17、ローズは双子の王子様の妹です
楽しくお読みいただけましたら幸いです。
「、、、ズ、ローズ、起きて」
ルト様の声が聞こえます。
私は、またルト様の夢を見ているようです。
ゆっくりと目を開けます。
「ルト様。会いたかったです」
私がそう言うとルト様は笑って抱き締めてくれます。
「夢なのに、ルト様は温かくて落ち着きます」
「夢? 違うよ?」
「えっ」
私は目を見開いてルト様の顔を見ます。
「えっ、どうして?」
「それは、僕のセリフでもあるかな?」
ルト様はクスクスと笑っています。
「あっ、私、王様から任命されてここに来ました」
「任命?」
「ルト様専属メイド兼災害特別指揮官兼、、、」
私の最後の肩書は小さな声で言わなければなりません。
誰にも知られてはいけないので。
「まだあるの?」
「はい。もう一つは、臨時特別お嬢様です」
「臨時特別お嬢様?」
「大きな声で言わないでください」
私はルト様の口を手で押さえます。
「ちゃんと説明してよ。ローズがここへ来るなんて聞いてないし、それにその服装は何? そのベルト、オーム国の紋章だよね?」
私の腰に巻かれたベルトを見てルト様は言います。
オーム国の紋章がついているベルトは、王族の証です。
それを私がしているので、ルト様は訊いてきたのです。
「だから言いましたよね? 臨時特別お嬢様と」
「それだけじゃ分からないよ」
「ここでは話せないので、一度ルト様のお部屋へ行きませんか?」
「あっ、そうだね」
そして私とルト様は馬車から降ります。
「あれ? ローズ?」
見つかってしまいました。
しかもイアン様に。
ルト様に説明をする前に見つかってしまっては、ルト様と話を合わせることはできません。
「あっ、イアン様」
「どうしたの? もしかしてワタシとの婚約の契約でもするつもりで来たのかな?」
「あっ、いえっ、その、私は、、、」
言えません。
ルト様は何も知らないのに、嘘を言わなくてはならないなんて。
ルト様が勘違いしてしまいます。
「あれ? もしかして恥ずかしい? それならワタシの部屋へおいでよ」
イアン様は私の手首を掴み、引っ張ります。
「ダメだって」
ルト様がイアン様の手を払います。
「なんでそんなの分かるんだよ? ローズは何も言ってないだろう?」
「ローズ、言いなよ」
不機嫌なルト様は私の手首を握って言います。
仕方ありません。
後でルト様には説明をすれば良いのですから。
「私は昨日、王様に言われました。私はルト様とリト様の妹だと」
「は?」
ルト様は驚いています。
今はどうか何も言わないでください。
私の嘘を聞くだけにしてください。
「僕はそんなことは聞いたことはないよ?」
「そうですね。私も昨日知ったので」
「でも、僕達って全然似てないよね?」
「まぁ、そうですね」
「僕とローズは血が繋がってるの?」
「まぁ、そういうことですよね?」
嘘を一つ付く毎に心が痛いので質問はしないでくれると助かるのですが。
ルト様は次々と私に嘘を付かせます。
「それなら尚更いいじゃん」
私達の会話を聞いていたイアン様は嬉しそうに笑っています。
「イアン様?」
「ローズ、ワタシと婚約しよう」
「えっ、それは、、、」
「だって、ローズと婚約できるのはワタシだけだよね?」
そうですね。
イアン様の言っていることは正論なのですが。
それに納得するとは思わないのですよ。
ルト様は。
「婚約? いいんじゃない?」
「えっ、ルト様?」
「僕、今から忙しくなるからイアンにローズのことを任せるよ」
「えっ、ルト様?」
「ねっ」
ルト様は私の頭をポンポンと撫でて、何処かへ行きました。
私はルト様の背中を見ることしかできませんでした。
「それで? どういうこと?」
イアン様が私の顔を覗き込み言います。
「あっ、えっと、」
「何でレイン国へ来たんだい?」
「私が妹だとルト様に伝えたかったのです」
「それはルトにとって良い方法だったのかな?」
「イアン様?」
「ん? 何でもないよ。それじゃあどのくらい滞在する? これからずっとでも良いけど?」
「イアン様、婚約は、、、」
「まだ言わないでほしい」
イアン様に懇願されれば、何も言えなくなります。
「ローズはメイドじゃなくてお嬢様なんだね?」
「あっ、はい」
「それならちゃんと挨拶を交わさなければいけないね?」
イアン様は私の前に立つと、私の手を取り手の甲にキスをしました。
この挨拶はレイン国の王族が、他の国の王族にする挨拶です。
この挨拶は男性から女性へと行います。
イアン様の無駄のない所作は美しく、真似をしたくなるほどでした。
「このお城は、男性と女性で部屋が分かれているから、部屋の案内はリズにしてもらうよ。リズが来るまでこのお城を案内するよ」
「はい。よろしくお願いいたします」
「そんなに力を入れなくてもいいよ」
イアン様に笑われました。
「ここが、書物室。レイン国の歴史が詰まっているんだ」
「広いですね。あっ、この本は歴代の王様のお話ですね?」
「そうだよ。王様が何をした人なのか、レイン国をどんな国にしたのか書いてあるんだよ」
「ここに、イアン様も書かれることになるのでしょうね?」
「そうだね」
あれ?
イアン様の顔から笑顔がなくなったように見えました。
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~次話予告~
騒動が起きたと言い、イアンが様子を見に街へ向かいます。
その時にルトが暴走したことを知ったローズ。
ルトの元へ走ります。




