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6、犯人確定

楽しくお読みいただけましたら幸いです。

「ローズ、行かないで」


 私がルト様の部屋を出ようとすると、ルト様が私を呼び止めました。


「すぐに戻って来ますよ」

「本当?」

「はい」

「証拠は?」

「証拠ですか?」

「うん。じゃないと行ったらダメだよ」

「子供みたいなことを言わないでください」


 私が困っているのに、ルト様は真剣な眼差しで私を見ています。


「そうですね、帰って来ましたら、ルト様が良いと言うまで傍から離れません」

「本当?」

「はい。だから今はゆっくり休んでください」

「分かった。今日の夜は、、、」

「夜はずっと一緒にいますよ」

「やったあ」


 嬉しそうにするルト様を見てから、私は部屋を出ます。

 さあ、本当の犯人捜しの始まりです。


 王様も部下に命令を出し、今日のパーティーに出席しない役職者は、役職を剥奪するとまで言っています。


 そうすれば、全員が出席するはずです。

 私には犯人の予想はついています。

 しかし、その者だけでは絶対にできません。

 他にも仲間はいるはずです。




 パーティーが始まります。

 大広間にたくさんの人が集まります。

 全員が緊張しているようです。

 前代未聞ですので仕方がありません。


 私はメイド達と一緒に全員にワインの入ったグラスを渡します。

 必ず全員に渡すように受付を設け、名前の確認をし、一人ずつ入室させました。


 王様の命令は全員に届いていたようで、欠席者もゼロでした。

 王様のたった一言で全員が動くということは、王様に威厳があるからかもしれません。


 私は王様に全員が来たことを伝え、王様が壇上へ立ちます。

 全員が王様に注目します。


「このパーティーは、ワタシから役職者達への感謝のために開かせてもらった。どうか楽しんでもらいたい。そして、王子の専属メイドのローズから話がある」


 私は、王様に紹介され、壇上に立ちます。


「皆様、本日は本当に集まっていただき誠にありがとうございます。皆様にどうしても口にしていただきたいモノがあり、このパーティーを王様に開いていただきました」


 私は一度、王様を見ます。

 王様は頷き、私の言葉を待っています。


「皆様の手にあるグラスのワインを口にしていただけませんか? 口を潤し、私の話をお聞きいただきたいのです」


 私がグラスに口を付け、飲む仕草をすれば全員が口にします。

 私はお酒は飲めないので、グレープジュースです。


 口にしない人がいれば、周りにいるメイド達に合図をし、飲ませます。

 全員が飲んだことを確認し、私はニッコリ笑って、小瓶を出します。


「これは、温室にあった青い花から抽出した蜜です。甘い香りだったので隠し味に入れてみました」


 私の言葉に、驚き、口をハンカチや手で押さえる人が数名いました。

 私はすぐに王様を見ます。

 王様もすぐに何をすれば良いのか気付きます。


「口を押さえた者を壇上へ上げろ」


 王様の一言で捕らえられた二人が上がってきます。

 一人は魔術師、そしてもう一人は王様の亡くなった右腕だった方のご子息。


「何故お前が。あんなに可愛がってあげたのに」


 王様は右腕だった方のご子息を見て悲しそうに言います。


「ルト王子が僕の父を殺したんです」

「それは、、、」


 王様は何も言い返すことができないようです。


「いいえ、ルト様ではありません」


 私は胸を張って言います。

 絶対にルト様ではないです。

 確信があります。


「王様、お二人の腕を見てください」


 王様は二人の袖を捲ると、二人の腕には赤い斑点がありました。


「これは青い花を触ることでできるのです。私は素手で触ったので掌にも出てますが、彼等は手袋でもしていたのでしょう。それでも腕に当たってしまって赤い斑点が出ているのですよね?」


 私は赤い斑点が出た手を見せつけて、彼等に訊きます。

 彼等は頷きます。


「この花は毒です。少しずつ体を蝕んでいきます。他に、この赤い斑点がある方を見たことはありませんか?」


 私が役職者達に問い掛けると役職者達が一人の人を見ます。

 私が予想していた人でした。


「やっぱり、あなたでしたか」


 その人は、王様の実の弟であり、最高指揮官様でした。

 私はこのパーティーが始まる前に、使用人に訊いて回ったのです。

 私のような赤い斑点がある人を見たことがあるかどうかを。


 この犯人である三人の名前はあがっていました。

 目星はついていました。

 しかし、理由が分かりませんでしたが、また使用人から話を聞き、気付きました。


 ルト様に呪いなんてないんです。


「何故ワタシがこのようなことをすると言うんだ?」


 最高指揮官様は認めません。

 それなら教えてさしあげましょう。


「それは貴方の優しさが毒を持ち、周りの者を殺めてしまったのです。第二王子であるルト様はいつか貴方と同じ立場になり、惨めに生きていく。兄への恨み、両親への恨み、その恨みを晴らすために王様の右腕を殺め、そのご子息を復讐という理由を使い操ったのです」


 私の言葉に最高指揮官様は驚きを隠せていないようです。

 私の推測は当たっているようです。


 それから三人は牢屋へと連れて行かれました。


「ローズ、君は本当に賢い」


 全てが落ち着いた後、王様は私を褒めてくださいます。


「もしよければ君を最高指揮官に任命したいのだが?」

「それは嬉しいお言葉ですが、辞退させていただいてもよろしいでしょうか?」

「何故だい?」

「私よりも、経験や知識を備えた方がいらっしゃいます」

「君はこの国には必要なんだよ。君の、人の気持ちを見抜く力や直感、適応能力が欲しいんだよ」


 王様は私に懇願します。


「私は、戦うことはできません。しかし、人の言葉を聞くことはできます。災害などで困った人達のお手伝いができる仕事がしたいです」


 私はメイド。

 困っているご主人様を助けるために動きます。

 それは変わらない。


 私は、いつの間にか困っている人を助けることが私の幸せになっていたのかもしれません。

 二人の王子様に出会って。


「それなら今からローズ、君は災害特別指揮官になってもらう。これは断らないでくれ」


 王様の懇願を私は断れませんでした。

 私は頷きます。

 そして、役職者達が拍手をしてくれました。


 私のために王様が新しく作ってくれた役職です。

 私はメイドから役職者になったのです。

 孤児で身分の低い私が役職者になり、自分でも信じられません。


 早くルト様に伝えたくて、ルト様の部屋へ向かいます。

 ルト様は起きているでしょうか?

 笑ってお帰りと言ってくれるでしょうか?


 早く会いたくて走ってしまいます。

お読みいただき、誠にありがとうございます。

楽しくお読みいただけましたら執筆の励みになります。


~次話予告~

ルトがまた高熱で命の危機に。

ルトのために何をすればいいのか分からないローズにリトがとった行動とは?

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