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人に数としか見られてないとジワジワと傷つく

作者: ヒロモト
掲載日:2026/03/13

久しぶりにこの町に帰ってきた。

30年ぶりか。

何も変わらないにも程がある。

田んぼも畑もそのまま。

普通ビルとか建たない?

この河川敷も久しぶりだ。

楽しかった記憶を思い出したらここで終わらせたくなった。


ホームレスの段ボールハウスもあの頃のまま。

って、待てよ。あのジジイはよっさんだ。

俺が子供の頃からジジイだったよっさんがまだ生きているとは。


「……早く段ボールに帰れ。俺はこれから……」


最期に人間として見られたのはいつだろう?

社会に出てから俺はずっと数字としか見られていない。

何十人何百人の内の一人。

何番目の成績の人、何番目に仕事が出来る人。何番目かの会員。何番目かの客!

社会ってそんなもんだけど、なんか寂しい。

社会の歯車とはよく言ったものだ。

俺は人ですら無く替えの利くパーツ。

俺は特別じゃない大多数。

二十年は何とも思っていなかったが、後の十年。それは鬱となって俺に襲いかかった。

『オレハナニモノデモナイ。タダノスウジ』


「……あんのぉ」


よっさんが帰るどころか俺に話しかけてきた。


「やっぱりそうだ。よう久しぶり。コッペパン代表」


深くにも泣いた。

よっさんは俺を覚えていた。

当時の『役職』まで。

よっさんは子供の頃の俺によく役職(?)をくれた。

何だかそれが特別扱いされた気がして嬉しかったな。


『お前は今日からコッペパン代表だな』


給食のコッペパンをよっさんにあげた日を思い出した。


「それに肩もみ担当大臣。空き缶つぶしマスター。ゲームボーイテクニシャン。人間エロ本探知機。水汲み社長。野球の天才。先生のモノマネ大統領……」


「……よっさん」


放課後はよくよっさんと遊んだ。

空き缶つぶしを手伝ったり川から水を汲んで来たり、よっさんに隣でゲームするのを見てもらったり……その度に役職をくれて。


「死ぬのはまだはえぇよ。たそがれ総理大臣。お前ほどのお人がよぉ!ガハハ!」


やーめた。


死のうとした理由も死ぬのを辞めた理由もくだらない。

あと何年かは今日を思い出して踏みとどまれそうだ。


この日俺はよっさんの段ボールハウスで鍋を作り『鍋インフルエンサー』の称号を得たのだった。






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