26、私メイド辞めません、、、今は
楽しくお読みいただけましたら幸いです。
「ローズ、何してんの?」
「エリザベスがリードを嫌がるのです」
エリザベスとは、レイン国で拾った犬です。
この子は女の子だったので、私の大好きなお母様から名前を貰いました。
今日は大事な式典なので、エリザベスにはリードをつけて出席しようと思ったのですが、嫌がるので仕方がないですよね。
この子に会いたいはずだから連れて行きたいので、リード無しで行くしかありません。
この子は良い子なので迷惑はかけないと思います。
「ローズ、行くよ」
「今、行きます」
「ローズ、今日は本当に美しいよ」
「ルト様も大人っぽくて格好良いですよ。リト様もお似合いです」
ルト様とリト様は正装ですが、何度見ても格好良いですね。
私は淡いピンクで裾の部分に薔薇の刺繍が並んだ可愛いドレスです。
「リトは褒めなくていいから」
「お前はガキかよ」
いつもの双子喧嘩が始まります。
私はエリザベスを撫でながら懐かしい街並みを窓越しに眺めます。
今日は、レイン国で婚約の式典があるため向かっています。
私達はお呼ばれしたので出席します。
私はルト様からいただいた、ブレスレットとネックレスをつけています。
ブレスレットはルト様が職人さんにお願いをし、作り直してくれました。
私達はお城へ着くと、式典がある部屋へ入ります。
たくさんの方々がお祝いに来ています。
すぐに式が始まり、婚約をする二人が並んで入ってきます。
とっても綺麗なユーリ様。
そして緊張でぎこちないイアン様。
小さなユーリ様が大きなイアン様を引っ張る様子がとても仲が良く見えて、羨ましくなりました。
「それでは婚約の品々を姫へ」
司会者の方が言います。
婚約の品々?
婚約指輪だけではないのでしょうか?
イアン様を見ると、ユーリ様にブレスレットをつけ、ネックレスをつけた後、婚約指輪をつけていました。
私はこの内の二つはルト様から貰っています。
レイン国では婚約の証なのでしょうが、私の国では婚約指輪が一般的なので婚約の意味で渡しているわけではないですよね?
式が終わると、ユーリ様はすぐにエリザベスの所へ来ます。
真っ白のドレスを着ているのに、汚れることなど気にせずエリザベスと遊んでいます。
それを遠くからイアン様がニコニコと笑って見ています。
そんな二人がいつまでも幸せでありますように。
それから私達は自分の国へ帰ります。
とても良い式典だったので、感動がおさまりません。
私もあんな風に幸せになりたいと思いました。
いつか必ず私にも訪れる幸せを、楽しみに待ちますね。
「ローズ」
私とルト様はルト様の部屋へ帰ってきました。
私はルト様が脱いだ正装をクローゼットへしまっています。
「どうしました?」
「ブレスレットとネックレスの意味は分かったよね?」
「はい」
「それならこっちに来てよ」
「いいえ、今は行けません」
「何で?」
ルト様は悲しそうです。
「私は王子様専属メイドです。その意味をお分かりですか?」
「メイドだから身分が違うとか言わないよね?」
「言いますよ。私達は身分が違いすぎます」
「だから? そんなの気にしなくてもいいじゃん」
「そんな幼稚なことを言わないでください。あなたは第二継承者の王子なのですよ?」
「僕はローズが好き。それじゃダメなの?」
ルト様、勘違いしていますよ。
ちゃんと最後まで話を聞きましょうよ。
「私もルト様が好きです」
「えっ?」
「でも、私は王子様専属メイドです。最後までお仕えさせてください」
「最後まで?」
「はい。リト様が婚約し、結婚をしたのなら、私は喜んで王子様専属メイドを辞めます」
「辞める?」
「その時に最後の指輪をくれますか?」
「えっ、えっ」
ルト様、混乱しすぎです。
少し落ち着くまで待ちましょうか。
紅茶でも入れましょう。
紅茶の準備をし、テーブルに置きます。
紅茶の香りがルト様を落ち着かせます。
「ローズ、僕のこと好きなの?」
「はい」
「ローズ、僕の婚約者になってくれるの?」
「いつかは」
「ローズ、リトに早く結婚してもらわないと婚約できないよね?」
「そうですね」
「それならリトに言ってくるよ」
「ダメですよ。婚約は人生の大切な選択なんですよ。リト様にはリト様のタイミングがあります」
今すぐにでもリト様に伝えに行きそうなルト様の手を引っ張り、私は止めます。
「ルト様、私はあなたが大好きです。ルト様は?」
「ローズ、僕は初めて見た時から大好きだよ」
「その言葉だけで私は幸せです」
「僕も幸せだよ」
私達は見つめ合い、お互いの顔が近付きます。
今回は邪魔者は来ないですかね?
「ローズ、このベルトが」
リト様が真ん中のドアから入ってきます。
「リト、何で来るの? 今日だけは僕達の邪魔をしないでよ」
「邪魔? 俺はそんなことをした覚えはないけど?」
あれれ?
確か、真ん中のドアには鍵がかかっていたはず。
なのにどうして?
チラッとリト様が鍵をポケットに入れるのが見えました。
リト様は、分かっていて邪魔者になっていたのですね。
「お二人とも、今日はお疲れですよね? 早くベッドに入りましょうか?」
「うん。僕、眠いかも」
ルト様はアクビをしながら言い、ベッドへ入っていきます。
リト様もベルトを持って自分の部屋へ戻ります。
ベルトを私に渡さず部屋へ戻るなんて、ルト様の部屋へ来る口実だとバレバレですよ。
私はルト様に近付きます。
しっかりベッドに入っていることを確認して、ルト様の顔を見ます。
ルト様は目を閉じています。
もう、寝てしまったのでしょうか?
私はルト様のおでこにキスをしました。
おやすみなさいませと大好きですの気持ちを込めて。
離れようとした時、私の後頭部をルト様は押さえます。
少しだけ距離ができていますが、ルト様が力を入れて、私の頭を押さえれば唇が当たりそうな距離です。
「ローズ、大好きだよ」
そんな言葉とともに幸せそうに可愛い笑顔を見せられては抵抗なんてできません。
私はルト様の手に力が入るのが分かります。
ゆっくり目を閉じ、ルト様とキスをしました。
「ローズ、早く」
「待ってくださいよ」
「ほらっ、早く」
ルト様が私に手を差し出します。
その大きな手に私は手を重ねます。
エリザベスのお散歩は私達のデートの時間になりました。
私達は、まだメイドと王子様の関係です。
まだまだ婚約なんて先ですが、私は幸せです。
今がとっても幸せです。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。
楽しくお読みいただけましたら執筆の励みになります。
短編でその後のお話も書きましたのでお読みいただけましたら幸いです。
『 第二継承王子に溺愛された私は困ってなどいません。私、婚約破棄をされそうなので今すぐメイドを辞めたいのです!』




