シノグラ事件
【シノグラ大侵入事件:UE203400〜203500年】
■ UE203412年:異常恒星活動の観測
コマ銀河連邦の外縁観測拠点が、かみのけ座銀河団方面から接近する一
連の恒星活動異常を報告。
跳躍ノード網に異常なしと判断され、当初は「フィラメント不規則エネ
ルギー流」と分類される。
■ UE203419年:ベレニケ銀河連邦・中央構造圏で初の恒星沈黙
首都コハテダの外周構造圏3基が連鎖的に恒星活動を停止。
跳躍網の一部が遮断されるが、当初は自然災害として扱われ、連邦議会
の対応は限定的。
■ UE203424年:恒星連鎖冷却と構造圏崩壊
かみのけ座銀河団南部の約11構造圏にて同時に恒星が沈黙。
ベレニケ銀河連邦と周辺自由圏の通信網がほぼ同時に途絶。
記録院がこの現象を初めて「構造的恒星消失災害(SHED)」として公
式認定。
■ UE203428年:シノグラの存在確定
恒星間熱流観測網によって、エネルギー吸収に連動する移動体の存在を
初確認。
通称「シノグラ(Synogra)」が議会文書に初登場。
跳躍庁、記録院、構造庁の合同非常会議にて、恒星災害特別対策が編成
開始。
■ UE203432〜437年:かみのけ座銀河団 通過開始
シノグラ群体が銀河団外縁から侵入、ベレニケ銀河連邦を含む南部通過
帯に突入。
通過速度は予想を大幅に上回り、構造圏崩壊が追いつかず。
レンズマン部隊、跳躍遮断艦隊、恒星冷却装置を投入するも効果限定
的。
■ UE203439年:ベレニケ銀河連邦、事実上の機能停止
首都コハテダを含む主要恒星基盤が沈黙。
避難率は26%、全体人口の約1.8垓人が記録消失または行方不明。
■ UE203442年:連邦議会、「銀河団災害緊急勅令」発令
天皇の沈黙の下、記録院代表が「秩序維持と記録継続の誓句」を朗読。
被災域に対し、構造圏再建・跳躍網復旧の暫定プラン発動。
■ UE203445〜450年:通過完了と終息処理
シノグラ群体がかみのけ座銀河団北部へ抜け、最終的に跳躍干渉を停
止。
構造圏の再点灯は不可能と判断され、記録院が同銀河団南部宙域を「白
焰帯」と命名。
■ 被害概要(確定値)
構造圏損失:1,400基
恒星消失:22,000基(うち14,000はダイソン構造恒星)
人口損失:約1.8垓人
跳躍網損失:銀河団南部全域で断絶(再構築に150年を要する見込み)
記録損失:記録帯8帯、記録年代幅=約320年分
■ 文化・制度的影響
記録院により、「空白巻 VIII〜X」が発行。
跳躍庁と構造庁が共同で「恒星災害監視局(SCO)」を創設。
レンズマン戦死者の記録詩『星鎧の十三名』が連邦教育制度に組み込ま
れる。
復興構造庁と再統合ID制度(R-ID)が被災民救済の基盤として発足。
■ 被災後の再建計画
● R-ID制度(再統合ID制度)
被災により記録消失した個人の身分・権利を復元するための制度。
生体認証・記録断片・過去跳躍記録の統合によって「暫定市民ID」を再
発行。
識別不能者には仮登録圏を設置し、段階的に連邦市民権を回復可能とす
る。
統合手続きは記録院・構造庁・民間記録団体が協力。
● 跳躍再接続事業
南部跳躍網の再構築を3段階で実施:
周縁ノードの再点灯
跳躍干渉帯の封鎖と観測衛星群の展開
核心跳躍路の復旧と白焰帯周辺への遮断フィールド構築
全工程に約150〜200年を要するが、各段階で避難者移送・物資供給も実
施。
■ シノグラに関する記録院・軍事研究
● 記録院の取り組み
「恒星反応記録帯(HRB)」を新設し、恒星エネルギー異常の兆候を分
光パターンで記録。
シノグラ群体の通過パターンを再現した記録演算塔を建設(記録塔サラ
=グロア)
恒星失活現象と知的存在の関連性に関する長期文明研究計画(ZOR)を
開始。
● 軍事的研究と対応策
恒星冷却砲(Stellar Attenuation Beam)の実戦配備を開始。
跳躍遮断地雷(JMD:Jump Mesh Disruptor)をフィラメント周辺宙域
に展開。
テクノスフィア軍事衛星群にシノグラ熱流パターン監視AIを実装。
レンズマン戦術規範の改定:「恒星前線における対応行動規約(RCO-
S)」を追加。
■ 将来のシノグラ再出現リスクへの文明的備え
● 銀河災害想定ネットワーク(GINet)の設立
SCOと記録院により共同設立。
銀河団を超えるスケールでの恒星活動の統計観測・異常伝達プロトコル
を構築。
各銀河連邦に拠点を設け、24時間リアルタイムで恒星変動を監視。
● 「恒星存続指数(SSI)」の導入
構造圏ごとの恒星存続評価指標。
恒星の年齢、融合傾向、異常吸収の兆候を数値化。
シノグラ類似活動が観測されれば自動的に危険等級が上昇し、SCOが対
策指令を発令。
● 「防災跳躍網」計画
跳躍庁主導。
銀河間避難を可能とする新型「長距離中継型跳躍ノード(HyperLink-
III)」を周縁宙域に配備。
危機発生時、民間構造圏に優先跳躍ルートを保証するための制度整備を
推進。
● 倫理・法制面の強化
シノグラ被災地における文明放棄行為・再侵入行為を防止するための
「銀河災害管理法(GDL)」を制定。
恒星改造実験を制限する「恒星倫理憲章」の策定。
"シノグラは教訓ではない。それは恒星という舞台に現れる、真の無秩
序である。"
— SCO長官グリーヴ・ツォルによる国際記録院演説