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7、ルト王子の命の危機

楽しくお読みいただけましたら幸いです。

「ローズ!」


 ルト様の部屋が見えると、すぐに部屋から誰か出てきて私を呼びます。

 この声はリト様です。

 なんだか焦っているようです。


「リト様?」

「ルトが、、、」


 私はその言葉を聞いて、すぐにルト様の元へ向かいます。

 ルト様は苦しそうに息をしています。

 どうして?


「さっきから熱が下がらなくて」

「お医者様はお呼びになりましたか?」

「うん。すぐに来るよ」

「体温を下げなきゃいけません。氷はありますか? まって、震えてる? 温めなきゃいけない?」


 分かりません。

 何をしてあげればいいのか。

 何が正しいのか。


「ローズ、落ち着け」


 私はリト様に後ろから抱き締められました。

 その行動に驚き頭が真っ白になります。


「まずは落ち着け」

「は、、、い」

「ほらっ、ルトの傍にいろよ」


 リト様は私から離れ、背中を押します。

 私はゆっくりとルト様の横に座ります。

 苦しそうなルト様を見ると、昔の両親を思い出します。


 このままだと、、、。




 違う。

 私はあの時の、何も出来ない子供じゃないのです。

 私はルト様のおでこに手を当てます。

 熱いです。


 ルト様には負けてほしくない。

 熱なんかに負けてほしくありません。

 私は、苦しそうにするルト様の首の後ろに手を回し、抱き締めます。


「ルト様、頑張ってください。私はここにいます。どうか、負けないで」


 私はルト様の耳元で唇が当たるくらい近くで、囁きます。

 私の声がルト様に届くように。



 あの日から一週間が経ちました。


「ローズ!」


 リト様が私を呼びます。

 私は、災害特別指揮官として、毎日が大忙しです。


「リト様、お久しぶりです。何をなさっているのですか?」

「あいつのために薔薇を」

「そうですか。喜んでいると良いのですが」

「どうだろうね。あいつのことだから、拗ねてるかもな」

「私も一緒に行っても良いですか?」

「それは、いいけど、、、」

「私は、もう大丈夫です」


 私はリト様と一緒に向かいます。

 あの場所へ。


「たった一週間来なかっただけなのに、とても懐かしく感じます」

「まぁ、長い一週間だったからな」


 リト様は遠くを見ながら話をしています。

 色々と思い出しているのでしょう。

 私も思い出します。

 本当に大変な一週間でした。


「着いたぞ。準備はいいか?」

「はい。大丈夫です」


 私とリト様は深呼吸をし、ドアを開けます。


「リト、また今日もローズは来ないの?」


 不貞腐れながらルト様がこちらを向きます。

 そして私を見て笑顔で駆け寄ってきます。


「ローズだぁ、僕のローズだぁ」


 私より背の高いルト様は私をすっぽりと腕の中に閉じ込め、抱き締めます。


「やっぱりローズの香りが一番好きだよ」


 ルト様は私を抱き締め深呼吸をします。

 私、匂いを嗅がれていますよね?

 まぁ、嫌ではないので許します。


「おいっ、キモイからローズから離れろよ」

「嫌だ」

「ほらっ、ローズと同じ香りの薔薇を持って来てやったんだから、離れろ!」

「嫌だ。本物がいるのに偽物の薔薇なんていらない」

「お前なぁ、ローズだって嫌がって、、、」


 ルト様の腕の中にいる私を見てリト様は呆れた顔をしています。

 何が起きているのでしょうか?


「ローズが良いなら仕方ないか。俺はトレーニングルームで汗を流してくるから、まぁ好きにやって」


 リト様は部屋を出ていきました。

 二人きりになったのに、ルト様は何も話さずただ私を抱き締めています。


「ルト様?」

「本当は怖かった」

「ルト、、、様?」

「本当はあの日、ローズが出て行く時、もう会えなくなるんじゃないかって怖かったんだよ」

「だから、あんなに引き止めたんですね?」

「うん。自分の体は自分が一番分かっているからね」

「どうして私を行かせたのですか?」

「ローズの邪魔をしたらいけないんだと思ったんだよ」

「そんな、、、。もし、あの日が最後になっていたら、私は自分を恨んでいたと思います」


 私はルト様の腕の中でルト様を見上げます。

 ルト様は私を見下ろしてからニッコリ笑います。


「僕は、ローズに力を貰ったんだよ」

「力ですか?」

「うん。ローズが帰って来るまでは死ねないってね」

「そんなこと言わないでください。悲しくなります」

「いいよ。泣いても。僕の前でなら泣いてもいいよ」


 私は涙が出るのを必死に堪えます。

 そんなルト様は私の目の端に溜まった涙を親指で拭います。


「ローズ、僕はあの日、ローズが耳元で囁いた言葉に助けられたんだよ。ローズが僕を助けてくれたんだ」

「いいえ、ルト様が頑張ったんです。私はただ応援しかできなかったんです」

「ローズ、君は僕にとってどれだけ大切なのか気付いてるの?」

「ルト様、あなたは私にとってどれだけ大切なのか分かっていますか?」


 私は、ルト様の質問にそのまま同じように返しました。


「ローズ」

「ルト様」


「大変だ!」


 見つめ合っていた私達の雰囲気なんてお構い無しに、リト様が部屋へ入ってきました。


「リト、もう少し二人の時間が欲しいんだけど?」


 ルト様は口を尖らせながらご機嫌斜めになりました。


「そんなことを言っている場合じゃないんだよ。お前達には困ることが起きてしまったんだよ」

「何だよ? 早く言ってよ」

「隣の国の令嬢が、以前この国に来てから俺かルトのどちらかを気に入ったみたいで、婚約するって言い出したんだよ」

「「えっ」」


 私とルト様は一緒に驚きの声を出してしまいました。

 もし、ルト様が選ばれてしまったら。


 私はどうなってしまうのでしょうか?

お読みいただき、誠にありがとうございます。

楽しくお読みいただけましたら執筆の励みになります。


~次話予告~

隣の国のレイン国から来訪者がやって来たけど、御令嬢じゃない?

大きな体の男性でした。

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