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9、ローズは隣の国の王子様にも溺愛されて困っています

楽しくお読みいただけましたら幸いです。

「ローズ様、どうかローズ様の話の続きをお聞かせください」


 私はイアン様の言葉に驚きます。

 まずは私に様を付けて呼ぶことに驚きました。

 そして私の話を聞きたいと言うことにも驚きました。


「イアン様はレイン国の王子様ですよね?」

「はい」

「私にはそのような身分の高いお方に、様を付けて呼ばれることも、敬語をお使いになり会話をされることもおそれ多いのですが」

「それでは少し二人で話をしましょうか? そうすれば自然な会話ができると思うのですが」

「しかし、今日は、御令嬢がいらっしゃるのではありませんか?」

「あっ、それは、私の妹は本日は来ませんよ。本日、私がここに来たのは、私がリト王子とルト王子のどちらを婚約者にするのか決めるためです」


 なぜ御令嬢の婚約者を兄であるイアン様が決めるのでしょうか?


「イアン様、それでは私よりも、リト様やルト様とお話をした方がよろしいのでは?」

「私は貴女を気に入りました。このまま国へ連れて帰りたいほどです」

「えっと、、、」


 私は返答に困ります。


「ローズはこの国で大事な役職者として働いております。ローズをこの国は手離したりなどしませんよ」


 リト様がニコニコと笑って言っていますが、目は笑っておりません。

 怒っているようです。


「私は、この国が好きです。この国の人達が好きです。ですので、この国から離れることはありません」


 私はきっぱりとお断りをします。

 私はリト様、ルト様の傍を離れることはありません。

 これは絶対です。


「そうですか、今日のところは諦めますよ」


 今日のところはですか?

 今日だけではなくて、もう諦めてほしいのですが、、、。


「それでは、リト王子、これから私と少しお話をいたしましょうか?」


 そう、イアン様は言うと、リト様は無表情で返事をし、お二方は身の上話を始めます。


 私は部屋の隅で、お二方の話を聞きます。

 イアン様の妹である御令嬢のリズ様は私や双子の王子様達と同じ年頃のようです。


 世界で一番美しいと評判で、色んな国の王子から求婚をされます。

 その色んな国の王子は、まず、イアン様の評価を受けます。


 イアン様はリズ様を大切に思い、厳しい目で結婚相手を選ぶのだそうです。

 しかし、そのイアン様の評価で合格点をつけた者はおらず、今に至るそうです。


 イアン様には失礼だと思いますが、イアン様のその体格と威圧感が一番の原因だと思います。

 イアン様の前に立つと、誰でも緊張をして本当の自分を出せないのでしょう。


 その証拠に、リト様もいつもとは様子が違うように見受けられます。

 私もリト様のお気持ちは分かります。


「それが一応、婚約させるつもりでオーム国へ行かせたのですが、本人は嫌々行ったのに、オーム国から帰って来たリズが自分から王子と婚約をすると言うので急遽、私はこの国へ参りました」


 リズ様が双子の王子様をお気に召したのですか?

 それは、驚きです。

 しかし、あの日はリト様だけがリズ様とお話をしたと記憶しているのですが。


「ワタシ達双子のどちらと婚約をしたいのか、ご本人には訊かなかったのですか?」


 リト様が不思議そうに訊きます。


「私は訊きませんでした。何故なら、リズが婚約したい相手を知ってしまえば、私は公平な答えを出せないので」


 イアン様はすごく真面目な方ですね。

 しかし、リズ様が想う相手と違う人を選んでしまったらどうするのでしょうか?


「ここからは男同士のお話をしませんか?」


 イアン様がそう言うと、リト様は私の方を向き頷きます。

 私は静かに部屋を出ます。


 お二人で何をお話になるのでしょうか?

 気にはなりますが、私が聞いてはいけない話なんだと思います。


 私は部屋の外で待ちます。

 窓からは綺麗な青空が見えます。

 穏やかな日です。


 ゆっくり目を閉じると、鳥の囀ずりや虫の鳴き声、使用人の怒鳴り声が聞こえます。

 料理長でしょうか?

 頑固なおじいちゃんなので、いつも見習い人達を怒鳴りながら鍛えています。


「ふふっ、周りが静かだと、こんなにも聞こえるなんて」


 私は一人で、料理長の怒る姿を思い出しながら笑ってしまいます。


「何笑ってんの?」


 後ろから声がして振り返ると、ルト様がいました。


「ルト様、どうしてここにいるのですか?」

「だって、一人でいても楽しくないんだもん」

「でも、リト様がお部屋にお帰りになってから来なきゃダメですよ」

「じゃあ、ローズも一緒に帰ろうよ」

「私はここにいなければなりませんので」

「いいじゃん。僕が体調悪くしたらどうするの?」

「えっ、体調が悪いのですか? 熱でもあるのですか?」


 私は焦ってルト様のおでこに手を当てます。

 以前のように熱くはありません。


「ローズ、ごめん。僕は何ともないよ」

「そうですか」

「ローズ怒った?」

「怒ってはいませんが、怖くなりました」

「えっ」

「また、あの日のようなことが起きるのかと思って凄く怖くなりました」


 私は両手で胸を押さえます。

 心臓が速く波打って、胸が痛くなったからです。


 そんな私の手の上にルト様が手を重ねます。

 私は驚いて顔を上げました。

 すると、心配そうにルト様が私を見ていました。


「ごめんね、ローズ」

「いいえ。ルト様は悪くありません。私が強くならなきゃいけないんですよ」

「ローズ、強くならなくていいよ」

「でも」

「何のために僕がいるの? ローズを守るためにいるんだよ?」


 ニコニコと笑うルト様の笑顔に心が温かくなりました。

 もう、心臓も痛くありません。

 私はルト様に向かって笑います。

 私は大丈夫だと伝えるように。


「ローズ、可愛い」


 ルト様は自分の口に手を当てながら顔を背けて、私の頭を撫でます。

 大きな、温かい手が優しく私の頭を撫でるのです。


「あっ、何でルトがいるんだよ?」


 丁度部屋から出てきたリト様が言います。

 それでもルト様は私の頭を撫で続けます。

 リト様の声に気付き、イアン様が部屋から出てきます。


「ローズ様?」


 イアン様に見られてしまいました。

 リト様にはいつも見られているので慣れてしまっていましたが、他の人に見られるのは恥ずかしいのです。


「あっ、イアン様。申し訳ございません。ルト様がいらしてまして、お一人ずつの面会でしたのに」

「あっ、いいですよ。丁度終わりましたので」

「申し訳ございません。ルト様も謝ってください」

「何で? 僕は悪いことはしてないよ? 別々に面会はそっちの都合でしょう?」


 ルト様?

 勇まし過ぎます。

 そんなに睨まなくても良いのでは?


 イアン様の威圧感はリト様でも少し怯むほどなのに、ルト様は怯むことなく、いつも通りの反応です。

 これは、なんだか嫌な予感がします。

お読みいただき、誠にありがとうございます。

楽しくお読みいただけましたら執筆の励みになります。


~次話予告~

ローズがイアンに求婚されてしまいます。

しかし、それを聞いたルトは、ローズを渡すわけがありません。

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