12、ローズを心配した双子の王子様
楽しくお読みいただけましたら幸いです。
「ローズ」
私は一番聞きたかった声が聞こえて振り向きます。
そこには私の大好きな笑顔があります。
「ルト様!」
私は嬉しい気持ちと驚きの気持ちでルト様に近付きます。
昨日は、本当に大変でした。
村へ行くと、仲間達が良かったと嬉しそうに私を囲み嬉しかったです。
村に大きな被害はなく、畑に水が多く残っていたようなので、みんなで協力し合い元の形に戻しました。
その後、仲間達と一緒にイアン様のお城へ行き、盛大なおもてなしを受け、お城の近くの宿を借り、一夜を過ごしました。
朝になり帰る支度をし、一度イアン様にお礼を言いに行くため、お城の中へ入ってすぐに、私を呼ぶ声がしたのです。
「ローズ大丈夫なの?」
ルト様は駆け寄ります。
「大丈夫です。イアン様が助けてくださったので」
「こんなことになったのは、ローズが僕に何も言わずに行くからだよ」
ルト様は拗ねていらっしゃいます。
「ローズ、俺には面倒みきれないわ。こんなわがまま弟は」
ルト様の後ろからリト様が現れました。
「リト様までいらっしゃったのですか?」
「当たり前だよ。僕よりもローズの心配してたくらいだよ。俺が行かせなければってずっと言ってたもんね?」
「うるせぇよ」
私の質問に、リト様ではなくルト様が答え、リト様は照れながらルト様の頭を叩いています。
お二人の会話が聞けて嬉しいです。
「でも、どうしてリト様もルト様もレイン国へいらしたのですか?」
「そんなの、可愛いローズがワタシに取られないようにだよね? お二人さん」
イアン様がいつの間にか近くに居て、リト様とルト様に向かってニコニコしながら言います。
リト様とルト様はムッとした顔をしています。
同じ顔が同じ表情をしています。
「リト様、ルト様、お顔がそっくりですよ」
私は笑ってしまいました。
そんな私を見てイアン様も笑います。
「元気になったみたいだな。知らせておいて良かったよ」
イアン様は私に耳打ちをしました。
イアン様がお二人に知らせてくれたのですね。
イアン様には私の不安はお見通しのようです。
「あ~ローズに傷がある。ローズを傷つけた奴はどこにいる!」
ルト様?
怒ってます?
可愛いお顔のルト様は何処へ?
「ルト、そいつならワタシが口が聞けないほどに、ちょっとだけ懲らしめたから大丈夫だ」
イアン様?
ニコッとしておりますが、目は全然笑っておりませんよ?
「なんだか、ルトとイアンは似てるな」
リト様は呑気にお二人を見て笑いながら言います。
リト様、お二人に睨まれていますよ。
「お兄様、お客様なの?」
美しい女の子がイアン様に向かって歩いてきます。
お人形さんが歩いています。
なんて可愛いのでしょう。
「リズ。リトとルトが来てるよ」
「えっ、ルト様?」
リズ様はリト様を見つけると近付きます。
「ルト様。お会いしたかったです」
リズ様はリト様に向かって言います。
双子だから間違えたのでしょうか?
「あっ、あの日はバタバタしていたので、何もできなくてすみません」
「いいえ。リト様はお元気になられたのですね。良かったです」
嬉しそうに笑うリズ様の笑顔は眩しいくらいです。
えっと、リト様?
いつものリト様の俺様感は何処へ?
それにルト様とは?
お名前が違うようですが?
ルト様も驚いているようです。
リト様、何をしたのですか?
どうして嘘なんてついたのですか?
しかし、リズ様はちゃんと見分けがついているようですね。
「ルトは僕だよ?」
ルト様は正直に言います。
ルト様、そこはリト様に合わせてあげても良いのでは?
「えっ、でも、あれ?」
リズ様は混乱しているようです。
双子だから、間違ったと思っているのでしょう。
「ハハハ、そういうことか」
イアン様がいきなり笑ってから納得したように言います。
「リズ、お前は騙されていたようだ」
イアン様は嬉しそうに言い、イアン様の言葉にリト様は申し訳なさそうな顔をしています。
「お兄様。私、騙されたのよ? どうして笑うの?」
「だって、納得したからだよ」
「納得?」
「ルトは、リズの理想のタイプではないのに、リズはルトと婚約をしたいと言うから、不思議だったんだよ」
「だからお兄様は婚約者をいつまでも決めてくれなかったのね?」
「そうだよ。これで全てがまるく収まるよ」
「これで全てがまるく収まるの?」
「うん。リズはリトと婚約をし、ワタシはローズと婚約をするよ」
えっ、ちょっと待ってください。
なぜ私がイアン様と婚約をするのですか?
全然、全てがまるく収まりませんよ。
「何、言ってんの? ローズのことで冗談は言わないでほしいよ」
ルト様は怒っているようで、声がいつもより低いです。
怒るといつもの可愛いお顔がなくなって、勇ましくなるルト様も格好良いです。
「冗談なんて言っていない。ワタシはローズが欲しいんだ」
私を見つめながらイアン様は言います。
するとルト様が、イアン様と私の間に壁になるように立ち、こちらを向きます。
「ルト様?」
「見るな」
とても不機嫌な顔で私に言います。
どうしたのでしょう?
いつものルト様だったら、自信満々に私に『ローズは僕のモノ』と言うのに。
今日は、いつものような自信は無いように見えます。
いつもと違うルト様に私は怖くなりました。
もしかして、私の傍にずっといることに自信がなくなったのでしょうか?
「ローズ、帰ろう」
「えっ、でも」
私はルト様に手を引っ張られ、お城から出ます。
イアン様にお礼をちゃんと言いたかったのに。
「ルト様、どうして何も言わずに帰るのですか?」
馬車の中でルト様に訊いても何も答えてはくれません。
「ルト様。リト様も置いてきたのですよ? 何をお考えに、、、」
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~次話予告~
ルトがローズと一緒に、足早にお城を後にしたのはローズのためです。
そしてローズを守るためにルトが上官に任命されます。




