失礼します。圭吾、行くぞ」

「おう!」


 そして俺たちは研究所の中にある地下に繋がる階段から、X研究所の最下階のフロアである地下五階まで駆け抜けた。

 本当はエレベーターを使って行きたいんだけど、あの人の部屋に行くにはこの階段を利用しないといけなく、直通が無いので面倒だ。


「はぁっ、はぁっ……相変わらず謎の名前だよな? この『Xの部屋』って」

「フゥゥ……それ気にしたところで今更だろ」


 Xの部屋と書かれたプレートが引っかかっている扉をノックしてから部屋に入った。

 部屋の中には研究で使われたであろう数多くのプリントが散乱し、更に数多くのビーカーの中には色のついた液体が入っており、フラスコからはボコボコと小さな爆発が響いていた。


「うわー、相変わらずココは汚ねぇな」

「あ、先生いた。おーい先生」


 俺は散乱したプリントを拾い始め、圭吾がソファで寝ている先生の肩を軽く揺さぶった。


「ん〜……ふがっ!?」

「おはようございます、先生。もう夕方っすよ?」

「あー……おう、大和に圭吾。お前らまた来てくれたのか?」


 頭をボリボリと掻きながら蹴伸びをし、ゆっくりと起き上がる無精髭でボサボサ髪の男……この人こそが『X研究所』の所長である人だ。


「当たり前じゃないっすか、先生」

「何だお前ら? 前見たくXと呼べ、Xと」

「ははは……」


 この人は何故か自分の事をXと呼び、子供の頃は俺たちもそう呼んでいたのだが……最近では普通に先生と呼んでいる。

 本名は何故か教えてくれず、この研究所の職員すら知らないので俺たちも知りたい所だが未だに分かってはいない。


「さてと、今日も来てくれたんなら今からやる事手伝ってくれるか?」


 因みに先生は、俺たちの事をガキの頃から知っててよく遊んでくれた。だから俺たちにとって先生は第二の親的な存在となっている。


「当たり前だろ、先生」

「そんで、今日は何する気だよ?」


 だから、そんな人の支えになれるのなら俺は喜んで手伝うさ。そしてそれは俺だけじゃなく、圭吾も同じ気持ちの筈だ。


「よく聞いてくれたな圭吾。今日は……あの実験を行う」

「え!?」

「っはは、マジかよ……!!」


 先生がやっている『あの実験』というのは……簡単に言うと異世界に繋がる門を作るという科学の領域を超えた未知なるものだ。

 そもそも何故、異世界というものが先生の研究テーマになっているのかと言うと……俺たちの世界で異世界というものは、憧れの存在だからだ。

 俺たちが生まれる何百年も前から、何故か分からないが異世界の物品が保管されている『異世界博物館』が存在しており、そこでしか見る事の出来ないそれに見た人全員が惹かれてしまった事が、憧れを抱くきっかけになったらしい。

 それとこれは先生から聞いた話だが……何でも物品の中の一つに人に対して発光し、当たった対象の姿を消す物が存在する。それが異世界への転送装置ではないのかという考えを述べる人たちが多く存在した事から、この世界中の人間の異世界に対する憧れが益々強まり、研究所を構えて異世界に対する研究をする研究員も増えたらしい。


「マジだぜ、大和。お前らのお陰でようやく準備が整ったんだ。まずは感謝の言葉を言わせてもらうぜ。ありがとう……」


 先生が深々と俺たちに対して頭を下げて感謝の気持ちを示してくれたけど……。


「おいおい先生、まだ礼を言うのは早いぜ?」

「ああ……それは実験が成功してからにしてくれ」


 そう、俺たち二人は先生の実験が成功するのを信じてこの『X研究所』に通い詰めたと言っても過言では無い。その為に今まで何度も先生を手伝ってきたんだからな……!


「フッ……それもそうだな。よし! やるから手伝ってくれ!!」

『おう!』


 俺たちは先生の指示に従い、実験の準備を進めた。無我夢中で俺たち三人は準備に勤しんでいたからか、気が付けば来てから早くも三時間は経過していた。

 そして、準備が終わった頃には俺と圭吾は疲れ果てていた。


「ぜーっ……ぜーっ……」

「はぁっ……はぁっ……」

「おっし!いくぞ大和、圭吾!!」


 先生は元気なのか俺たちと違って疲れた様子もなく、俺たちに呼びかけながら装置のボタンを押した。

 俺たちも装置の反応をじっと待っていたのだが……。


「あれ?」

「おい先生、何も起きねーぞ?」

「これでいいんだ! 今まで失敗したのは即爆発してたろ?」


 それに対して俺たちは二人は頷いた。

 かれこれ何度もこの実験の失敗を見てきたが、その結果は即爆発が殆どだった。だが、今は全くその傾向がないため、俺たちも期待が高まっていた。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!


『っ!?』

「おっ、キタキタキタキタ!!」


 先生がヤケにハイテンションになってる……こんな先生、今まで見た事ねぇぞ!?


「やったぞお前たち! 第一段階は成功だ!!」

「え!?」

「嘘!?」


 第一段階はって……かなりの進歩だぞ!? 先生が万歳しながらはしゃぐ姿を見て、圭吾は笑っているが、それは俺も同じだと思う。


「次の反応来い! 早く来い!!」

「おぉ……! これもしかして、ひょっとするんじゃないか圭吾?」

「お、おう! ヤベェ、緊張してきたぜ大和!!」


 俺たちにも緊張がはしり、装置の新たな反応を待ち続けていたその時――――!


 ガチャッ!!


「ちょっと大和! 何よこの揺れ!?」

「圭吾もやっぱりいた!」

「んなっ!?」

「お前ら何で――――」


 カッ!!


 突如現れた俺らの幼馴染たちに反応したその時、俺たち四人は装置から発生した光に包まれた――――。


ー〇⚫〇ー


「消えた……か。なら、実験は成功という事でいいのか?」


 私以外の四人……大和に圭吾、そして子供の頃はよく来てくれていた彼女たち二人がこの部屋から姿を突然消した。

 かつて、お前が実験中に消えた通りになったぞ?


「なぁ……? 『X』よ」


 私は白衣のポケットから煙草を取り出し火をつけ、懐かしむようにゆっくりとそれを吸った――――。


ご閲覧ありがとうございました!

次回も読んでいただけると嬉しいです

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