02 七川冷 著 初雪 『初雪の賭け事』
挿絵/深海様より
昔々ある森に「おゆき」という雪女にされた女がいたそうな。何でも、あまりにもおゆきが人に親切にしていなかったので、氷雪を司る神に雪女にされてしまったそうな。しかも、神から人間に戻るための条件として、初雪が降る日から3週間で、家に泊めた人を精気を抜いたり凍死させたりせずに、親切にしたら人間に戻してもらえると言われていた。
待ちに待った数年が経ったある初雪が降る夜、おゆきの家に一人の男が一晩泊めてほしいと訪ねてきた。隣村に行こうにも、かなり距離があり、またおゆき以外この森には家がないので了承した。そして人間に戻るために、おゆきは男を食事の世話から就寝準備まで手厚くもてなした。
もてなせばもてなすほど男は暖かな笑みを見せながらお礼の言葉を言う姿におゆきは嬉しく感じた。と同時に、雪女の本能として男の新鮮な精気を吸いたいと思う気持ちも出てきたので、苛立ちも感じた。その為おゆきは自分の感情にどのように対処すればよいのか思い悩みながら過ごした。
3週間経った頃、
「あぁ、本能と理性。 どちらに身を任せればいいのかしら」
部屋で思い悩んでいると、泊めた男が部屋に入ってきた。
「大丈夫ですか、おゆきさん。よければ力になりますよ」
と優しく言われたので、おゆきは我慢できなくなり、泣きながら自身が実は雪女であることを話した。
話を聞いた男は、怯えて逃げ出すどころか……。
「優しく僕を世話してくれる貴女に惚れました。どうか嫁になってもらえませんか」
なんと、おゆきを抱きついて告白してきたではないか。
「い、いいですよ。わ、私のことが、す、好きでしたら」
おゆきが承諾すると、雪のように冷たかった体は、人間らしい血色の良い体つきへと変化した。そして、人間に戻ったおゆきは男を夫として迎え、そのまま仲良く暮らしたそうな。
了




