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10、ローズは婚約者にはなりません

楽しくお読みいただけましたら幸いです。

「ローズ、この人は誰?」

「こちらの方は、隣の国のレイン国からいらっしゃいました、王子のイアン様です」

「何で来てんの? 今日はレイン国の令嬢が来るんだよね?」

「はい。御令嬢であるリズ様が婚約者を決めるのではなく、お兄様であるイアン様がお決めになるようです」

「へぇ〜。決まったでしょう? 第二継承王子よりも第一継承王子の方が良いに決まってるじゃん。ね? イアン様?」


 ルト様は失礼な言い方をし、イアン様を怒らせようとしているように見えます。


「ルト王子、私は身分など気にはしません。こちらとしては、第二継承王子のルト様の方が好条件なんですよ。リズは私の傍に置いておきたいので、婿として来ていただいてもよろしいのです」


 イアン様はルト様の考えにお気付きなのでしょう。

 ルト様に向かって笑顔を作り言います。

 年上であるイアン様は私達よりも色んな経験をしているのでしょう。

 ルト様の考えもお見通しのようです。


「僕は、ローズがいるからダメだよ」


 ルト様、何をおっしゃっているのですか。

 そんなことを言ってはいけません。

 勘違いしますよ。


「ハハハ、君は面白いね」


 イアン様は大きな体を震わせながら笑っています。


「僕は、絶対にローズから離れないからね」


 ルト様はそう言うと私の手を握ります。


「誰もローズを、、、」


 イアン様は私の名前に様を付けずに言った後、私を見ます。

 私の名前に様をつけなかったことで、私に様を付けなくて良いのか訊いているのはイアン様の顔を見れば分かります。

 私が頷くのを見て、ルト様を見て続きを話します。


「誰もローズを奪ったりしないさ。それに、ローズと一緒に婿に来てくれてもいいし」

「違う。婿にもならないし、ローズとはオーム国で一緒に過ごすの」

「しかし、君はオーム国では第二継承王子だよね? 第二継承王子の結婚相手は国が決めるはずだけど? ローズといつまでも一緒というのは無理があると思うけどな?」


 初めて聞きました。

 第二継承王子は自分で結婚相手を決められないのですか?

 ルト様を見ると、バツが悪そうにしています。

 知っていたのですね?


「まぁ、ローズがメイドとして傍に仕えることができればいいが、そんなに上手くはいかないと思うよ」


 イアン様の言うことは当たっているのかもしれません。

 だって、いつかはルト様は結婚をするのです。

 私はずっと、メイドとして仕えることはできるのでしょうか?


 ルト様が嫌々結婚しても、結婚した相手を好きになるかもしれないですし、私よりも結婚相手を大事にするかもしれません。


 私、何も考えていませんでした。

 ずっと、このままなんて、無理なんですよね。


「何、言ってんの? 僕を選ぶ人なんていないよ。だって僕とローズの間に入れる人なんていないんだからね」


 ルト様の、その自信はどこから来るのでしょうか?

 私にはそんな自信はありません。

 なんだか怖くなって胸が痛くなります。


 するとルト様が、いつの間にか胸を押さえていた私の手の上に手を重ねてくれます。

 恐怖がすっと無くなっていきます。

 心臓がゆっくり、ゆっくりと動いて痛みは治まります。


「これで決まった。リズの婚約者はルトにし、私の婚約者をローズにするよ」


 えっ。

 なぜ私を?

 イアン様は自分の中では納得しているようで頷きながら言いました。


「こっちは絶対に承諾しないからね!」


 ルト様が怒って言っています。

 それはそれは、可愛いお顔で。

 頬を膨らまし拗ねているようです。


「だいたい、僕はリズなんて子は知らないよ」

「あっ、それならルトは知らないだろうけど、あの日ルトが体調が悪い時に、彼女がお見舞いをしたいと言って部屋に連れていったんだ。言ってなかったかな?」


 ルト様の言葉を聞いて、思い出したようにリト様が言います。

 私も知らなかったです。

 あの部屋に女の子が入ったのですね。


 なんだかモヤモヤします。

 心の中に嫌なモノが渦巻くようです。


 あれ?

 ということは、リズ様が好きになった方は、リト様だけではなく、ルト様でもあり得るのですよね?

 もし、このままイアン様がお城へ戻り、リズ様に婚約者を伝えて、ルト様が好きな人だったら、、、。


 それにルト様はご自分で結婚相手を決められないのです。

 不安で仕方がありません。

 どうしましょう。


「ローズ、心配ないよ」


 私の頭を撫でながらルト様は言います。


「ローズは明日からまたいなくなっちゃうんだから、早く部屋へ帰ろう」


 ルト様は私の手を引っ張り、部屋へ帰ろうとします。

 私はリト様を見ると、『いいよ行って』と言ってくれたので、私はルト様と部屋へ戻ります。


「無駄な時間だったよ。せっかくの久し振りのローズとの時間だったのに」

「そんなことを言ってはいけませんよ。たくさんの人との出会いは経験になりますから」

「それでも僕は無駄な時間だって言うよ。だって、僕にとってはローズとの時間が一番大切だからね」

「一番ですか、、、」


 私との時間は、いつまで一番でいられるのでしょうか?


「ローズ、明日は何時に出発なの?」

「明日は、六時頃に出発です」

「早いんだね」

「そうですね。明日は早く動いて村に着きたいそうです。国境近くは危険なようなので」

「危険な所まで行かなくてもいいのに」

「困っている人のために動くのが災害特別指揮官です!」

「ローズはメイドより、災害特別指揮官の方がキラキラしていて輝いてるよ」

「そうですね。人の助けになれるのは、凄く嬉しいです。喜んでもらえるのですから」


 ルト様は私の言葉を聞いて、自分の事のように嬉しそうに笑っています。


「僕も災害特別指揮官になろうかな?」

「ダメです。ルト様はリト様のお傍で支えてあげてください」

「僕なんていらないよ」

「必要です。ルト様はリト様のたった一人の理解者なのですから」

「それなら、僕はローズの理解者でもあるよ」

「そうですね。血の繋がりがなくても理解者にはなれますよね? お互いが信じていれば」

「ねぇ、ローズ? 今日は明日のために早く寝なきゃいけないよね?」

「そうですね」

「それならこれを渡すね」


 ルト様はそう言って私にブレスレットをくれました。

 取れないようにしっかり付けてくれます。


「青色ですか?」

「そうだよ。これは丸い玉の中にあの青い花の蜜を入れているんだよ」

「どうして青い花をお使いになったのですか?」

「もし、襲われたり危険なことが起きたら、このブレスレットの玉を割って、相手に付ければいいんだよ」

「自分の身を守る武器ですね?」

「そう。このブレスレットはローズだけの世界で一つのブレスレットだから、大切にしてね」

「はい。ありがとうございます」


 良く見ると、小さな玉の一つ一つに薔薇のマークが彫られています。

 美しいブレスレットを私は大切にすると心の中で誓います。




 次の日、六時よりも早く出ることになりました。

 私は眠っているルト様の顔を見てから出発しました。


 毎回、出発前にはルト様はお見送りをしてくれるのですが、今日は少し早くなったのでまだ眠っています。


 寝ているルト様を起こす必要はないと思い、起こさず寝顔を見るだけにしました。

お読みいただき、誠にありがとうございます。

楽しくお読みいただけましたら執筆の励みになります。


~次話予告~

ローズは国境付近で盗賊に襲われ危ないところを大きな体の彼に助けられました。

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