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8、隣の国のレイン国からの来訪者

楽しくお読みいただけましたら幸いです。

「ローズ、心配しないで。僕は第二継承王子だよ?」

「ですが、それだとリト様が婚約しなければならないのでは?」

「ん? 何で?」


 ルト様は首を傾げて、よく分かっていないようです。


「ご令嬢はどちらかと婚約すると決めたのですよね?」

「それなら大丈夫だよ」

「ですが、、、」

「大丈夫なんだよ」


 ルト様は私の頭を撫でます。

 大丈夫の一言しか言わないルト様ですが、自信満々に言うので、私はこれ以上は何も言いませんでした。



「言うのを忘れていたけど、令嬢がもう来てるみたいだよ」


 思い出したように、リト様は言います。


「えっ、それではお二人とも正装へお着替えください」


 私はお二人の正装をクローゼットから出します。


「それでは私は外でお待ちしておりますので」

「えっ、何で? ローズはここにいてよ」

「でも、、、」

「次はいつ、出発なの?」

「えっ」

「災害特別指揮官の仕事だよ」

「あっ、次は明日です」

「それなら今日は一緒にいてよ」


 私は災害特別指揮官として街へ出向くと、数日は帰って来れません。

 だから、ルト様は私から離れたくないのでしょう。


「分かりました」


 私が返事をすると着替え出すルト様。

 裸は見慣れないので、私はルト様に背を向けます。


「何で背を向けるの?」


 ルト様は私をくるりと回し、正面を向かせます。

 私の目の前には上半身裸のルト様がいます。


「ルト様、早くお着替えください」


 私は顔をそむけます。


「ローズ、ちゃんと見てよ」


 ルト様は私の顎を持ち、正面へ向かせ、顎を少し上に上げます。


「ルト様」

「ローズ、顔が真っ赤だよ」

「からかうのはおやめください」

「からかってないよ。ローズが可愛いんだよ。それと見てほしいんだ。これを」


 ルト様は少し私の顎を下に向け、横腹当たりを指差します。


「これは、、、」

「これね、あの青い花のお香のせいで赤い斑点ができて、なくならないんだ」

「そんなに長い間、あのお香を?」

「長いのかな? どのくらいなのか忘れちゃったよ」


 忘れるわけがないはずです。

 私が青い花を素手で触り、赤い斑点がすぐに出てきました。


 それほどの威力がある毒を少しずつ体内に蓄積させられて苦しんだのに、覚えていないわけがありません。


 私はルト様を見上げます。

 ルト様の体が心配です。


「そんな顔をしないで」

「でも」

「少しずつ薄くなってるから大丈夫だよ」

「本当ですか?」

「僕はこの斑点が嬉しいんだ」

「そんなはずはありません。私は嫌です」

「ローズ、怒んないでよ」

「ですが、、、」

「ローズと同じだから嬉しいんだよ?」


 ルト様は私の掌を見て言います。

 私にもルト様と同じで掌に赤い斑点があります。


「これは、ローズが僕のためにつけた傷だから。僕は一生をかけてローズを守るって決めたんだ。もう、こんな傷は負わせない」

「同じ傷ですか?」


 私は掌をルト様の横腹に当てます。

 同じ。

 なんだか私も嬉しくなりました。


「痛くないの?」


 ルト様が心配そうに訊いてきます。


「ルト様はどうなんですか?」

「僕は少し痛むことがあるくらいかな?」

「私も同じです」


 ルト様と同じ傷。

 ルト様と同じ痛み。

 お互いしか分からない痛み。


 この傷が無くなるまでは、私達は繋がっていると思える気がします。


「ローズ」

「あっ、はい、リト様。少々お待ちください」


 リト様に呼ばれて、私はリト様の元へ行こうとルト様に背を向けます。

 するとルト様は私の手を掴み、引き寄せます。

 私はバランスを崩しルト様の胸へ飛び込んでいきます。


「ローズ、君は僕だけのモノ」

「私は、、、」


「ローズ遅い」


 私がルト様に大切なことを伝えようとしたのに、リト様が部屋へ入って来ます。


「ルト、ローズを独り占めするなよな」

「ローズは僕のモノだよ」


 二人の王子様の喧嘩が始まります。

 双子というものは、そっくりです。 

 二人で上半身裸の姿で口喧嘩をしているのですから。


「私は、出ておりますので、先に着替えた方と一緒に御令嬢の所へ参ります」


 私がそう言うと、二人の王子様は口喧嘩を止め、素早く着替えます。

 いつも、こうだったら良いのですが。


 私はお二人の様子を見ながら部屋を出ます。

 どちらが先に出てくるのでしょうか。


「何でリトなんだよ」


 ルト様は不貞腐れながら私とリト様が先に行くのを見送ります。

 何故、リト様だけなのかと言いますと、御令嬢からお一人ずつ面会をしたいのだと申告がありました。


 面会室へ入ると、私とリト様は同じ言葉を言ってしまいました。


「「男」」


 誰もが言います。

 だって、目の前には御令嬢ではなく、男性がいたのです。


「ワタシは隣の国のレイン国から参りました、国王の継承者である国王の息子のイアンと申します」

「あっ、ワタシはオーム国の第一継承王子のリトと申します」


 お二方はお互いに自己紹介をし、握手をしています。

 イアン様は大人の色気を持ち背が高く、筋肉が体を大きく見せており、威圧感が凄いです。

 リト様はその威圧感に負けそうです。


「リト様、傍にいましょうか?」

「あっ、うん。そうしてよ」


 いつものリト様は何処へいってしまったのでしょうか?

 もう、怯えた子羊さんのようです。


「あなたのお名前は?」


 イアン様は、隣に立つ私に名前を訊きました。

 メイドの名前なんて訊く必要はないはずなのにです。


「私はローズと申します。リト様とルト様の専属メイド兼災害特別指揮官をしております」

「何か凄い肩書きをお持ちのようですね?」

「いいえ。私は災害が起きれば、オーム国の何処へでも急いで駆けつけるメイドです」

「それは大変なのでは?」

「毎日が楽しいです。でも双子の王子様のメイドは大変です。すぐに喧嘩もするので。ルト様も甘えん坊で、、、あっ申し訳こざいません。私のお話なんて今は関係ありませんよね?」


 私は謝った後、一歩後ろへ下がります。

 リト様を見守ろうと思ったのです。

お読みいただき、誠にありがとうございます。

楽しくお読みいただけましたら執筆の励みになります。


~次話予告~

ローズは隣の国の王子様にも溺愛されて困っています。

その場にいたリトは怒ったように、でも冷静にローズを渡さないと告げます。

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