4、ルト王子、体調不良
楽しくお読みいただけましたら幸いです。
「ローズ」
ルト様は寝言で私を呼びました。
「はい、ルト様」
私は小さな声で返事をしました。
ルト様は眠っているのに私の声が聞こえているのか、ニコニコと笑顔になり嬉しそうです。
私は少しだけルト様の寝顔を見て、部屋を出ました。
あの香りの正体が何なのか、暴かなければなりません。
あのお香は絶対に体に悪い物だと思います。
風邪などひかない私の体調が、少し悪くなった気がするからです。
次の日の朝、急いでルト様の部屋へ向かいます。
急いで来た私に、ルト様は驚いています。
「ローズ? どうしたの?」
「あっ、いえっ、昨日の夜のルト様の様子が気になりましたので」
「そうなの? もしかして昨日の夜、僕に会いに来た?」
「それは、規則で部屋には入れませんので」
「そうだよね。ローズは絶対に来ちゃダメだよ」
ルト様?
もしかして、あのお香のことを知っているのですか?
体に悪いモノだと分かっているのですか?
「えっ、どうしてでしょうか?」
「そんなの、寝相が悪いからだろう?」
私の後ろからリト様が、ルト様の代わりに答えました。
隣の部屋で寝ているリト様は何も知らないのでしょうか?
「寝相なんて悪くないよ。ベッドから落ちたりしないじゃん」
「そんなの分からないだろう? ドアが閉まれば俺には何も聞こえないんだからな」
何も聞こえない?
それならリト様は何も知らないのかもしれません。
しかし、あのお香の香り、何処かで嗅いだ気がします。
「今日は、レイン国の令嬢が来るよ。準備しなきゃ」
ルト様は正装ではなく、普段着の中から選ぼうとしています。
「ルト様」
「何?」
「今日はルト様も正装ですよ」
「えっ、やだっ、あれキツイもん」
「いけません。御令嬢も正装でいらっしゃいますので」
「それならローズが着替えさせてよ」
「お前はガキかよ」
ルト様は、リト様にキツイ一言を言われた後に頭を叩かれていました。
私は二人が着替えるまで部屋の外へと出ます。
隣の国の御令嬢がいらっしゃるので、お城はバタバタしています。
私は、王子様お二人の専属メイドなので、そんなに忙しくはありません。
「ローズ、ボタンが取れたよ」
ルト様が部屋から出てきて、私にシャツを渡してきます。
その為、ルト様は上半身裸です。
「えっ、ちょっと、ルト様、何か着てください」
「何で?」
「目のやり場に困ります」
「ローズ真っ赤だ。可愛い」
ルト様はニコニコと笑っています。
私は、引き締まった体にドキドキしてしまいます。
「ルト、そんな軟弱な体じゃ俺には勝てないぞ」
次はリト様が出てきます。
リト様も上半身裸です。
お二人は何がしたいのでしょうか?
「お二人とも、早くお着替えください」
「あっ、ローズが怒った。リトが来るからだよ」
「はあ? ルトもだろう?」
お二人はワチャワチャと言い合いをしています。
「お二人ともです!」
私はそう言ってお二人に背を向けます。
お二人は『仕方ないなぁ』と言いながら部屋へ戻ります。
私は急いで新しいシャツを準備し、ルト様の部屋へ入ります。
ルト様は普段着を着て待っていました。
「ルト様、持ってきました」
「本当? それじゃあ着替えるから、ローズは後ろを向いててよ」
「いいえ、私は出ますので」
「ダメ。ローズはここにいて」
「でも、、、」
「最近、指の動きが悪くて引っ張ったらボタンが取れちゃったんだ」
「そうだったのですね。それなら私が、ボタンをとめましょうか?」
私はルト様の服を脱がし、シャツを着せます。
そして上から一つ一つボタンをとめます。
シャツの隙間から見える腹筋に、ドキドキが止まりません。
あれ? 私、ルト様の洋服を脱がしました?
自分の顔が赤くなっていくのが分かります。
ボタンをとめるだけなのに、うまくいかなくなります。
「ローズ?」
「あっ、申し訳ございません。私、勝手に脱がせてしまって」
「だから、謝ったら怒るよって言ったよね?」
「えっ」
「ローズは何も悪くないんだよ」
ルト様は私の頭を撫でます。
大きな手に私の心は温かくなります。
やっとボタンをとめて、ルト様を見上げます。
「終わりました」
「うん。ありがとう」
ルト様はニコニコと笑っています。
「ローズ、またベルトができないんだけど?」
「はーい。リト様、少々お待ちください」
リト様の所へ行こうと、立ち上がろうとすると、ルト様が私の手首を掴みます。
「ルト様?」
「ローズ、、、」
ルト様?
なんだか苦しそうです。
私は、ルト様の昨日の寝ている時の苦しそうな顔を思い出してしまいます。
「ルト様、手が熱いです。もしかして体調が?」
私が言った時には遅く、ルト様は私に倒れ込みます。
「リト様、ルト様が」
私は必死にルト様を支えてリト様を呼びます。
お願い。
早く来て!
ルト様が。
リト様が来てから何が起きたのかあまり覚えていません。
今、私の目の前にはベッドで眠るルト様がいます。
苦しそうに呼吸をしています。
赤い顔が熱の高さを表しています。
何もできない私は無力です。
「今日の夜の儀式は、おやめになりますか?」
私の少し後ろでコソコソと王妃様が王様に言っています。
やはり、王妃様と王様はあの夜のことを知っているようです。
しかし、儀式とはどういう意味でしょうか?
「今夜もやるさ」
王様はじっとルト様を見て言います。
こんなに弱っているのに、どうして苦しめることをするのでしょうか?
「ローズ?」
ルト様が目を覚まして心配そうに私を見つめます。
「ルト様。お体は大丈夫ですか?」
「そんな顔をしてるローズを見たら良くならないよ」
こんな時にもルト様は笑って言います。
「ルト様、夜に何が起きているのか教えてください」
私はルト様の耳元で言います。
ルト様は大きく目を見開いた後、真剣な眼差しで私を見ます。
「必ず、助けます」
「うん」
私がルト様に言った後、ルト様は頷き、いきなり起き上がります。
「僕はもう、大丈夫だよ。昨日は寒かったから、体調を崩しちゃったよ」
いつものルト様が私の目の前にいます。
でも良く見ると、無理しているのが分かります。
額に汗が滲んでいます。
ルト様の様子を見た王妃様や王様、医者もすぐに出ていきました。
それを見た途端、ルト様はバタっとベッドに倒れました。
「ルト様!」
「大丈夫だよ。ローズと二人になるには、こうしなきゃいけなかったからね」
「ルト様、無理はしないでください」
「うん。横になったまま話をしてもいい?」
「はい。何があっても私はルト様の味方ですから」
私はしっかりとルト様の手を握って言います。
あんな儀式、今日を最後にします。
必ず守ります。
お読みいただき、誠にありがとうございます。
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~次話予告~
ルトを苦しめるのは誰なのか、犯人捜しと、お香探しが始まります。




