復活の杜。
今まで、積み上げていたものが、壊れてしまった時・・。もう、諦めてしまう人は多いと思う。自分も、そうだった。夢に向かい、もう少しで、手が届きそうだったから。好きな物や好きな人に、囲まれ、それが、何よりも、幸せだった。失った今、もう、手に出来ないと思っていた。諦めていた。でも、恐る恐る目を開けてみると、そこに、待ち望んでいた幸せがあった。また、別な形で、そこにある。
「少しは、いいか・・。」
親父が、満足そうにつぶやいた。
「俺は、すっごく、いいと思うけど。」
店の手伝いを始めた。意外かもしれないけで、和菓子作りを始めた。小さい頃から、舌が、覚えている。何となく、通っていた学校での知識も、少しある。
「誉めろよ・・。知識はあるんだ。ないのは、経験だけ。」
「その経験が、大切なんだ。」
「味には、自信がる。」
「形がな・・。」
少し、不恰好な和菓子。
「少しずつで、いいんだ・・。」
親父が、ぼそっと言った。
「何て言った?」
俺が聞き返すと、親父は、
「いや・・。」
そう言って、残っていた和菓子を口に放り込んだ。少しずつ、周りが動き出していた。
「皇犀・・。」
莉子の声がした気がした。携帯だった。
「はい・・。」
出ると、菜杏だった。
「元気みたいだな・・。」
久しぶりに聞く声だった。
「聞いたよ。また、始めるんだろう・・。」
「始めるよ。」
俺は、キッパリ言った。
「前より、忙しくなるぞ・・。なんたって、和菓子屋やりながら、だからな。」
「和菓子屋!家継ぐのか????」
「なんとなく・・。」
「へぇ・・。」
何となく。出来る事はやろう。今までの自分を超える。生きて行く為に、自分を替えよう。
「復活というより、新生だな。」
「そうだよ。」
「だから、あそこで、歌っているのか?」
「そう。」
「話があるんだ。」
菜杏は、嬉しそうだ。
「なんだか、楽しそうだな。」
「いい歌を歌っている女を見つけた。逢いたくないか?」
「女?っていうより、歌に興味がある。逢いたい!」
歌い手の女と聞いて、前に逢った女の姿が、頭に浮かんだ。まさかとは、思うが、逢ってみる事にした。きっと、誰かと、新しく出会う事で、また、運命が変わっていく。人は、そんな風に生きているのだから・・。




