人に数としか見られてないとジワジワと傷つく
久しぶりにこの町に帰ってきた。
30年ぶりか。
何も変わらないにも程がある。
田んぼも畑もそのまま。
普通ビルとか建たない?
この河川敷も久しぶりだ。
楽しかった記憶を思い出したらここで終わらせたくなった。
ホームレスの段ボールハウスもあの頃のまま。
って、待てよ。あのジジイはよっさんだ。
俺が子供の頃からジジイだったよっさんがまだ生きているとは。
「……早く段ボールに帰れ。俺はこれから……」
最期に人間として見られたのはいつだろう?
社会に出てから俺はずっと数字としか見られていない。
何十人何百人の内の一人。
何番目の成績の人、何番目に仕事が出来る人。何番目かの会員。何番目かの客!
社会ってそんなもんだけど、なんか寂しい。
社会の歯車とはよく言ったものだ。
俺は人ですら無く替えの利くパーツ。
俺は特別じゃない大多数。
二十年は何とも思っていなかったが、後の十年。それは鬱となって俺に襲いかかった。
『オレハナニモノデモナイ。タダノスウジ』
「……あんのぉ」
よっさんが帰るどころか俺に話しかけてきた。
「やっぱりそうだ。よう久しぶり。コッペパン代表」
深くにも泣いた。
よっさんは俺を覚えていた。
当時の『役職』まで。
よっさんは子供の頃の俺によく役職(?)をくれた。
何だかそれが特別扱いされた気がして嬉しかったな。
『お前は今日からコッペパン代表だな』
給食のコッペパンをよっさんにあげた日を思い出した。
「それに肩もみ担当大臣。空き缶つぶしマスター。ゲームボーイテクニシャン。人間エロ本探知機。水汲み社長。野球の天才。先生のモノマネ大統領……」
「……よっさん」
放課後はよくよっさんと遊んだ。
空き缶つぶしを手伝ったり川から水を汲んで来たり、よっさんに隣でゲームするのを見てもらったり……その度に役職をくれて。
「死ぬのはまだはえぇよ。たそがれ総理大臣。お前ほどのお人がよぉ!ガハハ!」
やーめた。
死のうとした理由も死ぬのを辞めた理由もくだらない。
あと何年かは今日を思い出して踏みとどまれそうだ。
この日俺はよっさんの段ボールハウスで鍋を作り『鍋インフルエンサー』の称号を得たのだった。




