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1、出会い

楽しくお読みいただけましたら幸いです。

「ローズ、お前は外の家畜小屋で寝ろよ」

「ローズ、お願い家畜小屋へ行って」


 私はローズと申します。

 少し、昔のお話をしましょう。


 私は父から家畜小屋で寝ろとの命令を受けました。

 母も父と同様に言います。

 私の名前の由来は、薔薇のように美しく品のある子になって欲しいという意味で母が付けました。


 そんな母から受け継いだ赤い髪は薔薇のように美しいのですが、薔薇のように美しく品のある子には育つことができませんでした。


 何故なら私の育った環境が悪かったのです。


 身分の高い父と結婚をした母は、父の言いなりでした。

 私はそんな父も母も嫌いでした。

 そんなある日、両親が感染症により次々と亡くなりました。


 私の家は少しは裕福でしたが、私はまだ十歳と幼く、財産や身分を承継することができず、父の弟に全てを取られました。


 この国で幼い子供は価値はなく、大人になった時に親の身分を承継するのです。

 しかし、私は幼い時に両親を亡くし、身分の無い孤児になりました。


 本当は父の弟の娘になるのが一般的ですが、父の弟には家族がおり、私は嫌われていたので、すぐに家を追い出されました。


 十歳の私はどうすれば良いのか分かりませんでした。

 誰を頼れば良いのかも分かりませんでした。


 ただ、私には一つだけは分かっていました。

 絶対に生きてやる。

 絶対に幸せになると心に決めていました。


 それからの私は何をしたのか、それはお金持ちの家へ行き、雇ってもらえるように懇願しました。

 お金持ちの家はお金があるので食べ物や住む場所に余裕があり、心にも余裕がありました。


 だからこそ可哀想な私を雇ってくれます。

 大人に媚を売る毎日です。

 誰よりも気が付くように、寝る暇もなくメイドとしてのお仕事をこなしました。


 たくさんの家でのメイドを経験した私は十八歳にもなると、ベテランの域に達しました。

 どこの家でも私を欲しがるようになりました。


 そんな私はオーム国の王様のお城へ呼ばれました。

 そして一言『このお城のメイドになれ』と言われました。


 私に拒否権は無く『はい』と言うしかありませんでした。

 しかし、私には一つだけ心配なことがありました。

 それは、このお城には王子様がいることです。


 私は、メイドになると決めた時、子供がいない夫婦の家を選ぶようにしました。


 何故かといいますと、子供がいなければ私を実の子供のように可愛がってくれるからです。

 もし子供がいると、私の媚を売る戦略の効き目が薄くなります。


 今回は仕方がないので、王子様のお世話は極力しないようにしようと決めました。


 お城では、メイドの私に立派な部屋が与えられました。

 こんな部屋に住んだことはありません。

 お姫様のお部屋のようです。


 新しい場所での仕事は、まず覚えることから始まります。

 朝は何時から動き出すのか、私は何をすればこのお城の使用人達に頼られるようになるのか。


 頭をフル回転させて一日を過ごします。

 そんな毎日を一週間も過ごせば、私はお城に慣れました。


 王様は朝早くに朝日を見るために展望台へ行きます。

 私はそこへ先回りし、コーヒーの準備をして待ちます。


 王様が来ると、静かにコーヒーを準備し、ミルクを少し入れて渡します。

 王様は笑って受け取り、私を褒めます。




 それから王妃様の所へ向かいます。

 お王妃様は、朝が苦手なので少し遅めに起こします。


 紅茶の茶葉をティーポットで蒸らしていると、王妃様は起きてきます。

 『いい香り』と言いながらドレッサーの前に座ります。


 私は王妃様の髪を櫛でとかします。

 サラサラな髪は手入れがいき届いています。


 紅茶ができ砂糖を一欠片入れて、スプーンで混ぜて王妃様に渡します。

 王妃様はニコニコしながら受け取り、私を褒めます。


 これが私の朝の行動です。

 食事や掃除は使用人達がいるのでする必要はありません。


 そして、王子様のお世話も必要ありません。

 何故なら、王妃様以外の女性はお世話をしてはいけないからです。


 そのような規則があって良かったです。

 大人の相手ばかりをしていた私には、子供である王子様の相手は無理だからです。


 王子様との接触もなく、大人のお世話をするだけで、広い部屋を与えられ私は満足です。

 ずっとこのまま、このお城で過ごすのも良いかなと思いました。


 あの日までは、、、。



「ねぇ、そこの子、こっちに来てくれる?」


 私はある日、男の子に呼ばれました。

 歳は私と同じくらいだと思います。

 顔のパーツ一つ一つが大きくて、それでも整った顔が可愛い男の子です。


 使用人に、こんな男の子がいたかなぁと思いながら呼ばれたので近付きます。


 これが私の大失態でした。

 この時、気付けば良かったのです。

 こんな若い使用人なんていないことを。


 この出会いが私の人生を狂わすことになるのです。


「ねぇ、こっちのローズが欲しいから、手伝ってくれる?」

「えっ、ローズ」


 私は驚いてしまいました。

 だって、私の名前を呼んだのかと思ったからです。

 男の子は薔薇を指差し、薔薇を摘みたいようです。


 私は男の子では入れない狭い隙間に入り、薔薇を摘むと男の子に渡します。


 そして男の子は、私がこれまでに見たことのない眩しい可愛い笑顔で言うのです。

 私の名前を。

お読みいただき、誠にありがとうございます。

楽しくお読みいただけましたら執筆の励みになります。


〜次話予告〜

ローズが出会った彼は王子様でした。

その王子様には秘密がありました。

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