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5、犯人捜しの始まり

楽しくお読みいただけましたら幸いです。

「ローズ、リトはいないよね?」

「はい、今は御令嬢と面会しております」

「そう。それならまず、先に言っておかなきゃいけないことは、リトはこのことは何も知らないんだ」

「はい。そのようですね。真ん中の扉に鍵を付ければ行き来できないですし、声も聞こえないようでしたので」

「ローズはどこまで知ってるの?」


 私は昨日の出来事を全て話しました。


「そうなんだね。ごめんね嫌な所を見せてしまって」

「いいえ、ルト様は悪くありませんよ?」

「僕がいるからなんだよ」

「ルト様?」

「僕は呪われているんだ」

「呪い?」

「僕が何かをすると悪いことが起こる。僕が泣けば前の王様が亡くなったし、僕が怪我をしたら前の王妃様が亡くなった」

「そんなの偶然ではないのですか?」

「まだあるよ。僕が怒れば王様の右腕の戦士が戦争で亡くなった。僕が転ければ近くの村が大洪水で大きな被害が出た」


 そんな話をしていてもルト様は笑っています。

 笑うことしかできないと思っているのでしょうか?


「それが、呪いですか?」

「うん。だから、王様と王妃様が僕の呪いを解くために魔術師を呼んだの。それから僕はあの儀式を受けているんだ」

「ルト様は知っていながら、あの苦しい儀式を受けているのですか?」

「最初は苦しかったよ。でも、僕の飲み物に睡眠薬を入れてもらってからは、苦しくなくなったんだ」


 飲み物に睡眠薬?

 もしかして、寝る前に一杯のお水を飲ませているのは、そういうことですね。

 私も知らない間に加担していたのですね。


 悔しい。

 何も知ろうとしなかった自分に腹が立ちます。


 しかし、睡眠薬があっても苦しくないわけがないです。

 だって、私はこの目で見たのですから。

 あんなに苦しそうに私を呼んでいたのですから。


「やめてください。我慢をするのはやめてください」

「僕は我慢なんて、、、」

「してますよ。今だって、本当は助けてほしいですよね? 毎日、苦しみから逃げたいって思ってますよね?」

「それができればやってるよ」

「やっていません。こんなにボロボロになるまで、手も動かない時が、、、」

「ローズ?」


 私は、手が動かないというフレーズで昔のことを思い出しました。

 昔、両親が亡くなる前に手足が動かないと言っていたこと、そしてあの香りも思い出しました。


 そう、私の両親もあの香りのお香を毎日焚いていました。

 私の両親は感染症で亡くなったのですが、一番の原因はその感染症に耐えるほどの体力がなかったからだと、お医者様が言っていたことを思い出しました。


「あのお香は、ルト様の体を弱くするお香です」

「でも、あのお香のおかげで僕は誰も死なせてないんだよ?」

「それは関係ないと思います。あのお香は、私の両親も使っていました。そして、手足が動かなくなって体が弱って感染症で亡くなりました。ルト様も同じですよね?」

「同じだけど、お香がなくなれば僕は呪いで人を殺めてしまうかも、、、」


 ルト様は不安そうに私を見ます。


「ルト様。私を信じてくれませんか? 私の推測は当たっています。お香はルト様を助けるモノではありません」

「分かったよ。なんだか疲れたよ」

「分かりました。ルト様、後はお任せください」

「ローズ」

「はい、どうしました?」

「僕が眠るまで手を繋いでてよ」

「はい。分かりました」


 私はいつもより温かいルト様の手を握ります。

 ルト様はニコッと笑って目を閉じました。

 もう、苦しまないでと願いながら私はルト様の手を少し、ほんの少しだけ強く握りました。


 ルト様の寝顔を少し見た後、私は立ち上がります。

 ここからは、時間との勝負です。

 儀式が始まる前に王様と王妃様に知らせなければいけません。


 でも、一つ注意したいのは、王様も王妃様も騙されて苦しむ我が子を見ているのか、それとも知っていて儀式をしているのか見分けることです。


 それには、あのお香が必要です。 

 私は、お香の場所に心当たりがあります。

 私がこのお城の責任者であった時、私に入れない場所はないはずなのに入れない場所がありました。


 それは温室です。

 何か植物を育てているのでしょう。

 それがお香の正体だと思います。


 誰にも見つからないように、温室の鍵を取り、温室へ向かいます。

 ドアを開けて驚きました。


 温室の隅で、小さなビニールハウスの中で咲いている青い花を見つけました。

 ビニールを剥ぐと、あの甘ったるい香りがします。

 お香と同じ香りです。


 私の予想は的中しました。

 すぐにその青い花を摘みます。

 素手で触るとチクチクと痛みを感じます。


 触るとチクチク痛むなんて、これは本当に体にはよくないはずです。

 もっと早く気付けば良かったと後悔しました。


 この青い花をお香にするなんて、そんな技術は私にはないので、まずはすり潰します。

 青い液体が出てきて、それを小瓶に入れます。


 これで準備は整いました。

 私はまず、王様と王妃様の元へ向かいます。


「王様、お話があるのですが」

「君か。ルトは大丈夫か?」

「はい。ぐっすりお眠りになられております」

「そうか。良かった」


 王様はホッとしている様子です。

 王様は騙されているだけかもしれません。

 でも、一応確認をします。


 「今朝のコーヒーに、この小瓶に入っている青い花の蜜を少しだけ入れたのですが、美味しかったでしょうか?」


 私は、王様の反応を見逃さないように、目を離しません。

 王様は、私が持っている小瓶を見ています。


「綺麗な色だな。それは何の蜜かな?」

「青い花です」

「青い花?」

「これを嗅いでみてください」


 私は小瓶の蓋を開けて、王様の鼻に近付けます。

 王様は、目を見開いて驚いています。

 気付いたようです。

 ルト様を苦しめる、あのお香と同じ香りだと。


「どうして君が?」

「私はこの香りを知っています。私の両親を死へと追いやったこの香りを」

「死だと?」

「ルト様をどうするおつもりですか?」

「ルトを守るためにやっていることだ」

「この香りは呪いを解くモノではありません。これは人の命を奪うモノです」


 私が言うと、王様は膝をついて項垂れました。

 自分のしたことがルト様の命を奪おうとしていたのですから。


「王様、この青い花は飲むのも危険なので、それを知っている人、その方が犯人です」

「犯人?」

「ルト様の命を奪い、王様の心を傷つけようとする誰かが犯人です」


 王様は私の言葉に正気を戻し、犯人捜しを始めます。

 王妃様は本当に毎日のようにルト様を心配していたそうなので、犯人ではないと王様は断言しました。


 それから王様は提案をします。

 今夜の食事はお城の役職者だけでパーティーを行うと。


 これは前代未聞ですが、それが一番、手っ取り早いです。

 それが決まると準備に大忙しです。


 私は一度、ルト様の部屋へ戻ります。

 ルト様はまだ眠っていました。

 ルト様の可愛らしい顔を見て私は部屋を出ようとルト様に背を向けます。

お読みいただき、誠にありがとうございます。

楽しくお読みいただけましたら執筆の励みになります。


~次話予告~

犯人を見つけるために前代未聞のパーティーが始まります。

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