人肌。
季節は冬。
風が冷たい。
真冬とまではいかないが、寒いには変わらない。
「12月か…寒くなるのは当然だよな。」
塾の帰りに空を見渡す。
「雪は降らないか…」
雲はなく穏やかな空が広がっていた。
人肌恋しいと言うのはこう言う事だろうか?
人肌で感じる暖かさ。
ホットジュースの暖かさじゃない。
気持ちがいい感じの暖かさ。
手を握るそれだけで暖かくなる気がする。
「寒いな。こう言う時に彼女って欲しくなるんだなきっと。」
少年はそんな事には興味が無かった。
そんな事をしてる場合では無いのだ。
中三、受験生。
今志望校ギリギリのライン。
いつか、先生にも
「厳しいですよ」っと言われた。
大丈夫。絶対に勉強して成績を上げます。
そんな志を決め、塾にも熱をいれた。
頑張って頑張ってようやく
ギリギリまでたどり着いたのだ。
「長かったよなぁ、まだ先は長いんだけどさ。」
志望校にはたくさんの先輩がいる。
中には、少しあこがれる先輩もいた。
だから、行きたいと思った。
いや、行く。
後から声が聞こえる
「うっす。」
相変わらず、男の子っぽい。
「なんだよ。」
「いや、元気なさそうだなって思ってな。」
彼女は少年に飲み物を差し出す。
「っとと。ありがと。」
飲みながら会話を続ける。
「なぁ、あんたもこう言う時、彼氏とか欲しくなるか?」
「彼氏?あたしはいいわ。そう言うガラじゃないしさ。」
思い通りの返答。
「人肌恋しい時ってないの?」
「ないな。」
すっぱり答える彼女は
何か淋しそうだった。
周りにはイルミネーションが飾られ、どこを見てもピカピカと光を発する。
もうすぐ、クリスマスなんだなと予測させられるサンタもいた。
「じゃぁ、反対に聞くけどお前はどうなんだ?」
「そだね。なんか欲しいな。まぁ今そんな事言ってる場合じゃないんだけど。」
「あはは。お前がかぁなんか、お前変わったな。」
「変わってねーよ。」
変わったってどこが?
態度?身なり?
全然変わった感じがしなかった。
「いや、なんか変わった。」
彼女は、真剣に少年を見詰め考える。
少年は恥ずかしくなり顔を隠す。
「ちょっと、隠すなよ。見えないだろ」
「恥ずかしいじゃん。」
強引に手で覆った顔を出させる。
「やめろって。」
抵抗する俺を楽しそうにいじる彼女。
何が楽しいのだろうか?
そして…
「分かった。」
「どこ?ドコ?」
「まぁ慌てるな。」
「早く教えてよ。もったいぶらないで」
早く知りたかった。
俺がどう変わったか。
どのようにどんな感じで…
「分かったから、目瞑れ?」
この時ある一つの予測が俺の頭をよぎる。
「まず、一つ目な。勉強ができるようになった。」
「それから?」
「二つ目は、身長が大きくなった。いつのまにか私より大きくなった。」
「確かにでもそれは、前から…」
言いかけた瞬間彼女は次に。
「最後な。これは悪い所。あたしが、
目を瞑ってって言った瞬間にキスすると思ったでしょ?」
バレバレですか?
ある予測、男のこっぽいと
言っても所詮女の子。
期待したのかも知れない
「……」
「何も言えないって事は図星か…」
「目開けていいか?」
「おう。言ったろ、
あたしはそう言うガラじゃないって」
「だけど…うーん。そだな。お前だしな。」
「おう。そゆうこと。」
季節冬
冷たい風が吹く。
酷く痛い。
だけど心の中はあったまった感じ。
キスはされて無いけど…
なにかこう暖かい感じのものを貰った。
見渡せばクリスマスシーズン。
サンタさんもいる。
ツリーもある。
一番大きな星を飾り。
木が色鮮やかになる。
深呼吸。
目を瞑る。
微かに聞こえた雪の音。